2005年4月のミステリ 戻る

オクトパスキラー 赤と黒の殺意
1998年 霞流一著 アスペクトノベルス
 
あらすじ
舞台は「藻呂黒町(もろくろまち)」と寄席・「牧楽亭(ぼくらくてい)」。陰では・・・ではなく公然と「もうろく町」の「没落亭(ぼつらくてい)」と呼ばれている。斜陽という言葉がぴったりで(陽があたっていた時代があるのか?という疑問はさておき。)、貧乏神の七福神と言われる連中がレギュラーだ。一.全身楽器のイロハニ権兵衛(いろはにごんべえ) 二.奇術師の雲隠竜神丸(くもがくれりゅうじんまる) 三.落語家の笑鷲家梅独(わらわしやばいどく) 四.形態模写の萱野パン平(かやのぱんぺい) 五.夫婦漫才師の海之家(うみのや)アンモ・ナイト 六.スタンダップコメディアンの赤羽(あかばね)ブルース 七.モノマネの猿真寝太郎(さるまねたろう) 
イロハニ権兵衛は関節をコキコキ、筋肉をビキビキ、うがいをゴロゴロして『聖者が町にやってくる』を演奏するという一度見ればわびしさでお腹いっぱいという芸。 笑鷲家梅独(わらわしやばいどく)は過激なバレ噺(しもねた)というカルト道をまっしぐら。 形態模写の萱野パン平は「誰も知らない」「似ているのか似ていないのかさっぱりわからん」自分の同級生、近所の人の形態模写をしている。彼は物体そのものを否定した、例えば液体とか気体のモノマネにもチャレンジしている変人である。 海之家(うみのや)アンモ・ナイトはノミの夫婦で、それしかネタがない。 スタンダップコメディアンの赤羽(あかばね)ブルースは本人の存在がプルース。というため息がもれるラインナップ。
そらおそろしいくらい面白くない、お寒いキリ芸人、ギリギリ芸人の中で、イロハニ権兵衛が死体で見つかる。
感想
出演者の芸人達同様、面白いのか面白くないのかよくわからん。とまどってしまう。面白くない理由は探偵役の駄柄善吾(だがらぜんご)が誰をイメージしたらいいのかさっぱりわからんから。よわい65歳の俳優でタレント議員。刑事役が代表作とか。このわがままいっぱいの濃いキャラがイメージできなくて読み進むのに苦しむ。
面白い所は「てんのじ村」(難波利三)のような芸人魂がどこやらに感じられる所と、落語とか映画とかのうんちく話がこなれている所だな。(古谷三敏が嫌いだったのは、うんちく話がぜーんぜん面白くない事。よー知ってるやろーという自慢話にしか聞こえない。) キワモノ系のギャグにしてシュールな冗談、呆れるシャレ。が、だんだんこの味が面白くなってくるのよ。全編江戸前風情で上方さぼてんにはいささかへだたりはあるんやけど。
の殺意」か。はオクトパス・たこなんだけど、がねえ。よくできてたねぇ。
おすすめ度★★★★
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各務原氏の逆説
2004年 氷川透著 TOKUMA NOVELS
 
あらすじ
私立高校の用務員・各務原(かがみはら)氏はかなり風変わりだった。比較的若いし髪の毛は赤みがかっているし、生徒に慕われているような。用務員室はカウンセリングルーム化している。しかし氏は言う。「用務員のイメージにぴったり合致する用務員さんをどこかから見つけてくるのも、至難のわざと思うね。」 そう、我々はとらわれ人なのである。先入観とかイメージとか思い込みの。
そんな私立高校で女生徒の死体が発見される。自殺か他殺か。場所は軽音楽部の部室だった。学校は気に入らない軽音楽部をつぶしにかかるかもしれない。それよりもなによりも俺たちの仲間の彼女は、何故死ぬような事になったんだ。
はっきり言って、ねたばれ感想
頁202、「こいつは誰かの生まれ変わりじゃないか」・・・・・ここんとこ、この小説の最大の謎ですな。
こおりりょう(桑折亮)という文字をじっと見る、じっと見る。アナグラムじゃないみたい。Hがないし。・・・・まさか「こおり」>「氷」?? じゃ「亮」は「とおる」?  川はどこ? くわ(桑)→かわ? (氷川きよし氷川透をしめしてんの?)
・・・・・・・なんかあいかわらずの、自己満足の、おちだよな。 恥ずかしげも無く書けるところがこの作者の常人とは違う所と言える。
作者のチェスタトンへのオマージュとか。まあ屁理屈たれではあります。だんだんわけわからんこの味が好きになって来たような気が、せんでもない。そして、最後の恋愛論がいい。「彼女彼氏いない歴○年」、、、なんてくそくらえなのだ。
おすすめ度★★★1/2
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空の中
2004年 有川浩(ありかわひろ)著 メディアワークス
 
あらすじ
200X年1月7日、日本の将来を背負った国産輸送機開発プロジェクトの試験機「スワローテイル」が超音速飛行のテスト中爆発炎上した。続く2月12日、航空自衛隊のF15J(イーグル)が高度2万メートルへの急上昇中爆発。西側世界最強の双発戦闘機が燃えた。どちらも四国沖上空の出来事だ。事故の原因はさっぱり掴めない。
 
なにげにねたばれ感想
最後の一行に脱力。腰がくだけた。まいりましたわ。総括がこれなわけ? 人類滅亡の危機、SFやと思いこんでたのに、青い青い青春もんやったのだ。うっそーやね。あれだけの被害があったのに、とどのつまりそれやったんかいっ(亡くなった方達はうかばれまい)。
 
とはいえ、なかなか面白かったな。お国言葉が出てくるのがまず好み。主人公のひとり瞬の行動の動機がいくら言葉を尽くして説明されてもさっぱり謎ではあるが。潔癖で混乱しているところが思春期と言われればそれまでやけど。苦しいぞ。父親の事は忘却の彼方のはずやのに、事故の真実が明らかになると態度がコロっと変る。お前にとって大事なもんはいったいなんやねん? それは側の青い鳥やったんか?(まあそういうお話なんやねえ、結局)。  平和な生き物が突如狂暴になるってのもよくわからん。グレムリンみたい。だいたい敵を攻めるっていう概念があったのか?  そやけど、怪獣の造形とか、ファーストコンタクトとか、そのコンタクトの方法とかが素晴らしかったな。若いのは若いの同士で今風の方法でね。作者はなかなかのアイデアマン(ピープル)とみた。
話は大きいのに広がらず日本だけでちまっと収まっていてね。結構そこがウルトラマンみたいで好きやな。作者は日本国の将来を憂いてはるな。登場するティーンエージャーは3人ともひとりっ子やし(たくさん恋愛して豊かな国を作るのじゃー)、悲願の国産飛行機を作る技術の大切さに頁をさいてはるし。だいたい日本の霊場・四国上空にいてはった事から、日本国の守護神じゃなかろか。島国日本のシールドになりそうやし、国の宝なわけだ。
おすすめ度★★★★1/2
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