2020年1月のミステリ 戻る

死者の国 
ハヤカワ・ポケット・ミステリ 773頁 ジャン=クリストフ グランジェ著 高野優監訳 伊禮規与美訳
あらすじ
ジョーカーのように口を耳まで裂かれ、下着で縛り上げられ喉に石を詰められた女性の遺体が発見される。
パリ警視庁のコルソ警視は自身の秘密の生い立ちと、今は離婚と息子の養育権の争いの中にあり二重三重に苦しみながら憑かれたように事件を追う。
感想
ポケットミステリ最強厚さ4センチ。2段組み773頁
前半はただれた変態異常性的倒錯者の勢ぞろいでありエロとグロの血まみれ。すごい。
事件もめちゃくちゃなら捜査する方もめちゃめちゃ。地獄への道行き、道連れなん。
著者はジャン・レノの「クリムゾン・リバー」の原作者だそうです。
後半の法廷のシーンから雰囲気がガラッと変わる。悲しい話なんです。。。。
でも、何はさておき読後は途中で挫折せず読み終えた達成感がある。
 
コルソと部下のバルバラ(バービー)の関係は特捜部Qのカールと風変わりな部下ローセの様に感じた。
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世界を売った男 The Man Who Sold the World
第二回島田荘司推理小説賞
2011年 文春文庫 323頁 陳浩基(ちんこうき)著 玉田誠訳
あらすじ
刑事の許友一(ホイヤウヤツ)は車の中で目を覚ます。昨夜は飲み過ぎたようだ。先週起こった東成ビルの殺人事件を捜査していたんだっけ。しかし実際にはその事件は6年前に解決済だった。俺には6年間の記憶がない。
感想
刑事と新聞記者の探偵ものと思いきや、どんでん返しの本格推理となっていく作品。
似て非なるものの説明に「映画」を持ってきたり、最初が最後に繋がったりと凝ったお話やった。
ただ中国名前が覚えられずどうせならすべてに読み仮名をふって欲しかったなあ。
もう、林建笙(ラムケンサン)は林さん、呂慧梅(ルイワイムイ)は梅さんでいいやと思って読む。
前半お話がうすらぼんやり霧の中を行くようなのも相まって読み続けるのがたいへん。後半は話が動きがんばったかいがあった。
犯人の動機というかそうなっちゃった説明が弱いような気がするけど、本格推理に動機がどうのこうの言うのはやぼですかね。
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カルカッタの殺人 A RIAING MAN
英国推理作家協会賞ヒストリカル・ダガー賞
2016年 ハヤカワポケットミステリ 417頁 アビール・ムカジー著 田村義進訳
あらすじ
時は1919年のインド、カルカッタで英国人政府高官が惨殺される。
スコットランド・ヤードからインド帝国警察に赴任したてのウィンダム警部は、印度人部長刑事バネルジーの助けを借りて捜査にあたる。
感想
最近なんで読んだのかな(・・・脳みそが不安やわ)うーん「死者の国」だったか。「世界の歴史の中で一番の麻薬の売人はアヘン戦争を起こしたヴィクトリア女王」というセリフを読んで、なるほどとうなりました。仏蘭西が英国をどの口でいうかーとも思いましたが。
 
そういう道徳観のなさそうな大英帝国が「道徳的優位性」を盾にインドを支配し搾取統治していた時代の物語で当時の世情を垣間見ることができとても個性的です。作者はロンドン生まれのインド系移民二世の方だそうです。