2004年10月のミステリ 戻る

硝子のハンマー
2004年 貴志祐介著 角川書店 491頁
あらすじ
株式上場を目前とした会社「ベイリーフ」の社長が撲殺される。エレベータは暗証番号で守られ、廊下は監視カメラが設置されている「地上12階の密室」だ。ただし社長室へ通じるドアのある専務室にいた専務・久永が犯人ではなかったら・・・という前提つきだが。久永の弁護士・青砥純子(あおとじゅんこ)は「密室ではなかった」事を証明するため防犯コンサルタントの榎本径(えのもとけい)を雇う。披露されるテクニックの数々は防犯コンサルというにはあまりに生々しい。こやつ泥棒では? と思うもんのそこは蛇の道は蛇という事で。
感想
著者お初の本格物。「才能ある人はなんでも書けるんやなー」と感心していたところ・・・・・・・・・・・結局「青の炎」だったんかい。犯人はこれほど頭が良くなければ追い込みから逃げ切れなかったやろうし、これほど頭が良くなかったら「もてるものと、もてざるもの」の不満を抱かなかったんやろうな。人殺しをしてしまう青臭さなしに、この犯罪を成し遂げて金を手に入れ成り上がっていき最期に足をすくわれるというストーリーだったらもっと面白かったような気がするな。つまり追う側の榎本径より呪われた犯人の方に魅力を感じ入れ込みたいという事。今回泥棒でありながら善というキャラを登場させたが、やはりこの作者は優等生的。この時代貴重ではある。いつか「クリムゾンの迷宮」を越える作品が現れる事を期待している。
おすすめ度★★★1/2
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歩兵型戦闘車両○○(ダブルオー)
第三回日本SF新人賞佳作
2001年 坂本康宏著 徳間書店
あらすじ
雨月蛍太郎(あまつきけいたろう)27才。勤めていた印刷会社からリストラされた。その夜3年越しの恋人からは「ケイ君より好きな人・・・・できちゃったんだ」と告げられる。人生最悪の日だ。そんな時に呼び鈴が鳴りドアの前にはでかい男がたっていた。「仕事がある。臨時とはいえ公務員だ」と告げる。
妹尾環(せのおたまき)27才。伝説的なゲーマーでフリーター。しかし今は失業中、家賃も2ヶ月溜めている。ゲーセンを後にした妹尾の前に立ちはだかったでかい男が言う「あんたゲーム上手いねぇ。もっと難しい最高のゲームを紹介してやってもいいぜ、オマケに金も入る」
胡子竜二(えびすりゅうじ)27才。重機のオペレーターだ。重大災害(死亡事故の事ね)を起こしてなんとか病院から出たものの、業界では疫病神扱いされ就職口がない。妻と4歳になる息子直樹がいる。せっぱつまった所に巨大な男が立ちはだかる。「仕事を探しているんなら、いいのがあるぜ」
感想
おもしろかった。 大ナメクジ・ソドムとの戦いがよかったな。 合体ロボの事はまったくわかんないので、どこまでわかって言っているのかは疑問ですけど。さぼてんが知っているのはマジンガーZくらいかな。ちびさぼが小さい時に「獣レンジャー」という合体のおもちゃを買った事があったっけ。1968年生まれという作者からガンダム世代向けなのかな。
九八式装輪装甲車両乙(通称乙型)、九七式特務作業車両甲(通称甲型)、九九式巡航戦闘車両丙(通称丙型)と聞くだけでわくわくしますね。何故3体わけて作られ合体化される事になったかというと、「バブルがはじけて予算がとれなくて」 「単年度予算で作れる分ずつ」一体ずつ作り、「結局一度に作るより倍以上予算がかかった」というお役所仕事の非効率化に泣きそうになりますね。そういや昔「リース」などという概念はお役所予算にはないって聞いたな。単年度予算だからPCも買わなきゃいけないんだって。信じられん。民間人が「公僕、公僕」と無理を言うから保身に走るのか、、、、それでも台風や地震の時は家がひっくりかえっていても仕事に出てはって大変。こころざしがなければ、やってらんないだろうな。子供への虐待とか発覚しても犯人の親やらが責められる以上にお役人が責められている風なのは何故なんだろ。ストーカーの事件とかもそうだな。期待度が大きいんだろうな。
おすすめ度★★★★1/2
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