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◆◆◆ 古 室 山 古 墳 ◆◆◆
こ む ろ や ま こ ふ ん
  藤井寺市古室2丁目4番
    近鉄南大阪線・土師ノ里駅より南西へ約
900m(古墳北側入口まで) 徒歩約15
        駐車場:古墳北東端から南東約
180mの府営藤井寺道明寺住宅地内にコインP(5台)
穴場の桜景観
 ここ古室山古墳の桜は、藤井寺市内の花見場所としてはちょっと
した穴場ではないか、と私は思っています。と言うのも、ここの桜
景観を知っている地元の人に教えてもらわなければ、まず偶然に出
会うことは無いと思われるからです。それは、ここの桜の木が存在
する位置に理由があります。古室山古墳にある桜の木は、古墳の墳
丘の北東部分に集中しています。古墳の北東側を通る市道からはよ
く見えますが、この道路は土地勘のある人でなければまず通りませ
ん。つまり、ここの桜が見える道路は、ほとんど地元の人しか通ら
ない道で、他地域から来た多くの人が通るような幹線道路からは、
古室山古墳の桜は見えないのです。
 古墳の南側には西名阪自動車道という高速道路が通
っていますが、
防音壁があって古墳は見えません。その下には側道もありますが、
@ 方部の桜と周濠跡(北より)
@ 方部の桜と周濠跡(北より)  2020(令和2)年4月(AB、G〜Jも)
   前方部北側の周濠跡部分は広い草地となっている。周濠であった面影
  はない。桜の木は墳丘前方部の北側と東側の裾部に集中している。
古墳よりも低い土地にあり、しかも桜のある場所が墳丘後円部の陰になっていて全く見えません。また、その他の国道などからの視角範囲
では、ことごとく建物の陰となってしまい、通りかかった車の人が偶然にここの桜景観を目にするということはまず無理でしょう。せっか
くの桜景観なのに残念なことです。
 というわけで、古室山古墳は知る人ぞ知る花見の穴場である、と勝手に私は思っています。しかも、ここの桜の下や周囲には手入れされ
た草地が広がっており、家族やグループでシートを広げて花見をするのには、恰好の場所なのです。惜しむらくは、現在のところ自治体に
よって設置されたトイレや休憩施設が無いということです。2019(令和元)年7月、古室山古墳を含む古市古墳群が堺市にある百舌鳥古墳群
と共にユネスコ世界文化遺産に登録されました。藤井寺市は古墳見学来訪者を迎えるために、陵墓以外の各古墳や周辺の整備を計画してい
ます。必要とされるのが、駐車場やトイレ、休憩施設などです。市域の狭い市なので用地確保が大変ですが、順次整備が進められていくこ
とと思います。現在のところ、前方部側の道路沿いで仲津姫皇后陵
(仲津山古墳)拝所の近くに多目的トイレと自販機が設置されています。
 墳丘の北東部にかたまっている桜ですが、私の調査では立派に成長した41本のソメイヨシノでした。桜の木の樹高や根元の太さ、いずれ
も藤井寺市内の桜名所の中では一番ではないかと思います。土や水、日当たりなどの条件が良かったのか、みごとな育ちぶりです。
 2020年春、掲載写真を更新しようと思い、数年ぶりに撮影に訪れました。相変わらず大木の桜は見事な姿を見せていましたが、残念なが
ら数本が姿を消していました。伐採されたことを示す大きな切り株が何箇所か見られました。ここ数年南大阪地域で急速に被害が広がって
いるクビアカツヤカミキリの幼虫の食害で枯死したものと思われます。これ以上枯死する桜の出ないことを祈るばかりです。
A 古室山古墳の桜(墳丘上より北東を見る) B 古室山古墳の桜(墳丘上より東を見る)
A 古室山古墳の桜(墳丘上より北東を見る) B 古室山古墳の桜(墳丘上より東を見る)
      古室山古墳の桜は、墳丘前方部の北側・東側に集中している。自由に出入りすることができ、くつろげる場所も多いので、
     古墳の周囲のあちこちから見物の人たちが入って来る。近くの保育所の子どもたちにも良い散歩場所となっている。
古室山古墳と断層地形
 古室山古墳のすぐ西側に接して、崖のような段差地形が見られます。この段差は「誉
(こんだ)断層」という断層による地形です。もともと古室山古墳は国府(こう)台地と呼ばれる
低い台地上に造られていました。国府台地には、2基の天皇・皇后陵古墳をはじめ大小
たくさんの古墳が造られていました。古室山古墳もその中の一つです。西側の崖の下側
から古室山古墳を見ると、かなり高い位置にあるように感じられます。
 誉田断層は、古室山古墳の南にある誉田御廟山
(こんだごびょうやま)古墳(応神天皇陵)を縦断
して北の方へつながっています。誉田御廟山古墳の墳丘は、前方部の北西部分がこの誉
田断層によって大きく崩落しています。つまり、古墳が造られてから後に断層のずれが
できたことになります。古室山古墳は誉田御廟山古墳よりも数十年は古い築造なので当
然古墳が存在している中で断層ができたことになります。
 詳しくは別ページに譲りますが、古室山古墳は古市古墳群の中では、津堂城山古墳な
どと共に最も早い時期に造られた古墳の一つです。造られた時には、現在北東側にある
仲津山古墳
(仲津姫皇后陵)やすぐ南の大鳥塚古墳はまだありませんでした。国府台地上
では当時最も大きな古墳だったことになります。長い歴史の中で古室山古墳がどのよう
な変遷をたどって今日の姿に至ったのか、興味の湧くところでもあります。

