2005年5月のミステリ 戻る

春期限定いちごタルト事件
2004年 米澤穂信著 創元推理文庫
 
あらすじ
小鳩常悟朗(こばとじょうごろう)くんと小佐内ゆきさんは中学の同級生。中三の初夏から一緒にいる。共に難関校の船戸高校に無事入学した一年生だ。ふたりの関係は友達以上恋人未満・・・・・ではまったくなく、共依存関係でもなく、互恵関係にある。互恵(ごけい)ねえ。互恵関税とか(二国間では他国よりも低い関税で貿易を行う)とか互恵条約は習った事があるけど、生身の人間に使われるのを聞くのは初めてだ。小佐内ゆきさんの髪型は尼そぎ(あまそぎ)・・・辞書引きましたよワタシ。肩くらいで切りそろえた髪型だそうだ。 ふたりの信条は「小市民たれ」。目立たぬように世に埋没するように息をひそめて生きる事を目指している。つまり世を忍ぶ仮の姿をまとおうとしている訳。
感想
小沼丹(おぬまたん)の「黒いハンカチ」のようなふるくっさい古めいたレトロな言葉が綴られた「日常の謎」の推理物なのだが、やはりそこは偽物。かなりうさんくさい。目立ちたくないって言って入学以来ずっとふたりで学校から帰っているねんよ。思いっきり目だってるでーあんたらー。 言ってる事としてる事が違うヤン。かわいくもなけりゃ、すがすがしくも無いキャラ。もやもやしてイライラするが段々結構面白い味になってんのよ。 「おいしいココアの作り方」がよかったな。鍋を使わずスプーン一本と3つのカップだけを使って、練り練りしてつくるヴァン・ホーテンホットココアを満杯で3杯作った謎。アタクシの常識を超えてましたね。
 
 
えーかげん大人になると悩みは尽きない。結婚したいのかしたくないのかテキトーな相手はいるのかいないのか、結婚したらしたで子供を持つのか持たないのか、子供をもったら、しつけ、進学。他にも嫁姑、婿舅、親戚の揉め事、家の車のローン、ご近所の付き合い、相手の浮気。結婚してもしなくても親は衰えてくるし、自分の体も成人病に冒されてんじゃないかと心配だし。酒は飲みすぎだし煙草は吸いすぎだし、老後は不安だし。仕事はうまくいかないし金はないし体重は重いし。 中学高校時代は自分の心配さえしてりゃよかった。が、アタシはあの頃に戻りたいなどとはまったく思わないのだな。思春期の頃に自分の劣等感とかのそれぞれの何かから身をかわすというのは、、、、なかなか難しいのだ。そしていくつになってもそれに囚われている人もいる。「この世に自分のいる場所はあるんだろうか」そして自分探しの旅なんかしたくなる。容姿の劣等感、人間づきあいへの悩み、結婚できるだろうかの不安、その他もろもろ、、、、それから脱出できただけでも幸いだった。解決した訳ではまったくないが、悩まなくなった。やるだけやったら、なるようにしかならへんねんて。
おすすめ度★★★★
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