2005年11月のミステリ 戻る

海の底
2005年 有川浩(ありかわひろ)著 メディアワークス 446頁
あらすじ
春、寧日 天気晴朗なれど、波の下には不穏があった。
米軍横須賀基地の桜祭りの最中、市民やマニアでにぎわっていたそこに甲殻類、ありていに言えば凶暴なザリガニの1m級がわんさか海からはいあがってきた。ザリガニとあなどってはいけない。あろうことかハサミをふりあげ人間様を追いかけ喰っているのだ。クレイジーな光景。きゃつらにとって人間様は”足の遅いエサ”だった。おぞましい。今までたらふくカニを喰ってきたたたりか? 日本国だけに?
逃げ遅れた子供たち13人と共に、青二才の夏木大和三尉と冬原晴臣三尉は停泊中の潜水艦『きりしお』にたてこもる。艦の上はまっかっか。巨大ザリガニが這い回っている。海にもあふれかえりスクリューが噛んで動けない。
感想
雨が降ったらザリガニが溶けていくとか(海の生物、、、ありえねー)、海水をかけたらザリガニが溶けていくとか(だから、海から上がってきたんだってば)、疫病たとえばインフルエンザウィルスにやられるとか、天敵にやられる(ザリガニの天敵って人間だっけ? 喰われているやん)、神風(台風)が吹いて海に押し戻されるとか(春だよ、春)はなかったなあー。通常兵器でヤラレテしまいやんの。ちょいつまんない。だったら火炎放射器でもよかったんでないの。機動隊お得意の放水してたっけ。異星人が持ち込んだ生物でもなかったしぃ。だいたい怪獣とゆうもんのサイズがこんまい。わらわら数が多いだけ。それが不気味ではあるんやけど。ゾンビみたいに屍を乗り越えてやってくる。エチゼンクラゲが陸上に上がってきたらこわいよーきもいよー。
 
日本国の事情から警察の機動隊が身を挺して防戦し、官邸は議論をぐるぐるでらちが明かない、自衛隊は動けず手をこまねいているだけという物語のための時間稼ぎの中、潜水艦の6日間は人間関係が濃い空気も濃い。下は小学1年生から上は高校生までとんがっている思春期が7人近くもいる。子供の頃から個室を持っている世代が密室で共同生活だ。まず食べさせなければならない。補給部隊の大切さには頭が下がる。新聞に「震災の時、救急隊員は食事も満足に出来なかった」を読んだけど、間違っているよな。まず食べなきゃ。大変な時にはお腹こさえなきゃ。
「空の中」の時と同じくジュブナイル系SF。さぼてんの好みからすると甘い。でもりっぱにエンターティメントしている。
おすすめ度★★★★
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博士の愛した数式
2003年 小川洋子著 新潮社 252頁
あらすじ
18歳で息子ルートを出産した家政婦。10歳になった野球少年を育てる家政婦の今度の職場は、数学博士の世話であった。博士は17年前の交通事故で脳に損傷を受け、1975年で時は止まり80分しか記憶がもたない。今は1992年だ。江夏豊が引退したのは1985年。阪神タイガースが日本一になった年だった。
感想
江夏豊は不世出の左腕であった。
博士が江夏豊のファンになったのは背番号28という完全数をもっているからか、スポーツ欄に次々と博士を魅了する数字をあげていくからかは不明。
 (※完全数というのは28=1+2+4+7+14 自分の約数を足すと自分自身になる数。完全数は1+2+3+4+5+6+7と連続数の和でもある)
TVで高校の時ラクビーの練習中の事故で脳に障害が残り記憶が残らない青年を見た。彼は電車に乗っても行き先を忘れてしまう。忘れないように切符を買ったらすぐに行き先を裏に書き、途中何度も何度もそれを読み直す。血が滲むような努力の毎日だ。博士は47歳で記憶するすべを失った。頭の中の世界で生きていた博士にとってはとても不幸だったが彼には記憶の蓄積が47年あるのである。しかも数学者は若い時がピークだ。その過去の資産で彼は日々生き延びる事ができる。他人に幸せを与える事もできる。若い頃に蓄積した資産は年老いた自分を支える。と思うな。パッパラパーの頭を持つさぼてんも今まで見た映画と読んだミステリで、人生の後半戦を楽しく生きたいものだ。子供は宝という話でもある。
 
数学はさっぱりだったが数字は好きだ。今は数字を扱う仕事をしていてそれなりにシアワセだ。コンビニで748円だったら1050円出して302円おつりをもらう。コイン5枚だ。1000札出してもおつりは252円でコイン5枚だが、百円玉3枚と一円玉2枚の美しさにはかなわない。しかもコイン1枚(50円玉)を出しているのでプラマイ4。1250円出したらおつりは502円。1253円出したら505円。500円玉1個と5円玉1個。美しい。子供の頃は1とか3とか5の強そうな数字が好きだったが、今は7が好きだ。斜めが入っていて弱っちそうなのに割り切れなくて反抗的でしょ。
おすすめ度★★★★
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