歯周病の臨床研究

喫煙と歯周病

リスクファクター

 歯周病に影響を及ぼす二大リスクファクターとして喫煙と糖尿病が挙げられます。これらは横断的、縦断的、介在的研究から真のリスクファクターとして考えられています。糖尿病に関しては既に全身疾患と歯周病の項目で取り上げていますので、ここでは喫煙の影響について解説していきます。

 喫煙の影響としては次のものがあります。
1. ニコチン、一酸化炭素、シアン化水素などが毛細血管を収縮させ、白血球の機能に有害な影響を及ぼす。
2. 直接的に線維芽細胞やマクロファージを障害し、組織の治癒が遅延する。
3. IgG2抗体の産生を抑制することで、疾患の進行を促進する。

 喫煙者と非喫煙者で歯周疾患の程度を調べた研究を表にまとめます。

研究者 喫煙者数 非喫煙者数 概要
PreberとBergstrom(1986) 135人 260人 喫煙者ではポケットがより深い。
喫煙本数が多いとGIは抑制される(毛細血管の収縮)。
Bergstrom(1989) 75人 59人 喫煙者では罹患歯数や部位数の頻度が高い。
喫煙者と非喫煙者でGIとPlIは同様である。
Haberら(1993) 33人 21人 インスリン依存型糖尿病と非糖尿病で喫煙の影響を比較。
糖尿病かつ喫煙者では、疾患のリスクが高くなる。
Stoltenbergら(1993) 63人 126人 喫煙者ではポケットがより深い。
5種類の細菌の罹患率に差はない。
MullallyとLinden(1996) 50人 50人 喫煙者は非喫煙者より大臼歯の平均数が少ない(6.7本vs7.3本)。
喫煙者では根分岐部病変の比率が高い。

 これらの論文から、歯周病のオッズ比をまとめます。

 

喫煙と再生療法

 Tonettiら(1995)は深い骨縁下欠損にGTR法で治療した予後について、喫煙者20人と非喫煙者31人を調査しました。1年後のアタッチメントゲインや、欠損の深さに対する再生量は、喫煙者の方が有意に少ないことが証明されました。


(Tonettiら 1995より改変)

 

喫煙と歯周病のまとめ

1. 喫煙は歯周病に対する真のリスクファクターと考えられている。
2. 疾患の進行のみならず、外科処置後の治癒にも影響を及ぼす。
3. 歯周疾患患者に対する禁煙指導も先進国では行なわれている。

 

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最終更新2013.1.2