2016年5月の映画  戻る


マーシュランド LA ISLA MiNIMA / MARSHLAND
ゴヤ賞監督賞、作品賞
2015年 130分 スペイン
監督 アルベルト・ロドリゲス
脚本 ラファエル・コボス
原作 ユン・テホ
撮影 コ・ラクソン
キャスト ラウール・アレバロ(ペドロ)/ハビエル・グティエレス(フアン)
メモ 2016.5.28(土) レンタルDVD
あらすじ
1939年から続いたフランコ独裁体制が死により終わり、スペイン立憲君主制に移行した頃のスペイン南部アンダルシア地方(闘牛とフラメンコの発祥の地)。そこは湿地帯が広がる田舎町。正義感が強すぎて疎まれ首都マドリードから左遷されてきた刑事ペドロが、売春婦から賄賂を取っていた事がバレて流されていた刑事フアンの相棒となり、少女ふたりの誘拐惨殺事件を探る内に町の暗部に踏み込む。
感想
順々に手がかりを追っていく大好きな刑事の相棒物語と思っていたら・・・・・最後は全然違う絵になっていた(驚)
陰湿なのは湿地帯だけやなかった。
すごい。
 
トルーマン・カポーティ記者が検視の情報を欲しがるのは拷問の手口を集めてはるんか。
ナチを追ったモサドみたい。
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ヘイル、シーザー! HAIL,CAESAR!
2016年 106分 米国
監督・脚本 ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
撮影 ロジャー・ディーキンス
キャスト ジョシュ・ブローリン(何でも屋エディ・マニックス)/ジョージ・クルーニー(大物俳優ベアード・ウィットロック)/チャニング・テイタム(踊る紐育バート・ガーニー) /スカーレット・ヨハンソン(水着の女王ディアナ・モラン)/オールデン・エアエンライク(カウボーイ・ホビー・ドイル)/レイフ・ファインズ(監督ローレンス・ローレンツ)/ジョナ・ヒル(弁護士ジョー・シルバーマン)/フランシス・マクドーマンド(編集者C・C・カルフーン)/ティルダ・スウィントン(コラムニスト・双子のソーラとセサリー・サッカー)
メモ 2016.5.21(土) TOHOシネマズ梅田
あらすじ
1951年のハリウッド、キャピトル・ピクチャーズ・スタジオのよろず屋エディ・マニックス(ジョシュ・ブローリン)は日々寝る間もない。女優のスキャンダルをもみ消すため薄暗い早朝から張り込み、フィルムノワールばりに現場へ踏み込む。女優にお仕置きをし、写真機のフィルムを抜き取り、駆け付けた警官に賄賂をつかます電光石火の慣れた手つき。
スタジオに戻れば問題山積み。宗教の歴史大作映画に反対するユダヤ、カトリック、プロテスタントの宗教者たちのそれぞれのそれぞれな話を聞き説得し、洗練された映画を身上とする監督に、セリフも覚えられないなまり丸出しの山猿カウボーイを押し付け、演技指導するようなだめる。そこへ古代ローマの歴史物「ヘイル、シーザー!」主演の大物飲んだくれ俳優ベアード・ウィットロックがいなくなるという事件がぼっ発! 残されていたのは「10万ドル用意しろ」という脅迫状だった。
感想
映画の中の映画が愉快! 楽しい。
監督さんたちもスぺクタルミュージカル、タップダンス、上品なハイソサエティ、歴史大作と色々な映画のおいしいとこだけ撮れてさぞ楽しかった事であろう。
映画という虚構の世界を表と裏から見せてくれる。そしてこの作品も映画であり虚構という二重構造になっている。
黄金期を謳歌していたハリウッド映画がテレビに脅威を感じ、負けじと大作映画を作り続けていた時代のスタジオの表と裏のふたつの顔。
てんやわんやの撮影風景、地味な編集と映画の躍動感、見たことある場面のダイナミックさに魅了される。笑顔やルックスの素晴らしさ、踊りのテクニックに比べ、現実は幼稚ではすっ葉でダメダメな俳優の落差も面白い。
シーザーって言えば莫大な製作費で20世紀FOXの屋台骨を折りかけた「クレオパトラ(1963)」はクレオパトラとシーザー(カエサル)の話やったな。
 
