鋼の魂

 

「おいお前たち、どこへ行くつもりだ、ちょっとこっちへこい!!。」

と、言いつつも、男は自分から近寄ってくる、そして三人の顔をのぞき込む様にして見ると。

「まさかお前ら、これからラグオルに降りる気じゃあないだろうな。」

男の態度にだんだん腹が立ってきたウォルスが強めの口調で言い放つ。

「降りたらどうだってんだ!。」

男はウォルスに一瞥くれると、不機嫌そうな顔をしてその問に答える。

「現在ラグオルでは我ら『WORKS』が作戦行動中だ、政府の人間はもとよりハンターズにもそう通達してある、つまり・・・作戦の妨げにならぬようラグオルには降りるな、と、いうことだ。」

モンタギューが『WORKS』という言葉に反応したのをウォルスは見逃さなかった。

「その『作戦』とやらは、この天才の頭脳無くして遂行できるのかい?それとも・・・。」

あいかわらず、のらりくらりと話すモンタギュー、しかしその眼差しにはさっきまでとは違うなにかが見え隠れしていた。

「その横柄な態度ができるのは、人質をとっているからかな?。」

男はモンタギューの言葉にひるむこと無く。

「何の話をしておられるのか理解できませんなあ、まあ、余計な詮索に得はありませんぞ、博士、そのアンドロイドと一緒に研究所に戻られよ。」

男は三人に嫌な笑いを見せるとその場を立ち去ろうとした、しかしとれをエルノアがさえぎる、そして男に向かって。

「えっと、そのぅ、あのぅ・・・おねぇさまを返してくださぁい、そしておねぇさまにひどい事しないで!。」

エルノアらしからぬ行動だった、エルノアにとって『ウルト』はこういう思い切った行動をとらせるほど大切な者なのだろう、しかしそんな思いも微塵も感じない様子の男は冷たく見据えると。

「いいかい、アンドロイドのお嬢ちゃん、我々はキミのおねぇさんのことなんか知らないんだ、行方不明と言ったかな?。」

男の言葉はあきらかにエルノアを侮辱していた、悔しさでエルノアが震えているのが解る・・・たぶん『今から起こる事』が無ければウォルスは男に掴みかかっていただろう。

「案外おねぇさんは自分の意志で家出・・・。」

その時男と三人の間にだれかが割って入った、そして。

「がぁっ!!」

男がその場に崩れ落ちる。

「ほぅほぅ、いい角度で入ったねぇ〜。」

「右斜め下45°から側頭部へのハイキック・・・ですぅ。」

エルノアの解説どうりの回し蹴りの余韻にひたる女性。

「なにやってんすか・・・・エステル・・・。」

エステルはウォルスの方を向くと、人指し指を真上に立てて。

「だめだぜぇ、ウォルスちゃん、からまれた時は先手必勝ってネ。」

ウォルスがため息をつく、エステルは『ん?』と首を傾げると。

「あっらー?はっやとっちり〜?。」

と、おどけた、いきなりの攻撃から我に返った男は2、3度頭を振りしゃがみこんだままエステルを怒鳴りつけた。

「きっさまあぁ!!こんなことをしてただですむと思っていまいなぁ!!。」

エステルは右手で頭を掻きながら。

「あー、ゴメンネー、きみ悪人面してっからさ〜、つい、ね、ま、とにかく、何もしらないぼくにめんじろ。」

そんな様子を見てゲラゲラ笑うモンタギューと必死に笑いを堪えるエルノア。

「ふざけるなあ!!きさまぁ・・・。」

エステルは男の言葉に割ってはいる。

「悪ぃとおもってっけど、ただで済むともおもってっぜ、きみさっき『WORKS』つったよねぇ、宇宙軍空間なんたら歩兵第32分隊だっけか?軍族に逮捕権は無ぇよな?つー事でこれはただのケンカってネ。」

そのときウォルスは『知らないとか言いながら、しっかり聞いてんじゃないすか。』と心の中で呟いた。

「クソッ!とにかくだ!地表に降りて我々の邪魔だけはするな!博士!そしてそこのハンター!!。」

エステルの蹴りがまだ効いているのか、ひざをカクカクさせながらおとこはトランスポーターに消えていった、エステルはウォルスに『ニッ』と笑う、ウォルスは深くため息をついた。

 

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