第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

「(あの堅い鱗を断たねぇと・・・・・できるか・・・オレ・・。)」

圧倒的有利に立ちながらも決定打に欠けていた、魔竜は何度叩き伏せようとも傷一つ付かない、そして。

「うわっ!!。」

不意の一撃がアナの鋼の剣を砕く、持久戦の不利を悟ったツキヤは自分の大剣をアナに投げた。

「アナ!数えで40もちこたえろ!!。」

そういうと背中にしょっていた『布袋』に手をかけた。

「ツキ・・・ヤ『さん』!!釣竿なんかでなにを・・・・?。」

「あ〜〜〜〜!!『さん』はいらねぇ!!つうか『釣竿』でもねぇ!!。」

朝から背負っていた『それ』をアナは『釣竿』だと思っていた、げんにカチュアと釣にいっていたのだから、しかし、布袋から現れたものは『剣』らしき物だった、鉄(くろがね)の鞘に見たこともない文字が金色で描かれている。

「ふう・・・・・・・。」

ツキヤは一呼吸置いた後、『それ』を鞘から引き抜く。

「ツキ!そんな細い剣じゃ・・・・・うぁ!!!。」

アナが魔竜の相手をしつつも、心配そうにその様子を見ている、たしかに今、アナの振りかざしている大剣にくらべるとあまりにも頼りなく見えた、しかしツキヤはアナの声が聞こえていないかのように呼吸を整え目を閉じた。

「(剣は良、鬼に追うては鬼を切り、邪に追うては邪を切り伏せる人神の業・・・・。)」

ぴりぴりと辺りの空気がざわつく、それまで執拗にアナを攻撃していた魔竜が『びくっ!』と『何か』を感じたかのようにツキヤのほうを向くと、アナには目もくれず突進していった。

「ツキッ!!!危ない!!。」

「ツキさん!!。」

アナ、カチュアが同時に叫ぶ、しかしツキヤは、自分の周りだけが、隔離された空間であるかのように落ち着き剣を構えた、握った柄を自分の右側面へ持ってくるその構えはツキヤがアナに教えた唯一の『型』。

「・・・『ハッソウ(八双)』・・・・。」

『一瞬』という言葉がこれほど当てはまることはアナの人生の中にこれまで存在しなかった、ものすごい速さでツキヤに向かっていった魔竜がツキヤをすり抜けた・・・ように見えた、そして沈黙、双方動かぬままにツキヤがつぶやく。

「築流奥伝参式・・・『琵引之雷皇』・・・・・ってか。」

それまでの緊張感から解かれたかのように呆気にとられたアナに微笑む、と、同時に魔竜の首が大きな音を立てて落ちた。

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