△ 「ニンフ」序景


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客席の照明が消え、全暗転。
遠くに、クリスマスソングや、浮かれる街の音が聞こえる。
数秒後、ゆっくり舞台が明るくなる。
舞台上には、ドアがひとつと3人の男(ACD)。
何をするでもなく、ぼうっとしている。
男が一人、ドアをくぐり、入ってくる。
あたりを興味ぶかそうに見回す。
気づいた男A、声をかける。

男A 「よう」舞台写真
男B 「あ。……どうも」
男A 「初めまして……かな?」
男B 「たぶん。……初めまして」
男C 「しばらく、よろしく」
男D 「よろしく」

4人、頭を下げ合う。顔を見合わせ。

男A 「なんか、変だな」
男C 「ああ……ヘンだ」

気詰まりなようでいて、弛緩した空気が流れる。

男B 「あの」
男A 「ん?」
男B 「何してたらいいんでしょう、俺」
男A 「何って……何もできないだろ、やっぱり」
男B 「じゃ、もう、このまま、ずっーと、こう……」
男A 「そう、このまま、ずっーと、こう」

再び時間が流れる。
やがて女が一人、入ってくる。
女、男たちの姿が見えていないようである。

男B 「あ、あの……」舞台写真
男A 「よせよ……わかんねぇよ」
男B 「でも」
男C 「ようやく気がついたみたいだな」
男D 「どうなるんでしょうね、僕たち」
男C 「わかんねぇなあ」
男A 「ああ。まったく、わからない」

男たち、じっと女を見つめる。

男B 「……カワイイ」
ACD 「は?」
男B 「い、いや、その、やっぱりカワイイな〜って、つい、その、ねえ……思いません?」
男C 「馬鹿か、お前。生きるか死ぬかの瀬戸際に」
男B 「ええ、でも、綺麗なものは綺麗だし、カワイイものはカワイイ」
男C 「勝手に言ってろ」
男A 「いや、俺はわかるぞお前の気持ち。もう、わかりすぎて、押し倒したいくらいだ」

本当に女を押し倒す。
あわてる3人。

男B 「やめてください!」
男D 「ちょ、ちょっと」
男A 「好きだ、好きだあ!」
男C 「振るな腰を!犬じゃあるまいし……」

女が、唄を口ずさみはじめる。
気づいた男たち、動きを止める。

男D 「……なにか、聞こえませんか?」
男C 「唄だよ……唄、うたってるんだ、彼女」
男A 「好きなんだよな、あいつ、この唄」
男C 「(得意げに)俺、買ってやったぜ、このCD」
男D 「僕も、買いました」舞台写真
男A 「俺だって」
男B 「俺も、欲しいってねだられて、1枚……」

顔を見合わせる4人。

男A 「なんだよ……」
男D 「しょうがないなあ……」
男C 「しょうがねぇ……」

笑う4人。

男B 「アーア」
4人 「アーア!」

唄、大きくはいる。
フォークダンスのように、男たち、一人ずつ女と楽しそうに踊る。
転。

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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