2020年9月のミステリ 戻る

メインテーマは殺人 
アンソニー・ホロヴィッツ著 山田蘭訳 創元推理文庫
あらすじ
「私のちいさなお葬式 」と同じように自分の葬式の段取りをした女性が、次の日に殺される。彼女は何か予兆を感じていたのか。
元刑事のホーソーンが事件を「金になる」と嗅ぎ付け、知り合いの脚本家ホロヴィッツに
「名探偵の俺が謎をとくからあんたが顛末を本にしてめーへん?」と悪魔のささやきをし、にわかコンビは謎解きに乗り出す。
感想
10年くらい前かなあ。「国際財務報告基準『IFRS(イファース)』が来る! 黒船が来る!」って会社で大騒ぎになったことがあって。
難しいことはわかれへんねんけど、会計基準が国それぞればらばらではこのグローバル時代、どこの会社がもうかっているのかそうでないのか
資産があるのか無いのかわからへんのと違う? ということで世界統一基準がいるんじゃという事らしい。
でも国それぞれ産業が違うやん。総論賛成・各論反対で自国に有利な基準にしようと綱のひっぱりあい。みたいで。
その時に知ったんやけど、英国という国は「金融」で儲けているらしいという事。
たぶん大英帝国時代の資産運用で(旧植民地や連邦含めて資産)食ってる。
 
で、小説なんかもこの国は大物を生み出して今も儲けてるよなーと思って。
英語という言語で万国が自国語訳しやすいという事も大きいんやろうけど。
コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」でしょ。アガサ・クリスティの「ポワロ」と「ミス・マープル」でしょ。
近年には「ハリー・ポッター」もあるし。そうそうシェイクスピアもあったな。
 
本作は、その過去の資産(シャーロック・ホームズとワトソン)を再利用した作品なの。(オマージュともいう)
が、年と共に記憶が定かやないんねんけどミステリ小説でこれほど気が合わなくて尊敬できなくてツンツンしている相棒物ってあったっけ?
警察小説にはあるかな。パズラーでは思い浮かばない。
映画では敵の敵は味方みたいに利害が一致してしょーことなしに相棒になるのある。例えば「手錠のままの脱獄」とか「48時間」とか。
でもパズラーでは思い浮かばないか。
これは互いに同列の新しい相棒ミステリかもしれん。
ぶっとぶような解決ではなかったけど「アイスクリーム屋」の謎もうまく解けているしよく考えられている。地味やけど。(本の感想はこれだけかい)
 
謎解き以外に印象に残ったのはふたつ。
スティーヴン・スピルバーグ監督とピーター・ジャクソン監督が作中に出てくるんやけど、ふたりをとっても持ち上げながら
英国人らしく(新世界を)少しばかにしているように感じるのは私だけ? 
それとも大英帝国の落日を自虐しているのか。俳優もアメリカになびくって書いてはるし。
(「刑事フォイル」を見た時に若造のジェームズ・マカヴォイがほんのちょい役で出ているのにびっくりした)
 
もうひとつはドラマ「奇術探偵ジョナサン・クリーク」を2回書いてはるところ。
前にも書いたけど奇術をするわけやなく、からくりを考えるのが仕事で風車に住んでいる変人探偵の話で、
1997年から2004年の作品みたい。手垢のついたトリックながら料理するのがうまいの。特に泊まった人がみな消える部屋がよかった。
主役のアラン・デイビィスっていう役者さんはミス・マープルの「ゼロ時間へ」ではマラード警部役をしてはったのを見かけた。
話が飛ぶけど、英国のミステリドラマを見ていて感心するのは小道具の数々。ドラマでこのレベルの高さ。輸出できるよな。
美術専門で用意する会社があるんやろか。
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念入りに殺された男 
エルザ・マルボ著 加藤かおり訳 ハヤカワポケットミステリ 261頁 2019年
あらすじ
ナントで農業とペンションを営むアレックス一家は、お忍びで訪れた大物作家シャルル・ペリエに驚く。