歯周炎
慢性歯周炎はプラーク中の細菌が原因で起きる、一般的な歯周炎です。喫煙や糖尿病等の因子が関与することにより、炎症 が強くなります。慢性歯周炎の特徴を列挙します。
・成人に多いが、子供や青
年にも発症する。
・破壊の量は局所因子(歯石やかみ合わせ等、口の中にある因子)の存在と一致する。
・歯肉縁下歯石(歯周ポケットの中にある歯石)が高頻度で認められる。
・様々な細菌のパターンと関連している。
・進行速度は遅いか中程度である。
・急速に進行する時期もある。
・宿主因子(糖尿病等)や環境因子(喫煙等)に修飾される。
※歯周病を悪化させる因子については、リスクファクターの項目をご参
照ください。
侵襲性歯周炎は、宿主因子や環境因子が無くても、急速に歯周病が悪化していくタイプを指します。侵襲性歯周炎の特徴を 列挙します。
・全身的には健康である。
・急速なアタッチメントロス(歯と歯肉がくっついている部分が壊される
こと)と歯を支える骨の吸収を認める。
・家族内集積が認められる。
・微生物の付着量と歯周組織破壊の重症度に不均衡がみられる(プラーク
細菌がほとんどついていなくても、歯周病が進行するという意味)。
・A.actinomycetemcomitans(歯周病に関連する細菌のひとつ)の比率が上昇している。
・貪食細胞(細菌を食べる細胞)の異常が見られる。
歯周病は細菌の複合感染により発症しますが、若年性歯周炎(=じゃくねんせいししゅうえん)では特にActinobacillus actinomycetemcomitans という細菌が注目されています。この菌はロイコトキシン(白血球毒)を産 生して白血球やマクロファージを破壊し、生体の防御を回避できます。
多形核白血球の機能低下も認められ、これは家族性の傾向があります。さらに、過剰な炎症反応により、組織破壊が大きく なることも示されています(特に骨吸収に関与するプロスタグランジンE2の産生が高くなります)。
慢性歯周炎の免疫・炎症応答(模式図)
侵襲性歯周炎の免疫・炎症応答(模式図)
切歯(前歯)と大臼歯(奥歯)(特に第一大臼歯)にだけ現れる限局型(=げんきょくがた)と、多数の歯に現れる広汎型(=こうはんがた)に分けられます。
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治療中の30歳代の女性です。歯肉の高さとレントゲン写真での骨の高さの違いに着目してください。
様々な遺伝疾患により、歯周炎が悪化するものがあります。それらの疾患を列挙します。
・家族性周期性好中球減少症
・Down症候群
・白血球粘着能不全症候群
・Papillon-Lefèvre症候群
・Chédiak-Higashi症候群
・組織球症候群
・小児遺伝性無顆粒球症
・グリコーゲン代謝疾患
・Cohen症候群
・Ehlers-Danlos症候群(V・[型)
・低アルカリホスファターゼ血症
最終更新2012.12.28