サティパッターナ・スッタ (Satipatthana Sutta) 大念住経 又は 大念処経

知覚

感覚 (feeling)と知覚 (perception) を理解しておくことは 「サティパッターナ・スッタ」 を読むためにとても大切です。

・感覚 (feeling) 身体的プロセス : 感覚器官を通して受け取る情報
・知覚 (perception)精神的プロセス : 経験や記憶を基にして受け取る情報

ブッダは、心が「意識」「感覚」「知覚」「反応」という四つのプロセスから成り立っていることを発見しました。

感覚器官 は心のアンテナです。このアンテナが正常に作動するためには、 意識 が正常に働いていなければいけません。意識は心のアンテナである 感覚器官 を作動させる電源のようなものです。 何かを見るのに熱中している時には、音がしていても耳に入らないことがあります。これはすべての意識が目に集まっていて、聴覚意識が働いていないからです。眼をつむると景色が見えません。これは視覚意識が働いていないからです。

感覚器官を働かせる電源としての意識がパワーアップされると、感覚器官のアンテナは精度を増します。その結果、より多くの情報が集められ、より多くの感覚が生じるのを感じます。意識を働かせると感覚が増すために、意識が感覚を生み出すと感じがちですが、これは意識によってアンテナの精度が増したことで起きた現象で、感覚が新たに生じたわけではありません。それまではアンテナが働いていなかっただけで、感覚はもともとあったものです。

このアンテナが受け取った外からの情報は、次のようなプロセスで情報処理されます。

外からの刺激 
  ↓
  意識(vinnana:ヴィンニャーナ)感覚器官とその対象との接触によって生じます。
  ↓
 感覚(vedana:ヴェーダナー)感覚器官を通して情報を得る現象(生データの受信)。
  ↓
 知覚(sanna:サンニャー)得た情報を記憶や経験から判断(データの分類・識別・好悪の判断)。
  ↓
 反応(sankhara:サンカーラ)知覚の判断に基づいて起きます。

このスピードがあまりにも速いために、人はそのことに気づかず、反応が長時間繰り返されて強化されたとき、はじめて意識の中に現れて気づきます。

私たちは、誰もが、「意識」「感覚」「知覚」「反応」という心のプロセスの流れの中にあります。それは身体の変化よりもさらに高速で変化しています。これこそが「自分」というものの現実です。単なる流れに過ぎない現象のプロセスであるこの「自分」という現実を体験し、正しく理解することができたら、「自分」という実体は存在しないという理解が生まれ、苦から抜け出す糸口を見つけることができる、とブッダは悟りました。

サティパッターナ・スッタは、プロセスにすぎないこの「自分」という現実を体験するための手引書のようなものです。










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