GBR法

 組織再生誘導法(GTR 法)を骨組織の再生に応用したのが骨再生誘導法(guided bone regeneration ; GBR法)で す。

 骨欠損部が治癒するとき、軟組織(肉芽組織、結合組織、部位によっては筋肉組織)が入り込むと骨組織の再生が阻害されます。

 そこでバリヤー膜を骨と軟組織の間に設置し、骨組織が再生するための場を確保することで、通常よりも骨の再生量を大きくすることができます。

 歯科ではGTR法が先に臨床応用されましたが、もともとは形成外科領域でGBR法の理論が考えられており、それをヒントにGTR法が生み出された とのことです。

GBR法に適したバリヤー膜

 GTR法では非吸収性膜は術後4〜6週で除去します。吸収性膜は3〜6ヵ月で吸収が開始します。
 一方、GBR法では非吸収性膜は術後6〜8ヵ月で除去します。GBR用に吸収時期を延長させた吸収性膜も出ていますが、目標とする効果が得られる前に吸 収することも考えられ、コントロールするのは難しいといえます。6ヵ月以上設置するのであれば、非吸収性膜を用いた方が確実であると考えられます。
 また、バリヤー膜を設置したときにつぶれた状態では骨再生量が少なくなってしまいます。そこで、非吸収性膜では薄いチタンと組み合わさせ、スペースメイ キングが確実に行えるようにしたものもあります。
 バリヤー膜は欠損部から3〜4mm距離をおいた部分まで設置します。

 GBR法は主にインプラント治療に応用されています。以下に例を挙げます。

 

裂開型欠損と開窓型欠損

 インプラントを埋入したとき、頭頂部でネジ山が露出するような欠損を裂開型欠損(=れっかいがたけっそん)といいます。欠損部に GBR法を行います。

 骨に窓が開いたような形でインプラント体が部分的に露出するような欠損を開窓型欠損(=かいそうがたけっそん)といいます。これは 骨の頬舌的幅径が不足しているときや、インプラントを設置する方向を誤ったときにみられます。
 バリヤー膜を固定することが困難な場合は、固定用のスクリューピンで位置をとどめたり、チタン強化膜を用いたりします。

 膜の露出や汚染があると、骨再生量は少なくなります。これらの骨欠損へGBR法を用いた場合、ほぼ100%骨組織で被覆することが可能です。しか し、長期的な予後は良好とは言えず、Dahlin ら(1995)によると3年後の成功率は上顎で76%、下顎で83%です。

 

顎堤の形成

 顎堤(=がくてい ; 顎の骨で堤防状になっている部分)の幅や高さが不足している場合、一旦GBR法で骨を増殖させてからインプラントを埋入する方法です。
 骨組織を増殖させるために、海面骨(中の軟らかい骨)まで穿孔してからバリヤー膜を設置します。固定用のスクリューピンやチタン強化膜を用います。形成 した骨は長期的に安定していると報告されています。
 欠損部位のスペーサーとして、骨移植が併用されることもあります。この場合、自家骨移植が最良ですが、人工骨材料なども用いられています。

 

抜歯後即時インプラント設置

 抜歯と同時にインプラント体を埋入し、欠損部位にGBR法を行う方法です。
 抜歯した部位へのドリルホールの形成は不完全になりますが、根尖側または側壁への形成を正確に行い、インプラント体の初期固定が行えるように埋入しま す。


(左と中央は骨の内部から、右は骨の表面からみたイメージ)

 初期固定が得られたことを確認した後、バリヤー膜を設置します。

 この方法は歯周病や歯根破折などが原因で抜歯しなければいけない部位が適応となります。しかし、排膿や大きな化膿性病 巣がある場合には適応とはなりません。また、インプラントのために保存可能な歯まで抜歯することは本末転倒であるといえます。

骨移植材

 骨移植材には自家骨(自分の骨)、同種骨(他人の骨)、異種骨(他の生物の骨)、人工骨があります。
 骨移植材の特徴として、骨形成能(材料が骨になる能力)、骨誘導能(骨をつくる細胞を誘導する能力)、骨伝導能(骨をつくる細胞の足場となる能力)があります。骨移植材と特徴を以下 にまとめます。 



骨形成能
骨誘導能
骨伝導能
自家骨



同種骨



異種骨


人工骨



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最終更新2013.1.10