2016年8月の映画  戻る


イレブン・ミニッツ 11minut
2015年 81分 ポーランド/アイルランド
監督・脚本 イエジー・スコリモフスキ(「水の中のナイフ」
撮影 ミコライ・ウェブコウスキ
編集 アグニェシュカ・グリンスカ
音楽 パヴェウ・ミキェティン
メモ 2016.8.27(土) シネ・リーブル梅田
あらすじ
ポーランド人の女優アンナ(1)、結婚したてのアンナの夫(2)、映画のプロデューサ(3)、質屋に泥棒に入る青年(4)、川べりで絵を描いている老人(5)、刑務所から出てきたばかりのホットドッグ屋(6)と麻薬中毒のバイク便の息子(7)、男と別れ犬を連れた女(8)、救急車で妊婦を運んでいる医者(9)、ホテルのベランダをメンテナンスしている男(10)、その男の愛人(11)の11人と1匹の5時から5時11分の間とホテルの1111号室から始まった出来事。
感想
どこからがネタバレかわからないです。
70歳を過ぎた監督が撮ったとは思えない、様々なピースが一点に集まってくるという計算された実験的な映画、やと思う。 (はっきり言ってわけわからない。もやもやする。 それぞれのピースのドラマに至っては退屈。先生は唾をはきかけられるような何をしたん? 気になるんですけど。 そこは5時11分を覗き見るため我慢するの)
ところどころ携帯のカメラ、ビデオ、監視カメラの映像もはめ込まれていた。
人生は起承転結とは限らないねん(映画もやけど)。人生はいつ崩れ落ちるかわからない。
 
映画を見終り前を歩いていた40代のカップルの女の人が「あの黒い点は何やったんですか?」と片割れの男の人にたずねるのが耳に入る。男の人の方は「それは、それぞれの取りようやから」と答えてはる・・・・・いやいやいやいや、あなたの取りようを聞きたいんやから(こっちは)。
たぶん、ほころび、破滅の暗示やったんやと思うけど。そう破滅の暗示が散らばっている。 女優が薬で気を失しなったり飛行機がビル近くを飛ぶのもシャボン玉や鏡が割れるのも同じく暗示している。音楽がまた不穏やねん。納得する映画やなくて感じる映画。
 
救急車で妊婦を運び出すところを俯瞰しているシーンでは右上に穴があいていた。
その時はこれは神の視点なん? 障子に穴開けるように覗いてはるの? それともこの世界は二重構造になっているの? これはSFやったん? または大地震でも起こる予兆? と思いました。 しかし惨劇のトリガーがあのすっとこどっこいな行動とは。 (災厄はやはり空から降ってきたか。)
 
2016.8.29(月)
イエジー・スコリモフスキ監督へのインタビュー記事を読んでいくつかの疑問が解けたので追記します。
基本的にこの映画は午後5時前と5時以降の2つに分かれるそうです。5時前は偶然に撮られたものを集めただけにしたかったとのこと。
11人から12人ぐらいの物語を75分から100分くらいの映画としてまとめようと考えると、一人あたりの時間が10分前後という計算になります。「10」という数字は完璧すぎるきらいがあるし、いろいろと象徴的な意味も絡んでくるのであまり望ましくない。「12」もいろんな連想がありますね、12カ月とか十二使徒とか。さらに「13」というのは縁起がよろしくない。で、「11」はグラフィック的にもいちばん綺麗な数字ということもあって、それに決めたんです。(中略)
私の映画において音というものは、映像と同格と考えています。眼のためだけではなく、耳のためのものでなければならない。(中略)
『イレブン・ミニッツ』では普通の映画とはちょっと違う目的で音を使っています。どういう目的かというと、人に刺激を与える・・・というよりも、少しイラつかせようとしているんですよ。映画を観るときにある意味もたらされる「心地よさ」を追い出すための刺激ですね。音によって、これから予測する以上の悲劇が起こるよという心理を喚起するような、そういう仕掛け、仕組みを使っています。(中略)
ホットドッグ屋の背後にあるポスターには「CHILD ABUSE(児童虐待)」と書いてあるそうです。
象徴的な表現や仕掛け、仕組みというのはもちろんたくさん採用していますが、押しつけがましくしたくはなかった。確かに「黒い点」がこの映画には数か所で出てきます。紙に絵の具が落ちるというのも、警官がモニターに浮かんだ染みを消そうとするのも、まあ実際にありがちな話ではありますが。ただ「空に不思議なものを見た」というのはちょっとレヴェルが違うけれど、実際に何がみえたのかということまでは言いたくない、というところですね。実際、私たちは本当に何が見えているのか、よく判っていないのです。まあ、霊柩車は2回くらい出てきますが、死のイメージを押しつけるような使い方はしていないつもりですよ。
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スロウ・ウエスト Slow West
2015年 84分 英国/ニュージーランド
監督・脚本 ジョン・マクリーン
音楽 ジェド・カーゼル
キャスト コディ・スミット=マクフィー(スコットランド貴族・ジェイ)/マイケル・ファスベンダー(賞金稼ぎ・サイラス)/ベン・メンデルソーン(元仲間のペイン)/カレン・ピストリアス(ローズ)/ロリー・マッキャン(ジョン)
新宿シネマカリテ「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016 in 大阪」
サンダンス映画祭2015ワールド・ドラマ部門観客賞
メモ 2016.8.17(水) シネ・リーブル梅田
あらすじ
1870年のアメリカ。馬に乗りトボトボ西へ向かう少年がいた。少年はスコットランドから愛する年上の女性を追ってアメリカにやってきた。森では南北戦争後の軍人崩れが原住民を狩っている。賊から少年を助けた謎の男は物騒やからボディガードを雇わないかと持ちかける。男は賞金稼ぎだったが時代の波を感じていた。
感想
不条理なこの世界。 不思議な縁。
父はドイツ人、母は北アイルランド人でアイルランドで育ったマイケル(ミヒャエル)・ファスベンダーが制作・出演で、なにゆえ西部劇を撮りたかったのかはわからないんやけど、男ふたりが荒野を馬でポクポク行くシーンがいい。ゆったりしていて誰もいない。風がそそぎ天も地も広々としている。 芝生のグラウンドの外野手ってこういう気分なんちゃうかな。広々している。  少年は男を導く天使やったんかもしれん。
 
