2011年7月のミステリ 戻る

黒百合
2008年 多島斗志之(たじま としゆき)著 東京創元社
あらすじ
1952年(昭和27年)の夏、14才の寺元進は、父の旧友の別荘に招かれ東京から六甲山にやって来た。そこんちの一人息子浅木一彦とヒョウタン池に小石を投げていると、池の精だという少女が現れる。その子は倉沢香と名乗った。
感想
二島縁起の作者。
昭和十年、十六〜二十年、1952年と戦前、戦中、戦後の時代が、浅木謙太郎、謎の人物、寺元進の3つの視点で描かれている。「文芸とミステリの融合作」との事で、その少年少女のひと夏という「文芸」の部分は読みづらかったんやけど、六甲山でハイキングをしているように、しんどくてもそこをひと頑張りして読んでいけば、最後にはあっと驚く光景があらわれた。有名な避暑地の軽井沢が舞台やないのは、理由があったん。
 
作者は、この小説の後、2009年12月に「探さないで欲しい」と書き残して、失踪されたそうです。失明の不安を苦にされての事だった様子とか。もしかしたら、六甲にいてはるのかもしれないと思ったりする。
お薦め度★★★★戻る