               「藤井寺市の断層地形」
  「誉田御廟山古墳」
C 真上から見た古室山古墳 ― 2017年 ―
C 真上から見た古室山古墳    2017年
    (Yahoo!JAPAN)
より    文字入れ等一部加工
    古墳の西に接して誉田断層による段差地形がある。
公園化された古室山古墳
 古室山古墳は中規模前方後円墳と言ってよい古墳ですが、この規模の前方後円墳としてはかなり不遇な存在であった古墳でもあります。
まず、何と言っても、真上からの写真でわかるように相当変形してしまっていることです。周濠は早くから埋まっていたようで、昔は墳丘
部分しか古墳として認識されていなかったのではないでしょうか。周濠が完全に消えていれば、空から見る手段が無い時代には、古墳の範
囲はわかりにくかったことでしょう。
 下の写真Dは、戦後間もない1946(昭和21)年に米軍が撮影したものです。後円部はほとんどが耕作地となっていたことがわかります。こ
の頃はまだ住宅などはできていませんが、古墳全域が民有地となっていました。写真Eは
、それから30年ほど経った1975(昭和50)年の様子
です。藤井寺市が誕生して
10年目の年ですが、急激な人口増があって、古室山古墳の周辺にも多くの住宅ができています。古墳域の中にも
民家や工場が侵食するようにできています。墳丘だけ残して周りは建物で埋まってしまいそうな状態です。その墳丘も、まだ畑の部分が見
られます。よく見ると現在の桜の木がある位置に、すでに苗木が植えられていたようにも見えます。
 写真Fはその
10年後の1985(昭和60)年の撮影です。市によって古室山古墳の整備が進められ公園化が図られました。新たに苗木が植えら
れたり、墳丘の整備が行われました。現在見られる桜の木がかなり育っている様子がわかります。ただ、この時点ではまだ古墳域内に民家
や工場がそのまま存在しています。この後、古墳全域の公有地化が進められ、大部分が市有地となって周濠跡部分も少しずつ草地広場のよ
うに変わってきました。
D 昔の古室山古墳―1946年― E 昔の古室山古墳―1975年― F 昔の古室山古墳―1985年―
D 昔の古室山古墳  ― 1946年 ―
〔米軍撮影1946(昭和21)年6月6日 国土地理院〕より
   墳丘の上部まで耕作地となっていたことが
  わかる。雑木林の部分もあったようである。
  右上は仲津山古墳(仲津姫皇后陵)の前方部。
  道路に接する白い四角い部分は拝所。
E 昔の古室山古墳  ― 1975年 ―
   〔1975(昭和50)年1月24日 国土地理院
〕より
   周辺に住宅が増えている。古墳地内にも住
  宅や工場ができている。墳丘上にはまだ畑が
  見える。現在の桜の位置に苗木が植えられて
  いるようにも見える。
F 昔の古室山古墳  ― 1985年 ―
   〔1985(昭和60)年10月8日 国土地理院〕より
   さらに住宅が増えている。墳丘が整備され、
  桜が育った様子がわかる。この後に古墳の公
  有地化が進められて古墳が公園化
されてきた。
  
墳頂まで自由に登れる数少ない前方後円墳である。
おすすめの桜名所−古室山古墳
 前述したように古室山古墳桜は高木が多く、木の根元や枝の真下に入って、仰ぎ見る桜の写真を撮ることができます。また、桜ゾーンの
どこでも自由に移動できるので、様々なアングルでいろいろな姿の桜写真を撮ることもできます。他の桜名所には無い、古室山古墳ならで
はの特徴だと思います。
 花見をするだけの人たちにとっても、座って休んだり食事をしたりできる場所がいくらでもあり、少々の人出があっても混雑するような
ことはありません。さらに、後円部のてっぺんに登ると、もともと台地上の古墳なので、たいへん良い眺めを楽しむことができます。
 藤井寺市には自由に墳丘に入ることのできる大きな前方後円墳として、古室山古墳のほかに津堂城山古墳、野中宮山古墳がありますが、
墳丘全体を自由に動き回れるのは古室山古墳だけです。桜ファンの人も、古墳ファンの人も、是非訪れていただきたい場所です。
G 古室山古墳の桜(墳丘上より北西を見る) H 周濠跡より墳丘の桜を見る(北より)
G 古室山古墳の桜(墳丘上より北西を見る)
    前方部北側の周濠跡部分は、人気の花見場所である。
H 周濠跡より墳丘の桜を見る(北より)
    写真Gの反対側から見た様子。ほどよい日陰がある。
I 古室山古墳の桜(墳丘前方部に立つ高木の桜)   J 墳丘裾の桜を見る(北西より)
I 古室山古墳の桜(墳丘前方部に立つ高木の桜)
        高木の桜の真下から眺めることができる。
  J 墳丘裾の桜を見る(北西より)
            大きな枝が長く長く伸びている。
古室山古墳の桜は高木が多く、木の下に入って撮影をすることができ、他の場所とは違ういろいろなアングルの写真を撮って楽しめる。

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