考えてみれば西部劇って、お上はあてにせーへんと生きる力、多種多様な人々、運命、相棒、親子の情愛、ガンアクション、少年の成長、ロマンス、無常って色々な要素が盛り込めるんやわ。
お薦め度★★★★戻る

シン・ゴジラ 
2015年 120分 日本 東宝
監督 庵野秀明/樋口真嗣
脚本 庵野秀明
出演 シン・ゴジラ/長谷川博己(内閣官房副長官・矢口)/竹野内豊(内閣総理大臣補佐官・赤坂)/石原さとみ(米国大統領特使)/高良健吾(秘書官)/松尾諭(政調副会長・泉)/津田寛治(厚生労働省)/市川実日子(いちかわみかこ環境省・尾頭)/高橋一生(文部科学省・安田)/余貴美子(よきみこ防衛大臣)/國村隼(統幕幕僚長・財前)/平泉成(ひらいずみせい・外遊していて命拾いした農林水産大臣・里美)/柄本明(内閣官房長官・東)/大杉漣(総理大臣・大河内)/ 片桐はいり(職員)/嶋田久作(外務省)/光石研(都知事)/渡辺哲(内閣)/古田新太(警察庁)/モロ師岡(警察庁)/諏訪太朗(すわたろう)/小出恵助(わかりません)/斎藤工(わかりません)
メモ 2016.8.14(日) TOHOシネマズ梅田
あらすじ
東京湾で漂流中のグルーザーが爆発! 東京湾アクアラインが崩落! 原因は見つかっていない地下火山なのか。右往左往する政府・・・・。
それは巨大な生物で急速に進化し羽が生えるかもしれない、単性生殖するかも・・となると「極東の出来事」と静観していた世界が騒ぎ出す。
感想
近隣のややこしい国々に対し「自衛隊の力」を見せつけている映画なんやろか。攻撃ヘリの編隊とフォバリングがかっこいい。戦車がくるくる回りあんなに機動的とはびっくり。
あのタワークレーンは福島の原発事故現場で使われているんやろか。
日本国の様々な「今そこにある危機」 地震、ルール無視の不穏な近隣諸国、原発、お役所仕事、老害、日米安保の光と影、東京一極集中をこれでもかと突きつけてくる。シン・ゴジラは大魔神のような荒ぶる神なのか。
 
役立たずの御用学者を原一男(ゆきゆきて、神軍)、犬童一心(いぬどういっしん、ジョゼと虎と魚たち)、緒方明(独立少年合唱団 )の3監督が演じてはったらしい。塚本晋也監督は役に立つ変人、異端児、問題児の寄り集まり巨災対メンバーの学者してはった。
映画を一緒に見て赴任先に帰ったちびさぼに「手弁当で出てはるのかも。おっちゃん、ゴジラ好きやから」とラインで感想する。「おっちゃん、みんな?」 「おっちゃんみんな好きやで。ウチくらいから上の人。あのダダダンダダダンって聞くだけでわくわくするんちゃう。次の作品もありそう」
お薦め度★★★★1/2戻る