△ 「1/4 breed」シーン4


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明転。病院の一室。ベッドには里子の母、立子がおり、傍らのネムと話をしている。

ネム 「あの時と同じ事をしようとしているのか、それとも復讐をしに来たのか、いや、その両方かもしれません。とにかくあまり時間がないんです。」舞台写真
立子 「そう、そうなの…」
ネム 「はい、まさかこんな事になるなんて…」
立子 「それじゃ、あの子を?」
ネム 「えぇ、早急に。」
立子 「そう…(突然むせる)ゴホゴホッ。」
ネム 「大丈夫ですか?」
立子 「えぇ、でも倒れたのが一周忌の後で良かったわ。」
ネム 「ここにはもうしばらく?」
立子 「えぇ、だからあの子が何て言うか…」

里子が病室のドアの前に登場。聞き耳をたてる。

ネム 「娘さんには例の事は?」
立子 「(首を振り)出来れば教えずにすませたかった。凄いお父さん子でね、もう1年経つのに未だにひきずってるの。精神的にもかなり不安定みたい。ただでさえそんな状態なのに、今そんな話を聞いたらあの子は…。」
ネム 「私の口から言いましょうか?」
立子 「いえ…私が言います。」

里子、病室に入って来る。

立子 「里子…」
ネム 「里子ちゃん?」
里子 「…」
ネム 「あの、初めまして私は…」
里子 「やっぱりお母さんあたしに隠し事してたんだね。」
立子 「里子…。ごめんなさい、何度も言おうと思ったの。でも出来れば知られたくなかった。」
里子 「…」
立子 「いい、落ち着いて聞くのよ。実は…お父さんね…」
里子 「嫌よ!私は認めない!」
立子 「里子…」
里子 「絶対、認めないからね。あなたが、あなたが腹違いのお姉さんだなんて!」
立子・ネム 「え?」
里子 「今更父さんの遺産狙って来たって無駄なんだから!」
立子 「里子ちゃん、落ち着いて。あなた何か勘違いしているわ。」
里子 「え…じゃあ…この人…この人が愛人?!」
立子・ネム 「いやいやいや。」
里子 「ひどいよ、父さん。娘と同じくらいの愛人作ってたなんて!」
立子 「里子ちゃん、違うの、そんなんじゃないの。」
里子 「…本当に?」
立子 「えぇ。」舞台写真
里子 「違うの?」
ネム 「違うの。」
立子 「この人はね、あなたを助けに来たのよ。」
里子 「私を助けに?」
立子 「そう、助けに…あぁ…何から話せばいいんでしょう…」
ネム 「やっぱり私から話しましょうか?」
立子 「いえ、大丈夫。…里子、落ち着いて聞くのよ。」
里子 「うん。」
立子 「あなたのお父さんはね、実は…実は…ハーフだったの。」
里子 「…え?ハーフ?」
立子 「そう、ハーフ。」
里子 「何?まさかそれが落ち着いて聞けって事?」
立子 「えぇ。」
里子 「何だ、そんなの全然大した事ないじゃない。何だもう、緊張して損した。そう言えばお父さん、冷蔵庫にキムチがないと不機嫌になってたっけ…」
立子 「里子ちゃん、そういうハーフじゃないの。」
里子 「え?」
立子 「日本人と韓国人のハーフって事じゃないの。」
里子 「え?じゃぁどういう…」
立子 「人間と…妖怪のハーフなの…」

沈黙。

里子 「…人間と…何?」
立子 「人間と…妖怪…」

沈黙。里子、突然ベッドの脇のボタンを押す。

里子 「ナースコール、ナールコール!」
立子 「里子ちゃん落ち着いて、落ち着いて、ねっ。」

ナースの声がスピーカーから。

ナース 「客間さん、どうされました?」
立子 「あ、ごめんなさい、間違いです。」
ナース 「大丈夫ですね。」
立子 「はい、ごめんなさい。」
里子 「お母さんしっかりしてよ!お母さんまでおかしくなっちゃたら、私どうしたらいいのよ!」
ネム 「(里子を押さえて)里子ちゃん落ち着いて!本当なのよ。お母さんの言っている事は本当なの!」
里子 「どう信じろっていうのよ!何が妖怪よ!離してよ!」
立子 「ネムさんお願い。」
ネム 「はい。」

ネムが里子の顔の前に手をかざすと、里子は気を失う。

ネム 「ごめんね里子ちゃん。説明してる暇はないの。」
立子 「ネムさん。」
ネム 「はい。」舞台写真

立子、うなずく。ネムもうなずきかえす。ネム、里子を抱えて部屋を出る。

立子 「(また咳き込む)ゴホゴホッ…ごめんね里子ちゃん…」

暗転。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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