2004年4月のミステリ 戻る

ジェシカが駆け抜けた七年間について
 
歌野晶午著 2004年 原書房 300頁
あらすじ
日本生まれのアユミとエチオピア生まれのジェシカ。ふたりの共通点は走る事だった。出きる事なら国旗を背負ってオリンピックで走るのが2人の大きな願い。ところがひとりは大きく道を誤り自分の限界を知り挫折し破滅する。それから7年がたった。
感想
読み終わった直後の感想はと言えば・・・・・・先生、すべったな   と(笑)。
 
ああココは日本だと思っていたのに米国だったんだとか、昼日中だと思っていたのに夜だったんだワとか、アユミとジェシカは同一人格だったんだッそうかみかけは日本人中身はエチオピア人の多重人格だったんだとか、ドッペルゲンガーのSFもどきだとかのはなれわざ反則すれすれ、こちとらをのたうちまわさせるというあぶなさはない、残念ながら。結構正統派。
 
さぼてんの世代にとってエチオピアはイコールアベベ。欧州の覇権から独立を守ったエチオピアはアジアのタイ王国とともに親近感を抱く。裸足の鉄人アベベは東京オリンピック最終日に走った。陸上自衛隊の円谷幸吉をトラックで抜き去ったイギリスのヒートリーや、柔道無差別級のオランダのヘーシンク、ソ連のバレーボールチームなどにくたらしい白人と違い有色人種で寡黙でストイックにただひた走る軍人アベベはとても尊敬されていたんだよ。ホテルで(皇帝からもらっただったかな?)指輪を無くして日本中が心配して幼いさぼてんも心配したけれど不思議な事にでてきたんだよ。
おすすめ度★★★
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4TEEN
第129回直木三十五賞
 
石田衣良(いしだいら)「池袋ウエストゲートパーク」著 2003年 新潮社 251頁
あらすじ
秀才のジュン、大食漢で巨漢のダイ、お金持ちで悲しい問題をだかえているナオト、そしてごくフツーの中学生僕テツローは14歳だ。頭の中はHのことでいっぱいだと思うだろうけど、それだけじゃない。そりゃそれもおおいにあるけど。
大東京の新興埋立地月島を駆け抜ける幼い2度とない青春物語。新東京案内にもなっている。
感想
14才の男の子達が泣くのである。仲間の事を思っては泣き、仲間が泣いている姿を見ては泣く。何度も何度も泣く。
 
白い紙のうえには、へたくそな字でなんだかあたりまえの言葉が並んでいた。ぼくは間違いがないか確かめるために、もう一度読み直して泣いてしまった。ジュンに渡す。ジュンも読んで泣いた。ナオトはぼくとジュンが泣いているのを見るだけで泣いた。
 
男が泣いてもいいのである。泣けばいいのである。ハズカシク思いながらも泣く姿が、よい。
 
「今この時を糧にこれからの辛い人生乗り越えていける」ってあまりに老成してやしない? 14才の中ぼうのガキんちょがそんな事考えないって。それは40男の思いだって。とどのつまりティーンエイジャーよりも過ぎてしまった大人中年に受ける話だな。体からはちきれそうな自我と居場所の見つからないのがイタクてしかも可笑しい「ほんまあほやなコイツ」の「飛ぶ少年」が一番印象深い。
 
作者を投影しているのはごく普通の少年と自認しているテツローだろう。
 
だって誰も本など読んでいないのだ。読書はきっと時代の趣味からはずれてしまったのだろう。ゲームなんかより楽しいから、ぼくはひとりでも続けるつもりだけど。
 
そうだな。さぼてんもひとりでもゆっくりでもいつまでも続ける。本を読むことは。
おすすめ度★★★★
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穴−HOLES

ルイス・サッカー著 1998年 講談社 305頁 幸田敦子訳
感想
びっくりしたあ~~~~ 「穴−HOLES」そっくり。
 
これは残念だったなあぁぁぁぁ。原作本を先に読んでいたらよかったなあぁぁぁぁ。もうひとつおまけに原作もよかったなあああああ。どんなに泣こうがわめこうがさぼてんが児童書に目配りするはずもなく、映画から入るしかないのである。あの優しいセンセがあのパトリシア・アークエットという意外性がまたよいのよ。スタンリーとゼロもいう事ないなあ。映画はすばらしくキャスティングがよい。どこのどなた様が選ばれたのか、、、、握手したい。
 
 
 
 
おすすめ度★★★★1/2
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マルドゥック・スクランブル The First Compression −圧縮−

沖方丁(うぶかたとう)著 2003年 早川文庫 312頁
あらすじ

法務局ブロイラーハウス対オクトーバー社の覇権争いに巻き込まれた未成年娼婦ティーン・ハロットバロット雛料理。選ばれたのは彼女だったのだ。この世に利用され尽くしたその後に再生した美少女バロット、今大きな力の渦の中で改造物・自分の居場所を少しづつ広げていく。同じく改造されたハンコック煮え切らないの助けを受けながら。
感想
ふうむ。「レオン/完成版」を受けて書いた小説だったのか。なるほど。美少女ナタリー・ポートマンを主軸として書きたくなったのだな。なるほど。序盤を読んでさぼてんが「この少女は犯されたがっている」と感じたのはあながち「超あさって」の方向を向いていた訳ではなかったんだな。体の汚れは洗い流せばきれいになる。体の傷はいつかは治る。でも心の傷はなかなか癒えない。という美少女のけなげな物語なのだ。中盤、猟奇的な趣味を持ったおぞましい人達が多数出現して大人の読み物になった(いやいや)かな。
 
金曜日にちょっとした打ち上げの会で焼肉を食べにいったんやけど。今からが山やしまだ後2ヶ月あるからここで気を抜きたくはなかったんやけど、まあ一応システムはカットオーバーしたわけで深刻な障害は起こっていないし若草山は越えたから日本アルプスを越えるためにまずがんばろという訳で。♂1♀3でワイワイ話をしていた所、がんばり屋さんの30代前半と20代後半の♀ふたりが「仕事で泣いた」という話をして。A型の彼女達は何回も何回も泣いたらしい。 「泣いた事あらへんわあ。泣かした事はあるかもしれへんけどー(笑)」と受けるB型のさぼてん。 仕事で泣いた事はないなあ。恵まれていたと言えるかな。だいたいそこまで真剣に取り組んでいないのだな(第三者的)。きっと。でもこういう彼女達のがんばってつっぱっているけなげな所がぐっときてきっとかわいいんだろうな、と思ってじっと依頼部門のリーダー♂1の顔をうかがう。(ああ、ほんとにかわゆくないやつー>さぼてん)
おすすめ度★★★★1/2
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