2023年8月のミステリ 戻る

此の世の果ての殺人 
江戸川乱歩賞
KODANSHA 2022年 荒木あかね著 351頁
あらすじ
2023年3月7日直径7.7キロメートルを超える小惑星『テロス』が熊本県阿蘇郡に衝突する
後2カ月ちょっと。恐竜と同じように人類も滅亡するらしい
ハルは教習所のイサガワ先生に自動車の運転を習っていたが、教習所の車のトランクから女性の死体が見つかる。どう見ても他殺体
感想
「地上最後の刑事」みたいな設定なんやけど、なんや違和感がある
この小説の世界に必要なんやろなと思うし、こんな絶望的な状況で自分がどうなるかわからへんけど、
日本から逃げるやろか? だいたい受け入れる国があるの?
おそらく宗教的な団体が乱立するんちゃうかと思う。「渚にて」みたいに自殺薬は配られないのかな。
主人公が阿蘇に向かうというのはわかる。私もできればそうしたい。
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秘境駅のクローズド・サークル 
東京創元社 2023年 鵜林伸也(うばやししんや)著 
あらすじ
「ボールがない」 高校の野球部員とマネージャーたちがいくら探しても見つからないボールの行方を推理する
「夢も死体も湧き出る温泉」 田舎の温泉街、名物のひとつ河原の「手掘り温泉」はスコップで掘るだけで温泉が湧く 
「宇宙倶楽部へようこそ」 高校の天文部員は一年生が持ち込んだメールと添付写真の謎に挑む
「ベッドの下でタップダンスを」 社長の奥さんと社長宅でベットイン中、社長が帰ってきた! あわててクィーンサイズのベッドの下に潜り込む
「秘境駅のクローズド・サークル」 T大学鉄道研究会の7名は新入生歓迎を兼ねスイッチバック体験に徳島の土讃線(どさんせん)に乗り秘境「坪尻駅((つぼじりえき))」で下車する
感想
アイデアが浮かんだ後、作者があーでもないこーでもないと頭をひねって作りだした(のが感じられる)手作りの様な作品。
「宇宙倶楽部へようこそ」はそこに答えがあったのにーと、ちらせつかし方が巧みで感心した。欧米の小説でこれは難しいやろね。
「夢も死体も湧き出る温泉」が一番好きかな。これをアリバイ崩しというんやろか・・・とは思うけど。
ドラマ「ブラウン神父」の様に住民がわいわいがやがやと明るくコミカルで読んでていて楽しい。
主人公が明日は客が多かろうと屋台の仕入れを多くしたり、スコップを用意したりと小商いの工夫をしているところも楽しい(食いしん坊なもんで単に庶民的な食べ物の出てくる本が好きなだけかも) 屋台は焼きそばやたこ焼きやお好み焼きではなく関東炊きでもなく、味噌田楽というのが目新しい。味噌田楽の屋台があるんや。何ゆえ味噌田楽? 
そうか食堂の「手作り味噌」と探偵さんが褒める(いきなり言うと唐突なので)つゆはらいやったというのがミソなんか。
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不知火判事の比類なき被告人質問 
双葉社 2022年 矢樹純著 
あらすじ
法廷でたがいの主張、立証、証人尋問と審議も終わりかけの時、3人の裁判官の内左席の不知火裁判官の被告人質問がとっても変わっている。
法廷内の全員が「はあ?」ってなる中、不知火裁判官は謎解きを始めるという5作の連作短編集
感想
不知火裁判官は調書を読み込み現場を見ることもなく真相に辿り着く。「安楽椅子探偵」の一種
どこか座りの悪さが・・・この作品は裁判を傍聴するフリーライターの視点で書かれている。じゃ社会派なのともいいきれず、本格物なの?、変人裁判官をすえているけれどコメディでもないし。
この作品は怒れる弁護士あるいは怒れる検察官の視点で書いてライターはもっと脇役にして、コミカルにからっと書いたら面白かったような気がする。なんかジメジメしている。二時間ドラマ風になっていく・・・
コメディって難しいのね。書くのも演じるのも
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犯罪心理捜査官セバスチャン 
創元推理文庫 2010年−2014年 M・ヨート&H・ローセンフェルト著 ヘレンハルメ美穂訳
あらすじ
「犯罪心理捜査官セバスチャン」 少年の死
「模倣犯」 過去の殺人と似た手口の連続殺人
「白骨」 山の中で白骨死体が見つかる
「少女」 一家皆殺し
感想
スウェーデンの映像関係の仕事をしているおふたりの合作シリーズ
陰鬱な事件ながらTVドラマ風であっと驚く展開があり軽く読める。お話は連続しているので1作目から読まれるをお奨めします。
 
中年男の犯罪心理捜査官セバスチャンはひと言で表現すると傲慢。 地球は自分を中心に回っていると思っている。
このひとが嫌なヤツながら案外コミカルで魅力的やねん
が、セバスチャンには誰にも明かせない秘密(弱み)があった。
4作読んで思うのは、捜査チームの女性陣ふたりウルスラとヴァニヤは美人で有能らしいねんけど、気が強すぎてまったく魅力が感じられない
何故? 女性になんか恨みでも・・
うじうじしている男性陣3人はそれぞれ弱みがありながらもかわいげがあるのにな。。映像化を見たら感想は変わるんやろか。
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