夜更けの大きなセットの中を思い惑いながら歩くエディ・マニックス(ジョシュ・ブローリン)がいい。モノクロ映画の様。なんかイントレランスみたい。ほんまええ俳優になりはったわ。
洗脳されうわ言のように権利を主張するベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)に一発お見舞いする。俺がなんとか作品をまとめあげようと東奔西走しているのに何をたわごとゆーてるんや、権利もへったくれもない。お前はゆうた通りにしてたらえーんや、このあほんだらとばかりに。スタジオシステム(脚本、演出、編集一切合財を製作者が握る)にとって組合とかスト、共産主義者って扱いにくいやっかいな獅子身中の虫やってんね。こういうちゃらけた風にハリウッドテンを描くとは。ねえ。
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インサイダーズ/内部者たち
2015年 130分 韓国
監督・脚本 ウ・ミンホ
原作 ユン・テホ
撮影 コ・ラクソン
キャスト イ・ビョンホン(アン・サング)/チョ・スンウ(検事ウ・ジャンフン)/ペク・ユンシク(新聞社主幹イ・ガンヒ )/イ・ギョンヨン(政治家チャン・ピル)/キム・ホンファ(自動車メーカの会長実業家オ・ヒョンス)/チョ・ジェユン(パン捜査官)/ペ・ソンウ(パク・ジョンパル)/キム・デミョン(コ・サンチョル)
メモ 2016.5.7(土) シネマート心斎橋
あらすじ
政治家の裏金作りを暴こうとするウ検事は、目の前で告白者の自動車メーカの元財務部長を裏社会のアン・サングに奪われてしまう。アン・サングは、信頼できる兄貴分の新聞社主幹イ・ガンヒに裏金作りの証拠リストのコピーを預け、親分のところにリストを持っていくが、勝手な事をする調子に乗っているヤツとヤキを入れられサイコ野郎に右手首をのこぎりで切り落とされてしまう。
それから2年、ごろつきアン・サングは復讐の機会を待ち、バックをもたないウ検事は失態を挽回しのし上ろうとしていた。
感想
ねたばれあります。
 
ウ検事は、告白者を見張りもつけずトイレに行かせて拉致されるねん。そして鍵となる人物も逮捕した後取り調べ中に目を離して投身自殺されちゃう。あんた何してんの、学習能力ないの。まだあったな。そうそうアン・サングと敵の敵は味方と手を組んで内部告白者にするんやけど、アン・サングの過去も調べていないもんやから敵にすっぱ抜かれて「信頼できない証人」にされてしまう。脇が甘いねん!
 
アン・サング役のイ・ビョンホンが、あんたはショーケンか水谷豊かってなチンピラ振りでなんか弱くて。人情家とはいえ部下の人は「兄貴、兄貴」ってよういつまでもついていくよね。何があったのか新聞社主幹イ・ガンヒを頭っから信じちゃって。ちょっと考えたら誰が裏切り者で右手を切り落とされたかわかるやんか。本当の兄弟なんかは最後まで不明。 この情念の深さは国民性の違いと思う。
こんなふたりやのにかしこなりはって。今までのヘタレぶりは観客をも欺いていたのか?と思いました。(欺いていたんやけど)
そして政治家、実業家、マスコミ3悪の酒池肉林。美女をはべらせて贅沢なんか安っぽいのかわからん。
 
とはいえ、「服を着た獣たち」 食べて飲んで出して。
 
老いも若きもギラギラした野心、いつまでも満たされない欲望、
 
     後先考えないパワー、なんてハングリー、なんて熱い  圧倒された。
お薦め度★★★1/2戻る

コップ・カー COP CAR
2015年 88分 アメリカ
監督 ジョン・ワッツ
脚本 ジョン・ワッツ/クリストファー・フォード
撮影 マシュー・J・ロイド/ラーキン・サイプル
編集 メーガン・ブルックス/アンドリュー・ハッセ
キャスト ジェームズ・フリードソン=ジャクソン(少年トラヴィス)/ヘイズ・ウェルフォード(ちょっと太目の少年ハリソン)/ケヴィン・ベーコン(保安官)/カムリン・マンハイム(通報した女性)/シェー・ウィガム(トランクの中の男)/キーラ・セジウィック(通信係)
メモ 2016.5.5(木) シネ・リーブス梅田
あらすじ
アメリカコロラド州でプチ家出中の10歳。お祖母ちゃんと暮らしているハリソンとママと義理の父と暮らしているトラヴィスの少年二人組だ。一面の野っぱらを歩いていると窪地に車が止まっていた。POLICEと大きく書いてある警察の車は人が乗っていない。カッケー。車に乗り込んでほたえていると鍵まで見つかる。
何故に人里離れたこんな所に無人のコップ・カーがあるのか? などという事は天から考えず、出発進行〜とふたりは車を転がし始める。
感想
ビートの利いた音から映画は始まる。かっこいい。
ばっちゃんと暮らしている子はちょっと臆病で慎重なのに対し、仮にも男親といる子はやんちゃで車にも詳しいというふたりのガキ少年の個性が良く出来ている。
尺は88分と短く登場人物5人(死体も入れると6人)というシンプルな作りの巻き込まれ型B級映画はなかなかのカルト。怖いんだかおかしいんだか。初めに子供たちは蛇の穴に棒っきれを突っ込むねんけど、出口なしになるのは自分たちの方で思いもよらないバチがあたる。
 
