局所薬物配送療法(LDDS)

抗菌剤の経口投与と局所投与

 歯周疾患の化学療法として抗菌剤の長期経口(全身)投与が考えられていますが、耐性菌の出現薬の副作用腸内細菌への影響などの問題点が挙げられます。経口投与の場合、腸から吸収されて抗菌剤が血管に入り、血液内で有効濃度が維持された状態で局所(歯周ポケット)に届きます。

 そこで、歯周ポケット内に抗菌剤を直接入れ、ゆっくり薬が放出される方法で有効濃度を一定期間維持できれば、腸→血管→歯周ポケットという経路がないため、少量(経口投与の千分の一といわれています)の使用で済み、全身投与での問題点を軽減できると考えられています。このような方法を局所薬物配送療法といいます。(Local) drug delivery systemの頭文字をとって、LDDSまたはDDSとも呼ばれます。

 経口投与と局所投与の比較を図にまとめます。


 

徐放性と使用薬剤

 薬をゆっくりと放出することを徐放性といいます。徐放性を保つ方法としてストリップス状(小さなフィル ム状)のものやペースト状のものがあります。ストリップス状のものは薬の濃度を維持しやすいのですが、部位によっては入れにくいという欠点があります。 ペースト状のものはどのような部位のポケットでも入れやすいのですが、注入する量の調節が難しいといえます。抗菌剤はテトラサイクリン系やニューキノロン 系が使用されています。

 ペースト状のものにはペリオクリンペリオフィールがあり、塩酸ミノサイクリンが含有されています。徐放性を保つために増粘剤、賦活剤、持続性コーティング剤も含有されています。ペリオクリンの写真を下に示します。

 

使用する時期

 急性症状がある部位、通常の歯周治療では治りにくい部位への使用が検討されています。

 歯周基本治療後の検査で歯周ポケットが4mm以上の部位で薬効が期待される場合は、計画的に1ヵ月間使用します(通常、1週間に1度×4回)。その後の再検査で臨床症状の改善がみられるけれども、歯周ポケットが4mm未満になっていないときは、さらに1ヵ月間延長して使用します。

 

LDDSのとらえ方

 現時点で、薬のみではスケーリング・ルートプレーニングに 代わる効果は得られないことが報告されています。抗菌剤に限らず、他の薬剤であったとしても、一時的に歯周ポケット内の細菌を減少させたり、歯肉の炎症を 和らげることはできますが、細菌の出した毒素(LPS)や歯石は残ったままの状態です。あくまでもLDDSは補助療法としてとらえるべきであり、通常の歯 周治療の補助として用いるべきです。

 通常の歯周治療でLDDSを併用する症例としては、歯周外科手術が適応であっても、何らかの禁忌で外科処置を行えない場合が多いと思います。

 

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最終更新2013.1.9