2024年1月の映画  戻る
コット、はじまりの夏 AN CAILIN CIUIN 静かな女の子
2022年 アイルランド 95分
監督・脚本 コルム・バレード
原作 クレア・キーガン
キャスト キャサリン・クリンチ(コット)/キャリー・クロウリー(親戚のおばさん・アイリン)/アンドリュー・ベネット(親戚のおじさん・ショーン)/マイケル・パトリック(実父ダン)
メモ 2024.1.31(水)なんばパークスシネマ
あらすじ
個人宅に電話が普及している様子から1950年か60年代かな、アイルランドで暮らしている9歳のコットは、4人姉妹の4番目、小さな弟もいてお母さんは産み月が近い。
夏休み、コットは車で3時間かかる親戚の農家に預けられる。
感想
みずみずしい。
「青いパパイヤの香り」をちょっと思い出す。
寡黙で家族からも変り者と思われているコットは家にも学校にも居場所がない。
(こんなに整った顔立ちの少女を誰もほっとかないんちゃうかとちょっと思うけど)
両親は言葉でも暴力をふるったりするわけではないし愛情がないわけやないねんけど、お父さんはちょっとのらさんで、お母さんは生活に疲れている。
 
コットは親戚のおばさんにやさしくお風呂に入れてもらい、1人部屋の清潔なシーツで眠る。部屋の壁紙は汽車の絵柄だ。
おじさんは女の子をどうあつかっていいかわからへんし、夏休みが終われば帰っていく少女に情がうつらないようにそっけない。
それでも、この家にいさせてもらおとお手伝いするコットがけなげやねん。
風でなびく草原、夜中の月あかり、そして自分を抑えていたコットの感情が噴き出すシーンがすばらしい。誰もあらがえない。
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枯れ葉 
2023年 フィンランド/ドイツ 81分
監督・脚本 アキ・カウリスマキ
キャスト アルマ・ポウスティ(アンサ)/ユッシ・ヴァタネン(ホラッパ)
メモ 2024.1.22(月)シアスタ心斎橋
感想
監督さんの映画愛や音楽愛に満ちた映画でストーリーや映像を追いながらもそれが気になる。
冒頭聞いたことのある曲と思ったら「竹田の子守唄」やった(**)。
映画館の入口に貼ってある黄色いポスターに「ノエル・カワード」の文字があった。ポスターのアレ汽車よね。映画「逢びき」みたい。
そうか、やっぱ本作「枯れ葉」は中年男女のメロドラマなのか。「逢びき」と同じ結末なの?と怖くてどきどきしてくる。
 
ホラッパのアルコール依存症を感じ父も兄もアル中だったアンサはがっかりして「男はみんな同じ」と友に嘆く。
女友達が「男は同じ鋳型の鋳物。(しかも)壊れている」と答える。
 
監督さんにしたら珍しく長いセリフで、そやから最初に壊れた鏡に映されたホラッパの顔がピカソの絵みたいやったんやわ。
アンサは生真面目そうでそれが純真そうで、ホラッパはへたれたライアン・ゴズリングみたいなちょっとくたびれたいい男なの。
ウクライナ戦争も起こり世界は不確実な時代でも、カラオケや映画を楽しみペットと睦むごくごく庶民の幸せが感じられる。
明石屋さんまさんの『幸せってなんだっけ♪  なんだっけ♪ ポン酢しょうゆのある家さ』やねんなと思う。
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カラオケ行こ! 
2023年 日本 107分
監督 山下敦弘
原作 和山やま
出演 綾野剛(成田狂児)/齋藤潤(岡聡実)
メモ 2024.1.26(金)TOHOシネマズなんば
あらすじ
大阪の中学生合唱コンクールの会場で、合唱部の部長は若い男に声をかけられる。
男はヤクザブラック企業の社員という。組長社長がカラオケ好きでカラオケ大会でべったになると恐ろしい罰ゲームが待っている。
罰ゲームを逃れるため中学三年生の男子に「歌、うまなるようにレッスンしてくれ」と頼むのだった。
感想
ギャグ映画と思う。楽しかった。楽しかったんやけど。。。
昔々、田原総一朗さんが「小沢一郎さんは信念の政治家だ。だから危険なのだ」と言ってはって「へ〜信念の政治家って、よさそうに聞こえるけど」
と思ったことがある。
映画の舞台は中学の合唱部。まわりの人の歌声も良く聞いて皆で力を合わせハーモニーしなくてはならない。
でも熱い中二の後輩を見ていて、思うんよねえ。
所属しているコミュニティがある方がいっかと軽い気持ちで合唱をしているひともいるんちゃうかな。
 
