歯の治療について

 虫歯や歯がなくなった場合の治療について説明します。代表的な治療法を取り上げていますので、実際には症状によ って治療法が異なることもありますので、ご了承ください。

虫歯の原因は?

 虫歯はプラーク(歯垢)の中にいる細菌により引き起こされる病気です。 しかし、細菌がいるだけでは虫歯にはなりません。食物の性質歯の硬さや唾の成分時間といった因子が関連しています。

 虫歯菌 : 虫歯だけではなく、歯周病もプラーク中の細菌が関係していますが、原因となる細菌の種類はそれぞれ異なります。虫歯の原因菌として代表的なもの はStreptococcus mutans(ストレプトコッカス・ミュータンス)です。

 食物の質 : 食べかすに含まれるを細菌が分解すると酸になります。これにより、歯の硬い部分が溶かされた状態を虫歯、専門的にはう蝕(=うしょく)と いいます。

 歯の結晶がつくられて硬くなることを石灰化(せっかいか)、虫歯などで溶けることを脱灰(だっかい)、脱灰した結晶が修復されることを再石灰化(さいせっかいか)といいます。

  歯の質、唾の成分 : 乳歯や生えてきたばかりの永久歯は石灰化が十分ではないため虫歯が進みやすく、生えてから時間が経った永久歯は石灰化が十分なため虫歯が進みにくいといえます。
 唾の量や酸を中和する働きの違いによっても、虫歯のなりやすさは異なります。唾の出る量が多い人や、酸を中和する働きの強い人は虫歯になりにくいといえます。また、唾の中にあるカルシウムやリン酸が脱灰された歯の結晶を再石灰 する働きもあります。

 時間 : 脱灰が起こるのはエナメル質(後述)の場合、pH5.5以下です。ミクロのレベルで脱灰と再石灰化が繰り返されています。脱灰される頻度が多いと、目に見える虫歯として現れてきます。
 同じ量のしょ糖を取る場合には、何度も小分けして食べたほうが虫歯になりやすいといえます。

 

虫歯はどのように進むの?

 虫歯がどのように進むのかを説明する前に、歯の構造について説明します。歯の頭の白くて硬い部分をエナメル質といいます。体の中で一番硬い 組織です。その内側の頭と根を構成しているのが象牙質です。エナメル質よりも軟らかい部分です。さらに、その内側には歯髄(=しずい)があります。この中には神経、血管、象牙質の元となる細胞などが含まれています。歯の周りの組織についても知りたい方は、歯周組織の解剖も参考にしてみてください。

 虫歯は進行度によってC0〜C4に分類されます。
 C0はエナメル質の表面が溶け始めているけれども、穴の開いていない状態です。表面が白濁してみえます。
 C1
エナメル質だけが虫歯になっている状態です。
 C2
象牙質まで虫歯が進んでいる状態です。しかし歯髄にまでは達していません。
 C3
歯髄まで虫歯が進んでいる状態です。
 C4
は歯の頭の部分が崩壊して残根になっている状態です。

 C3まで進んだときに、歯髄の神経がまだ一部生きており、炎症を起こしているものを歯髄炎(しずいえん)、歯髄の神経が死んでしまい、根の先端に膿の袋をつくっているものを根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)といいます。名前に歯周炎とつきますが、歯周病とは別の病気です。
 歯髄炎は残っている神経を取るために麻酔を必要としますが、根尖性歯周炎は歯の中の神経がなくなってしまっているために、麻酔は必要としません。

 

虫歯と エックス線写真について

 COやC1はエックス線写真では確認できないことも多いといえます。
 C2では歯の頭部分に黒い影が見えますが、神経の穴には達していません。虫歯の位置によって見え方は異なります。

 C3では虫歯の黒い影が神経の穴とつながっています。歯髄炎では根の先端に異常はみられません。

 根尖性歯周炎では根の先端に膿の袋を示す黒い影がみられます。

 C4では根だけになっていることが確認できます。

 

虫歯と歯の痛みについて

 象牙質には神経の穴から放射状に細い管が出ています。これを象牙細管(ぞうげさいかん)といいます。この中に直接神経が入り込んでいるわけではありませんが、表側からの刺激に対して細管内で液体が移動します。すると、歯の中にある神経を刺激して痛みを感じるようになります。

 また、歯の神経は根の穴だけではなく、歯の周囲にも分布しています。そのために、俗に言う歯の神経が死んだ歯でも痛みを感じることがあります。

 C0C1はエナメル質にとどまっているので、痛みはありません

 C2では上記のメカニズムにより、主に甘いもの冷たいものでしみるようになります。

 C3の歯髄炎では、急性炎症をおこしていると主に熱いものでしみるようになります。 これは神経の穴の中でまだ生きている血管が充血して神経を圧迫することによるものです。冷たいものを含むと充血がおさまり、痛みは弱まります。
 慢性炎症に移行すると空洞の部分が多くなり、冷たいものや熱いものにしみにくくなりますが、食事中に食べ物が虫歯の穴に入ったときなど、急に痛くなることがあります。

 C3の根尖性歯周炎では、歯髄炎から慢性的に移行すると歯の痛みはなくなります。 骨が溶けて膿の部分の容積を確保しており、平衡状態がとれています。
 急性の場合は何もしない状態で強烈な痛みがあります。これは根の先端で膿がたくさんつくられており、内圧が高まり、歯根膜を圧迫することによります。

 

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最終更新2005.4.7.