第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

「まったく、お約束の悪者なんて何処にでもいるもんだな。」

ツキヤは二人を自分の後ろに退かせ、オーウェンとの間合いをとる。

「お約束なら守った方がいい・・・自分に有益であればあるほど・・・違いますかな?」

オーウェンは呪印を組みながら口を開く。

「そして・・・・知りすぎてしまった者が無惨に殺されるのも・・・・お約束と言えましょうなぁ!!。」

『炎呪』、炎のスペル、球体の炎がツキヤ達に襲いかかる、普段ならツキヤにとってかわすのは造作もない事だった、しかし『それ』は明らかに後ろの二人を狙っていた。

「チィッ!!。」

二人を抱え、火球を手のひらで受け止める、ツキヤの手から焦げた肉の匂いがする。

「ツキ!!。」

「ツキさんっ!!。」

心配そうに声を上げる二人、カチュアが急いで法術でツキヤを癒す。

「まさに『足枷』と、言ったところか・・・ククク・・・。」

いやらしい笑い声、最低な戦い方、アナもカチュアも悔しさで震えている、しかしツキヤは手の痛みや卑怯な戦い方よりも、目の前の魔導士の行動に疑問をもっていた、そこそこの魔力を持つこの男がアナ一人さらうのに、なぜこれほどまでに大掛かりな、村人まで巻き込むような事に及ぶのだろうか、と。

「ツキさん・・・?。」

ツキヤはカチュアを、そして臆せずオーウェンを睨みつけているアナを抱える腕に、ほんの少し力を入れる、一瞬ためらいの表情を浮かべ、オーウェンに尋ねた。

「一つ、聞きてぇ事がある・・・・。」

ツキヤがためらいがちに口を開く。

「前回といい、今回といい、なんで村全体を巻き込む?、二度もこんな派手にやらかしたんだ、何か他の目的もあるんだろ?。」

オーウェンは冷たくアナを見据えると、離れたところで様子を見ている村人達に指をさした。

「あやつらの中に、精霊導師の血を引く者がおる・・・・。」

その言葉にカチュアの手がかすかに震えたのをツキヤとアナは感じた。

「そやつ・・・その導師はオーレイノに心酔しておってな、馬鹿な奴だったが法術の腕だけは、次期魔導師団長と言われるほどだった・・・・。」

「まてよ・・・・。」

オーウェンの話にアナが割ってはいる。

「その人の名は・・・『ワノール』、『ミオドラグ=ワノール』か?!。」

オーウェンは息を含むようにして笑う。

「オーレイノがくたばったといえ、あの男は必ず事の障害になる、と、思ってました・・・・が、案外簡単でしたよ・・・・あの男は・・・。」

『その時』を思い出したオーウェンの瞳に冷たい光が灯る。

「愛妻を人質にとる・・・手を出せないあやつを・・・殺す、まあ・・・・単純な作業ですな・・・・。」

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