2002年3月のミステリ

クール・キャンディー

2000年作 若竹七海作 祥伝社文庫
あらすじ
アタシ、渚。もうすぐ14才。今日は7月20日。明日から夏休みの日。そんでもってアタシの誕生日の1日前でもあってあわせてイブイブの日なんだ。幼なじみの天敵・忍のイジワルとかあ、鼻の頭のニキビとか悩みはつきない毎日なんだけれど、今日だけは特別。何しろイブイブなんだから。
なのにママが良輔兄貴のヨメさんの柚子さんが死んでしまったって告げに来たんだ。 なんで? よりによってアタシの誕生日の前の日に死ななきゃなんないの? 他に363日もあるんだよ? おまけに柚子さんを死においやったストーカー野郎まで死んじゃって、警察が兄貴を疑っている。同級生のやなやろーからは「お前の兄貴殺人犯ちゃうか?」なんて言われるんだよ。このままじゃアタシの夏休みは真っ暗け。中二の夏休みは一生に一度しかないっちゅうのに。大人はあてになんない。アタシが真犯人を見つけなきゃ。でなきゃアタシに夏休みは、やってこない。
祥伝社15周年を記念した葉崎シリーズ特別編。
感想
14才の渚はクールなんやけど、家族思いでかわいいくて 「殺伐とした内容ながらキュンとする展開やんなあ。」  「昔の少年少女冒険小説読んでいるみたいでなつかしわあ。」  「『ぼくのミステリな日常』と同じ、作者お得意の幼なじみモノやん。この人こういうのうまいなあ」とひとりほのぼのしていたら・・・・・・・・

やってくれましたね。さすが。
おすすめ度★★★★
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殺人鬼の放課後 THE HOMICIDE WALKS AFTER SCHOOL ミステリ・アンソロジーU

2002年作 角川スニーカー文庫 197頁
4作とものお話。あの人がだったと思っていたらこの人がだったとか、読み終えるといったい誰がだったのかと考えてしまう様々な趣向が凝らされている。
追いかけ追いかけられの「鬼ごっこ」の変形アンソロジーとも感じられる。
あらすじ&感想
 水晶の夜、翡翠の朝 −恩田陸
   「麦の海に沈む果実」と同じ湿原の中に建つ謎の学校が舞台。
   閉ざされた学園で「笑いカワセミ」のおかしなゲームがはやり、そこここに罠がしかけられている。
   「見立て」事件です。そこのとこは難しすぎてインパクトが薄い。
   でも雰囲気で読ませます。これも力わざのひとつだと思う。
 攫らわれて −小林泰三
   山小屋で始まる恵美の回想。恵美は友達の幸子、薫と共に誘拐され閉じこめられたと語り出す。
   ありがちですが一番良くできたトリックだと思う。いったいどのくらいの時がたったのか。
   3人は小学生だったのか違うのか、鬼は誰だったのかという幻の中に読者は閉じこめられてしまう。
 還ってきた少女 −新津きよみ
   「七穂とそっくりな少女を見た」と親友の智子が言う。智子は”見えちゃう”能力の持ち主で「生き霊ちゃうかな」と
   告げるのだった。
   話の構成わかりずらいために、オチが半減している。この”鬼”は源氏物語の六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)
   の哀しみを持っているはずなのに。残念。
 SEVEN ROOMS −乙一
   映画「CUBE」からヒントを得たような作品。
   本作を読んだら強烈過ぎて前3作が霞んでしまった。
   短編映画で見てみたい。が、影像ではなく文章の方がより恐いような気がする。
おすすめ度★★★1/2
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三人目の幽霊

2000年作 大倉崇裕 創元クライム・クラブ 291頁
あらすじ
「季刊落語」勤務の間宮緑(まみやみどり)は編集長の牧大路(まきおおみち)と寄席に通う毎日。陰謀渦巻く落語界で起きたミステリを快刀乱麻を断つごとく解決するのは意外な名探偵・牧大路編集長であった。
感想
「三人目の幽霊」は落語の「三年目の幽霊」からとってあるそうです。落語の「三年目の幽霊」は、「後添いをもらったら婚礼の晩に幽霊になって出てやるー」というのが遺言だった前妻が「恨めしい」とばけて出てきたのは三年後。何故か?というホワイダニットものですね。

この小説は志す道のため辛苦をなめるって内容で、極めるって真剣なものなんです。2作目の「不機嫌なソムリエ」の「人間消滅の謎」が一番よく出来ていたと思う。4作目の「患う時計」の「ペンキ塗りたてのベンチが壊されたのは何故?」の謎解きもいい。ミス・パープル物みたい。

なのに何故★みっつかといいますと、さぼてんのちっぽけな「落語BOX」には”名人話”とか”人情話”とか”怪談話”とかがないのでございます。はちゃめちゃの滑稽話が好きなのでございます。ですから、このお話連とははだはだ(肌があわない)なのですね、少し。Saboten does not like this book so.ですね。あってますかね。時おり夜更けに「上方落語メモ」に寄せてもろてます。けたけたひとりで笑っております。不気味でございますね。「枝雀寄席もっと聞いていたらよかったな」と思う、今日この頃でございます。
おすすめ度★★★
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