2004年11月のミステリ 戻る

グラスホッパー
2004年 伊坂幸太郎著 角川書店 322頁
あらすじ
グラスホッパーとは「いなご」の事である。この本の「いなご」はただの緑色のちっぽけな虫ではない。「サンセット・ヒート」の黒くなった飢えた凶暴な虫の大群である。同属過多のために殺戮をしだす・・・らしい。大都会の人間も密集して暮らしている内に狂ってきて「黒いいなご」が発生してますなって話。
「鈴木」は妻の復讐のために異世界に身を投じるが、それはあっさりと見破られていて「押し屋」と縁を持つ事になる。道路や線路にターゲットの背中をグットタイミングで押す「押し屋」は、権力者のじゃま者を自殺させる名手「鯨」の心に引っかかっているヤツであった。過去に仕事の先を越されたのである。その「鯨」は心配性の依頼人により血も涙もどこにあるのかわからない若者「蝉」に命を狙われていた。
感想
一匹狼の3人のプロとひとりのトーシローのまか不思議な縁のお話。最初はありゃりゃ戸梶圭太ですかとおもいやした。思うに戸梶圭太よりも計算が見えるというか、、、、。伊坂幸太郎はエルモア・レナードで戸梶圭太はカール・ハイアセンって違いかな。あいかわらず様々な話が収束する「ハイウェイパニック」みたいな構造。3人のプロの内誰にひかれたというと「蝉」かな。どこがいいかというと何と映画に影響を受けるところなんだな。これが。
おすすめ度★★★★1/2
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犯人に告ぐ
2004年 雫井 脩介著 双葉社
あらすじ
連続幼児殺人犯を追う警察。そこでスケープゴート予備軍とされたのは巻島だった。5年前マスコミと争い責任をとらされ閑職の身の上であった巻島は、それでもその困難な道を歩くのである。ひとり娘が心臓の持病を持っている巻島は他の人よりも数倍濃い人生を歩んでいた。
感想
読み終わった直後、奈良の事件が起こった・・・・。言葉がない。
 
我が子と他の子を測りにかけりゃ、そりゃ我が子が大事よ。そやねんけど他の子も他人の命も大事に思っている巻島。その大切な命を欲望のままに弄んだ犯人に怒り、そのさがと業の深さにに天誅あれ そして発した言葉
 
 「犯人に告ぐ 今夜はふるえて眠れ
 
事件をワイドショー化しているマスコミの功罪、そしてそれを密かに楽しむ人々、一枚岩ではない警察組織も描かれている。何を信じ頼りにすればいいんだ。様々な情報が氾濫し欲望が渦巻く日本国で、自分を見失わずまっとうに生きよう、そして自分に与えられた使命を果たそうという”気”が得られる作品だ。
 
平凡でごくフツーのさぼてんに与えられたミッションとはなんだろう。そんな事を考えさせられる作品だったな。 ひとりの人間ををまっすぐに育てる事と両親をみとること(親より長生きする、それだけで親孝行だ)、そして社会の縁の下の仕事をこなす事と思う(それはそれで、、、、たいへんなんだ)。地の塩って事かな(ああ地味だあ)
おすすめ度★★★★★
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