鋼の魂

 

「エステル?。」

ウォルスが確認するかのように呼ぶ、エステルは少しうつむいた後『ニカッ』といつもの笑いをみせた。

「いやぁ、ちょいと『お色直し』をしようと思ってさあ〜、汗たくさんかいちったしねぇ。」

『はあ?』と呆けた顔でエステルをみつめるウォルス、エステルは楽しそうに笑うと服を脱ぐ素振りを見せ。

「あっらぁ?ウォルスちゃん、追いかけねぇの?そんなにぼくのないすばでーが見たい?」

あっけに取られていたウォルスだったが、我に帰ると同時にエステルを睨みつけ。

「エステルッ!!一体何を・・・。」

しかしウォルスが声を荒げると同時にエステルはウォルスの襟首を掴み互いの顔が触れるか触れないかまでウォルスを引き寄せる。

「今回のお仕事・・・いや、物語・・・かな?ヒロインはエルノアとウルト、きみと天才君が主役で〜、ぼかぁ脇役ってね。」

ウォルスは限りなく近くにあるエステルの顔に赤面しながらその意味不明な話に聞き入る。

「・・・・きみがこの依頼を受けたのは必然、理解なんてしなくていいさぁ、ただ・・・・。」

エステルがウォルスに見せたことのない表情になる。

「博士はきみに『何か』に気ずいて欲しがっている、エルノアはきみに助けを求めている、それは『ハンター』のきみでは無く・・・・。」

そしてエステルはウォルスの襟を離した、バランスを崩し後ろによろけるウォルス。

「なあ、ウォルスちゃん、きみのクソ真面目なトコ、ぼくかな〜り好きだけどさぁ、真面目ぶってっと、見えなくなる物って多いと思うぜぇ、それとも・・・・。」

エステルがウォルスに背を向けて口を開く。

「あれだけきみを信頼してるエルノア、依頼主ってだけで、君の好きな『友情』は発生しねーの?。」

ウォルスは背中がザワつく感覚を覚えた、そしてエルノアから預かった『マグ細胞』をしまった胸の当たりを抑えた。

「ま、つまるとこ、二人・・・ああ、三人か、『助けてやれ』って事、仕事ってヤルよか気ぃ入るだろ?。」

そう言い終えるといつものエステルに戻る、そして手首に付けていた端末をウォルスに投げてよこす。

「もっていきなよ、特注で組んだソナーだ、真ん中が自分、きみって事だね。」

手のひら大のディスプレイの中に小さな光が点在している、一番近いのがエステル、離れていく二つがモンタギュー達、そして・・・・。

「・・・エステル、後ろから無数の反応・・・!!まさか!。」

エステルが愛用のセイバーを抜く、フォトンが辺りのホコリを焦がす匂いがする。

「ま、そういうコト、ここは振り返らず走ってくのがカッコイイぜぇ、ウォルスちゃん?。」

ウォルスは一瞬ためらったが、再び胸の辺りを抑えると、モンタギューの反応がある方へ走っていった、遠くなる足音を満足気に聞いた後エステルはおもいきり深呼吸をした。

「さてと、ぼくのお仕事をはじめますかぁ・・・・。」

 

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