たいていのことに「熱い思い」や「情熱」を抱けないような私はついていけない。他のひとの「大切にしていること」がよくわからない。他人に自分の思いを強いることはしない(つもり)。
映研で昔の白黒映画を見ている方がしっくりくる気がする。でも考えて見るとさめた感じやったけど、映研の彼の思いは深かった。彼はわかったような事は言わない。
これは、青春映画でもあるんやね。
(白黒映画は4作でてくるんやけど、最初のジェームズ・ギャグニーの映画はわからなかった)
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2023年 日本 158分
監督・原作・脚本 北野武
メモ 2024.1.18(木)TOHOシネマズ梅田
感想
なにゆえこの映画を見ようと思ったか、というと
昨年12月末に大きな集まりがあって、丸テーブルのお隣が年配の女の方でグループでバスを仕立てて福知山から来られたとのこと。
「福知山、福知山って?」と頭を絞って「天橋立2度行ったことあります」とお話したら「天橋立は有名やから」「福知山は田舎やから」
(後で調べたら天橋立は宮津市やった)
と言われたので更に頭を絞りこうのとりに乗っている時に見た!、そうやお城があった!と思い出す。
「福知山ってお城ありますよね」と話をすると「明智光秀が建てた」んやそうな。丹波は明智光秀が治めていた(時もあった)と聞きかじってたけど
福知山もやったの。
「首はよかった」「えっ?」「たけしの」「ああ映画ですね」
「今迄は明智光秀はアレな描き方ばっかりやったけど、たけしの首みたらうちらすっきりした。まっとうやった」
へーと思って、今回映画を見る、、、、まっとう、まっとうねえ。
まあ狂ったひとや一癖も二癖もあるある狸やら猿やらの魑魅魍魎の中ではクソ真面目なの、明智光秀
 
お話は米澤穂信『黒牢城』の荒木村重の謀叛、 羽柴秀吉が1581年鳥取城を干乾しにした兵糧攻め渇殺(かつえごろし)から始まる。荒木村重は女子供家臣を残し逃げる。家臣も逃げる。
天下人になりかけている織田信長(加瀬亮)とどん百姓(中村獅童)の両極端を中心に、権力を持っているはずの有力城主も茶人もお寺も信長の機嫌次第でいつ首が飛ぶやもしれぬ戦乱の時代。
皆さん首元がうすら寒い。 そこを耐え忍び策を弄し天下人になったひとも江戸時代までしぶとく生き残ったひともいる。
この映画は「能」が2つ舞われる。ひとつは本能寺での能とふたつめは羽柴秀吉に水責めされた備中高松城の城主清水宗治が切腹前に船の上で舞う。
加えて安土城の天守閣のベランダみたいなところで明智光秀が織田信長に蹴られ続ける(まあまあと止めに入るひとはいない)
ここも能舞台の様やった。この場面と秀吉の中国大返しの俯瞰がよかったな。
(おにぎりとか水の用意もあるの。兵站もわずかながら描かれる。兵站がなければ戦はできぬ)
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宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました 
2022年 韓国 113分
監督・脚本 パク・ギュテ
メモ 2024.1.9(火)なんばパークスシネマ
あらすじ
一枚の宝くじが風に吹かれて韓国と北朝鮮の境界線を守る韓国軍の兵士に拾われる。その宝くじは一等の大当たりだった。
拾った兵士は狂喜乱舞するが、風のいたずらでまたしても飛んでゆき軽々と国境線を越え北朝鮮に不時着した。
感想
南北ベトナムはとうの昔に戦争が終わったし東西ドイツは統合したし、もはや同一民族・国家の分断を描けるのは朝鮮半島だけやなかろか。
などと考えて見ていた。その悲劇というか特性というかを生かして、こんなちゃらけたコメディを作りはるんやねえ。たいしたもんやね。ため息。
今は韓国にとって北朝鮮は貧乏な親戚に過ぎないんやろか、などと不届きなことも思ってしまう。
 
