2006年4月のミステリ 戻る

下妻物語・完 SHIMOTSUMA STORY FINAL
2005年作 獄本野ばら著 小学館 319頁
あらすじ
下妻物語の続編でもって最終作。
ロリータファッション「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」のモデル撮影をしたメイクをすれば絶世の美少女白百合イチゴとマネージャー役で上前をはねている竜ヶ崎桃子は、殺人事件に遭遇する。それは下妻へ帰るために乗っていた高速バスの中での出来事であった。
感想
しょっぱなの「バッタ物とパクリじゃ、全然、違うんんだよ。バッタものはモノホンを尊敬、ええと、つまり、リクエストしてだなー」  「リスペクト」 「パクリは努力しないで、他人の褌で相撲をとるようなものだから、あたいは嫌いなんだ」(イチゴ談) 「お洋服の世界は、パクりまくって成立しているパクリ王国だもの。反対にバッタものは敵。だってVivienne Westwoodのバッタものが出回ると、Vivienne Westwoodは売り上げが落ちて、困るでしょ」(桃子談)
という話が「謎解き」の言い訳なわけだな。りっぱなパクリだもんな(って有名過ぎて誰もそうは思わんか)。
イチゴのストレートな愛情がひねくれた桃子を揺り動かすラスト。「イチゴは借りは返す主義なんだよね。じゃ、セイジさんはとりあえず、無期限でイチゴに貸しておいてあげる。あげない。」 「感動って恋愛のことなんだよ。そしてその感動って、素直なものに触れた時にしか生まれてこないんだよ。」の脳内会話が泣かせる。
 
地元のモータースで働いてセイジさんと地元の下妻で所帯を持つであろうイチゴと、高校を中退して下妻を出て行く桃子を読んでいると「赤毛のアン」を思い出した。アンの親友のダイアナはクィーン学院(高校かな?)にはいかず幼馴染のフレッド・ライトと18歳で結婚する。一方アンは、奨学金でレドモンド大学にまで進み学校の校長になる。(まあ、その後医者になったギルバート・ブライス(にんじんとからかった男の子)と結婚してジョイス(赤ちゃんの時に亡くなる)、ジェイムス・マシュー、ウォルター(第一次大戦で戦死)、アンとダイアナ(ナンとダイの双子)、シャーリー、バーサ=マリラと子供を育てるんですけどね。末っ子のリラ(マリラ)が19歳になり、第一次世界大戦に英連邦の一国として参戦したカナダも勝利して物語は終わる「アンの娘リラ」)。それぞれ生き方は違っていても子供の頃からの関係は変わらなかったふたり。こんな純な思いが続く事って稀有だしないし、鋼(はがね)の女・桃子を泣かせる(作者の)気持ちがわかる・・・ような気がする。
おすすめ度★★★★
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