幼少からのいじめられッ子で、普通に話せる女は母親と妹だけ。会社では女子社員に嫌われ、よその部門からはノーナシ呼ばわり。しかしその劣等感がパワーとなり
ヒーローに変身するのである。。というカワイソウなのか、かえってよかったやんカッコいいやん、なのかよくわからない話である。騎馬はとても
いいやつなのであるが、この世は「見た目」で価値判断されるので理解されない。結果、なかなか優しさに遭遇できない。
(上)の鞍瀬(くらせ)とのバトルは泣ける。(上)の
はちゃめちゃに対し(下)は多少重たく<家族>がテーマとなる。家族愛は最後の砦となる大切なものであるが、時として利己的にならざるを得ない。
「シン・マシン」は暗かったが、本作は情けない中にもユーモアと明るさがあっていいな。オススメ
お薦め度★★★★1/2
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崖の館
1977年 佐々木丸美著 創元推理文庫 296頁
あらすじ
人里離れた断崖に立つ館。冬には大雪に閉ざされる館。館から望む百人浜(ひゃくにんはま)は、その昔冬の嵐に難破した人々が浜に辿り着くも、こごえ悲鳴を上げながら命を落としたという伝説を持つ荒涼とした地だ。館には老女と美少女が住んでいた。美少女は老女の姪で養女の千波(ちなみ)。千波には夏休み、冬休みに館に遊びに来る従兄弟たちがいた。研、真一、棹子(さおこ)、由梨、哲文(てつふみ)、そして私涼子。6人の従兄弟たちは2年前に千波が崖に落ちて命を亡くしてからも、休みのたびに館に集まる。研と婚約し幸せだったはずの千波が自ら命をたつはずはない。といって事故なのか? それとも殺人?
感想
館には財力にあかせて集めた本が山ほどあり、名画も山ほどあり、千波は義務教育終了後、高校にもいかず館で詩と絵に囲まれた”何も生み出さない”静かな生活に浸っていた。ここに音楽はないの。ひたすら静かで内に内に向かう世界なの。
全編「これでもかっ」というくらい繰り返し繰り返し、詩・哲学・絵画という美の談義でその筆力には頭が下がる。296頁の中に作者ひとりっきりで作った美しくそして破滅的で閉じられた世界が見られる。映画は多くの人の手になるもんやけど、小説は違うな。たったひとりで頭の中から搾り出したもの。妥協がない(はず)。そこが魅力だ。
ひじょーに粘着質で少女趣味で、不思議な世界だ。外は荒涼としていてストイックで、内は自分の好きな美しさに満ちている。こういう世界に生きてみたいなという気もしてくるインパクトの強さなのだ。
眠くなるくらい長い長い芸術の話は、動機をないがしろにしていないと思う。 人は認められたいし、誉められたいしの生き物なんやな。
結局は俗世間で汚れて働くことなしに、毎日が日曜日、好きな事ができる生活が羨ましかってんやろーという俗っぽさを、美しく昇華させている。心の闇までも透明で純に見える。