というのは置いといて、よく出来ていた。緊張と緩和が可笑しい。
北朝鮮の男前の兵隊さんがガツガツ食べて、邪魔されるとガルルゥとなったり、韓国の兵隊さんが宝くじの換金という大事な使命があるのに、あっちに寄ったりこっちに寄ったりと道草するのがいい。
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ナポレオン NAPOLEON 
2023年 米国 158分
監督 リドリー・スコット
キャスト ホアキン・フェニックス(ナポレオン)/ヴァネッサ・カービー(ジョゼフィーヌ)/エドワール・フィリポナ(ロシア皇帝アレクサンドル1世)/ルパート・エヴェレット(ウェリントン)
メモ 2024.1.4(日)TOHOシネマズ梅田
感想
大作
マリー・アントワネット王妃がギロチンで斬首刑に処せられた1793年、ナポレオンはトゥーロン攻囲戦(港)で王党派の残党とイギリス軍を打ち破り24歳で名を上げる。
1798年エジプトに遠征しイギリスと戦い(ロゼッタ・ストーン発見)トラファルガーの海戦(ネルソン戦死)では敗れる。ナポレオン法典を制定し1804年ノートルダム寺院で戴冠式が行われ皇帝となる。1812年ロシアの遠征はモスクワ大火と冬将軍に敗れ、ウィーン会議は踊り、1814年退位しエルバ島で隠遁、がへこたれず脱出、1815年ワーテルロー(ウェリントンと戦う)でイギリスとプロイセン他もろもろの連合軍に敗れセント・ヘレナ島へ幽閉される。その後1821年に51歳で亡くなる。24歳から45歳まで戦争に明け暮れた生涯。
 
昨年9月に鳴門の大塚国際美術館で『ナポレオンの戴冠式』を陶器で再現したのを見た。壁一面で何しろでかい。ルーブル美術館にあるのと同じ大きさで縦6.21m、横9.79mとか。。。当時の栄華が偲ばれます。
ナポレオンや王妃ジョゼフィーヌやふたりのどろどろした関係よりも興味深いのはナポレオンと戦った(祖国戦争)ロシアのツァーリ アレクサンドル1世。とてもエレガントな人となりでエカチェリーナ二世の孫らしい。検索したところ、この時パリに入城したことにより、皮肉にも青年将校たちが「うちらの国、遅れてるやん」と痛感することとなり後のデカブリストの反乱(1825年)を起こしロマノフ王朝は不安定になり(「キバリチチ爆弾」でアレクサンドル2世が暗殺される)、ロシア革命(1917年)ロマノフ王朝滅亡に繋がったらしい。
 
戦闘はアドレナリンでまくり迫力満点。ただ気になるところがひとつあって、ナポレオンとアレクサンドル1世が会話したことが事実であるならば何語で話をしはってんやろね。フランス語? 少なくとも英語ではないと思う。
だいたいフランスの人々は英語でしゃべるナポレオンをどう感じてんのかな。例えばもしかしたら100年後か200年後に中国で源平合戦の映画かなんかが作られたとして(ありえんけど)、中国語で話している源義経、頼朝、平重盛、宗盛。うーん、面白いような情けないような。
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