2009年7月のミステリ 戻る

センセイの鞄
谷崎潤一郎賞
2001年 川上弘美著 
あらすじ
ツキコさんが居酒屋で隣り合ったご老体は、高校時代の国語のセンセイだった。引退して悠々自適の生活を送っているセンセイと37歳のツキコさんは、ぽつりぽつりと話をし、時には言葉使いや立ち居振る舞いに注意をうけながら、市に行ったり花見をしたりとじわりじわり親しくなってゆく。
感想
「若いライバルに勝ち」、「人生の最晩年に、はるか年下の彼女をゲット」・・・男冥利につきると数多くの中年男性の羨望のまと、垂涎物のお話とか違うとか。
 
さぼてんは「子供のままでええやん」というお話だと思う。
主人公は体内時計がチクタクしはじめている年頃だ。子供を産むリミッターが近づいている。そやけど、適当な男と結婚して、子供を産んで、次世代を育ててという「おんなひととおりの事」をしなくても別にええんやないの(わたしひとりくらい)。日々四季を感じ小さなことを慈しみ、大好きなお酒を飲み、世界の隅っこで平和に暮らしていたいのだ、ツキコさんは。
 
美しく若いおのこに目がなく、今のお気に入りは東方神起という先輩には、ご老体との恋は「ありえん」話だろうなぁと思いながら読んでいた。その美形の先輩のミーハーぶりを楽しんでいるさぼてんにとっても、いささか肌があわない。まあ言えば情けない話ですが本を読みながら「カレイ臭はせーへんのやろか」と思ったりしてしまう身も蓋もないヤツなんです。
幻想の世界と現実をいったりきたりする、たゆたゆした、感想を書きたいと思ういいお話しやねんけどね。
お薦め度★★★1/2戻る

荒野のホームズ、西へ行く ON THE WRONG TRACK
2007年 スティーヴ・ホッケンスミス著 日暮雅通訳 ハヤカワポケットミステリ 329頁
あらすじ
兄貴のグスタフ・”オールド・レッド”・アムリングマイヤーと弟の「俺」オットー・”ビッグ・レッド”・アムリングマイヤーの赤毛兄弟が活躍する「荒野のホームズ」シリーズ第二作。
 
モンタナ、ワイオミング、アイダホと3つの州を巡って探偵仕事を探すがままならなかった赤毛の俺たち兄弟はひょんなことから、サザン・パシフィック鉄道の保安係に雇われることになった。これが山ほどの厄介ごとのはじまりだったのよ。。鉄道会社は《懲らしめ団》と名乗る強盗に襲われ続け、困りきって(たぶん正気をなくして)俺たちを雇ったんだ。保安係267と268の兄貴と俺は、シカゴとオークランド間を運行する特別列車、パシフィック・エクスプレスに乗って、オグデンからシスコに向かう。が、列車に乗った途端、兄貴のグスタフの体調が悪くなったんだ。
感想
列車内という密室ながら、前作より動きがあってスピーディでさぼてんは1作目より面白かった。西部開拓終焉の時代(1893年)のカウボーイの哀愁と、新しい世紀への期待がないまぜになりながら物語は軽快に進む。
兄貴の体調がすぐれないという工夫で、ドジを踏んだり、快刀乱麻と謎が解き明かされず「話しを長引か」せ、それがまた兄弟の関係を深くさせた設定が面白い。 (・・・・・しかし前作といい、トイレがよく舞台になる小説だな)
お薦め度★★★★戻る