2006年7月のミステリ 戻る

荒ぶる血
2003年 ジェイムズ・カルロス・ブレイク著 文春文庫 369頁
あらすじ
禁酒法後の時代、テキサス州ガルヴェストンで商売をしているマセオ兄弟がいた。兄弟の”亡霊”は金を集め、マセオの縄張りを守り、マセオの意志を世に広めるのが仕事だ。 ”亡霊”のひとりがジミー。凄腕だ。ジミーの過去は誰も知らない。誰も聞かない。
感想
『男なら読め!!!』っていう西部劇みたいな小説らしくてアタシが読んでも大丈夫か? という危惧はぶっ飛んだ。
おもしろい。  ケヴィン・コスナーとアンソニー・クインの映画「リベンジ」みたいな所もあるけどあの映画よりは数万倍、いい。おんなも守られるだけじゃないってのが、うまく作ってあるよな。
あたりの暗さが増すような荒々しさと静謐さを併せ持った小説だ。
 
  「行かなきゃならない」とおれは言った。体のなかでヘビがのたうつような感覚があった。
 
ジミーの相棒のLQとブランドもいいな。「罪深き誘惑のマンボ」みたいでねえ。
 
  「おれたちはパートナーだろう」とブランドは言った。
  「仕事だろうがなかろうが」とLQが爪楊枝をくわえたまま言った。「空が晴れよが雨が降ろが」
 
なんてかっこいいんだ。
 
おすすめ度★★★★1/2
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ちーちゃんは悠久の向こう
2005年 日日日(あきら)著 新風舎文庫
あらすじ
ちーちゃんと主人公の僕モンちゃんは隣同士の幼馴染。今は同じ高校に通っている。小さな頃からホラー好きのちーちゃん(歌島千草)の望みは「幽霊が見えるようになる事」、そしてモンちゃん(久野悠斗)の望みは「普通の生活がおくれる事」。
感想そしてねたばれ
「ちーちゃん、もう望みはかなっているって。幽霊見えているヤン。モンちゃん幽霊ヤン
というのが読み始めからの感想。フツーの生活を送っているちーちゃんはいっぱい幽霊をみたがり、幽霊のモンちゃんはフツーの生活にあこがれている。隣の芝生は青い症候群なのだ。
しょっぱなは「シックス・センス」のような話なん。
モンちゃんは親の虐待でベランダで暮らしている。 ありえん! 親が殺しあった後は橋の下で暮らしている。 ありえん! それは柳の下ですか? 両親の死体はいまだ見つかっていないのかい? マンションの中で熟成しているとか? 
モンちゃんのお母さんがモンちゃんに会ったら「くたばれ!」 って言う。これ「成仏しろ!」って事よね。
と読み進めていくと何やら辻褄の合わない所もちらほら。誰がこの世の人で誰があの世の人がよくわからん。あの先輩も彼岸の人で、ちーちゃんは幽霊に憑依してしまったとか。 本の虫・林田の”友達”ってのも幽霊っぽいし。 林田も幽霊が見える人だったんだな。
辻褄が合わないように作ってあるのか、力不足でそうなってしまったのか、じっくり読んでいないのでなんとも言えない。まあ「自分をわかって欲しい」というのはアンタひとりの思いなのよ。というのが率直に書かれてあると思う。
おすすめ度★★★
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