ドラマ「ザ・フォロイング」は、ハンサムで善人顔(牧師もできそう)な悪もんジョー・キャロル(ジェームズ・ピュアフォイ)を追う主人公のFBIライアン・ハーディ役がケヴィン・ベーコンで、これが結構辛気臭い話なん(第一シーズンで折れた)。ケヴィン・ベーコンはうじうじと思い悩み後悔しまくりな正義の味方より(ちょっとおまぬけな)悪役の方が生き生きと「楽しそう」(な気がする)。
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あやしい彼女 
2015年 125分 日本 松竹
監督 水田伸生
脚本 吉澤智子
撮影 中山光一
主題歌 「帰り道」anderlust
出演 多部未華子(大鳥節子)/倍賞美津子(瀬山カツ)/北村匠海(カツの孫・瀬山翼)/小林聡美(カツの娘・瀬山幸恵)/志賀廣太郎(カツの幼馴染・中田次郎)/三鴨絵里子(次郎の娘・中田麻衣子)/要潤(音楽プロデューサ小林拓人)/金井克子(カツのライバル・相原みどり)/温水洋一(オオトリ写真館)
メモ 2016.5.3(火) 大阪ステーションシティシネマ
あらすじ
離婚した娘と孫息子の3人で暮らしている73才の瀬山カツは、歯に衣着せぬ毒舌の持ち主。傍若無人に生きている。周囲に嫌われるのも平気の平左、味方は幼馴染の風呂屋の次郎ひとり。カツの「早くに夫を亡くし、したいこともせず女一人で子供を育てた。」の口癖に辟易した娘幸恵から「今からでも好きに生きれば」と突き放されたショックで家出する。友達もなく行くところもなく商店街のオオトリ写真館の「オードリー・ヘップパーン」の写真に引き寄せられ、写真を撮れば20才の娘盛りになっていた! そして孫と出会いバンドのボーカルとなる。
感想
母物韓国映画「怪しい彼女」の日本版リメイク。日本版の方がお国柄かあっさりしている。歌は心で歌うものともあまり言わない。そやけど多部未華子の魅力が爆発していた。 健闘している歌は、歌手じゃないので高音部をハイトーンボイスでグイグイと押してくることはなく、かわいらしい歌声やった。バンクのバンド3人組も好み。
 
韓国版では子供は息子やったけど日本版では娘になっていた。 韓国の息子は「探偵なふたり」のソン・ドンイルで母と妻の間に挟まれ疲れている心優しい男をとても好演していた。歌を聴いているシーンと母の若い頃の写真を見るシーンは忘れがたい。日本版も息子にしてたらとてもかなわない。 それに今時「オモニ」に反抗できない日本のお嫁さんもあんまりいてへんやろうし姑さんの方が遠慮してるし、日本の男が泣くのはだいぶましになったとしても少し抵抗あるし、だいたい孝行息子っていうよりマザコンに見えかねない。(日本の男って大変やね)
結果、夫、息子、孫と3人3代の少しあかんたれで心優しい男に囲まれたばっちゃんの気の強さが際立ったなかったな。(話は脱線するけど、そしてたまたまと思うけれどウチは気の弱い女の人にお目にかかったことがない。女はみんな気が強い。それは単に生まれてからずっと大阪にいるせいか? まあ男の人は気の強さがむき出しやない方がええと思うけど) それに戦災孤児にして次郎との関係は説明しやすいけど元々が恵まれておらず、お嬢様育ちから駆け落ちして勘当されその上夫に先立たれ生活が一転するという悲劇がない。それを補う「見上げてごらん夜の星を」(坂本九) 「真っ赤な太陽」(美空ひばり) 「悲しくてやりきれない」(ザ・フォーク・クルセイダーズ)の名曲の数々が頑張っている。