鋼の魂

 

エステルを残し、受け取ったソナーを頼りにモンタギュー達を追うウォルス、幾つかのブロックを通過し、二人の反応も次第に近づいてきたが・・・・。

「(ん?反応が増えてる・・・。)」

ソナーのディスプレイが三人分の反応を示している、ウォルスは念のため気配を殺しそのばしょに近づいた。

「久しぶり、博士、本星以来?。」

聞き覚えのある女性の声がする。

「そうだね・・・こっちに来てからの噂は聞いてるよ、足を洗ったんじゃなかったのかい?。」

ウォルスはその声の主を思い出した。

「(たしか・・・・スゥ・・・・。)」

前に一度パイオニア1がらみの依頼で会った事がある、サオリがやけに『警戒』していた女性、バーニィが・・・『ブラックペッパー』の一員と言っていた女性。

「あなたも軍部でイロイロやってるじゃない、モンタギュー博士。」

スゥの目が怪しく光る。

「軍部の・・・『M計画』だったかしら?。」

そんなスゥの態度にもひょうひょうとした態度を変えないモンタギュー。

「相変わらず、のらりくらりがお得意ね、博士・・・・・・。」

スゥの手が腰の『ブレイド』に伸びる。

「ターゲットに攻撃意志確認、博士、撃退しますか?。」

エルノアが珍しく、『機械的』で『事務的』な冷たい台詞を口にする。

「必要ないよ、エルノア。」

モンタギューに諌められ、構えたライフルを下ろす、スウは『クスッ』と笑った。

「そこまで馬鹿な真似はしないわ・・・・ところで、あなたの連れだけど、何のつもり?。」

「なんのことさ?。」

問に答える気がないのか、モンタギューは目をスゥから背けた。

「どこまで知ってるかって事、ウォルス・・・だったわよね。」

自分の名前が出てきたことに多少の焦りに似た感覚がウォルスの中に芽生えた。

「さあ?ウフフ。」

ウォルスはエステルの『必然』という言葉を思い出していた。

「ウォルスさんはいい人ですぅ。」

エルノアが二人の会話に割ってはいる、スゥはふたたび『クスクス』笑う。

「そうね、あたしもそう思う、けど・・・・。」

スゥの表情が悲しみに似たものになる。

「知らなくていいこともあるわ、そのせいで命を落とすことになるかもしれないんだから・・・。」

 

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