
2026.9藤咲整形外科医院だより
夏の酷暑を憂う昨今ながら、季節をたがえることなく、落ち葉の舞う季節となりました。落ち葉は秋を知らせる木々からの便り、枝を離れるばかりに熟した結果が、成熟の最終形態となって樹上から大地にもたらされます。枯葉と落ち葉の違いは大きくはありませんが、緑の落ち葉もあれば、枝を離れることを是としない枯葉もあります。人の世のようでもあります。
枝を離れることを頑として受け入れなかったことで、最も名をはせたのが、短編集で世界のこころを虜にした大作家、オー・ヘンリーなすところの、「最後の一葉」でしょう。病を得て意気消沈した主人公が、触れなば落ちん態の枯葉が、嵐を耐えた姿に生命の賛歌を見て回復の契機を得ます。
枯葉は地を覆い、隠す存在でもあります。今から数十年前、まだ手術の後を絹の縫合糸で縫っていたころのことです。現在のナイロン糸と異なり、抜糸の折はかなりの痛みを伴ったものです。とはいえ抜糸は回復の確認のようなものです。今日は抜糸しましょうと言われ、覚悟の上で臨んだものの、痛いものは痛い、痛いですと言っても医師は手を止めることかなわず、緊張の一瞬です。おもむろに医師は、シャンソンの名歌、「枯葉」のさびを歌いだしたそうです。「枯葉よ〜枯葉よ〜」痛い痛いの合間にシャンソンが混じり、泣き笑いの抜糸だったとは、今は亡き母から聞いた逸話です。
確認すると、「枯葉」の訳詩を冠しながら、日本語訳の歌詞に枯葉は一か所のみ、他は「落ち葉」があるばかりです。我慢せいと言わず、かといって手は休めない、優しい心象の医師だったのだろうと想像します。ウォーキングもかくありたいと思います。
皆様お体大切に
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2026.9藤咲整形外科医院院長 藤咲 裕