第1章
2.幼年期の終り

「はは・・・エルの方が年下なのに余の姉様みたいじゃ。」

さっきまでの暗い気持ちはもう無く、望んでいた『いつも』にもどってきたセフィ、隣で空を眩しそうに見上げるエル、しばしの沈黙の後セフィが口を開く。

「明日、皇国へ戻る。」

一言そう言うとエルを見つめ。

「エルも一緒に来てはくれぬか?。」

その誘いにエルは『ニカッ』と、笑いセフィを見た。

「絶対行かない。」

屈託の無い笑顔で平然とこういうことを言う、セフィにはこの答が返ってくるのは解っていた、この二年でエルがどういう性格か悟りきっていた、そしてもう一度尋ねる。

「エルは・・・余が居なくなったら寂しいか?。」

「うん、すごく寂しい。」

きっとその言葉はエルの飾りの無い本心だった、セフィは満足気に微笑むとすくっと立ち上がる。

「今日は鍛錬は無しじゃ、この風景を一日かけて目に焼き付けたい、よいか?、エル。」

「うん、沢山持って帰ってね、セフィ。」

その日は一日中青空が広がり、緩やかな風は心地よく頬を撫で森全体が歌っているようだった、セフィとエルはとりとめの無い話をしながら、小高い丘まで競争したり、小川で捕まえた魚で昼食をとり、熟した木の実を口一杯にほおばったり、まるで初めて二人で遊んだ時のように、ただ無邪気に一日を過ごした、そして、夕焼けが赤く空を染めるころ。

「今度は、僕が会いにいくから。」

そう言って照れくさそうに頭をかくエル、セフィは『クスッ』と微笑みうなずいた。

「そうじゃ、会いたいと思えばいつでも会える。」

終わるという事実を恐れていた、でもそれは終わりでは無いことに気がついた、会いたいと思えばいつでも、そう、きっと終わりなんて無い、二人が大空の下に存在している限り。

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