第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

「ほう・・・貴方様は何もご存じ無いようですな。」

言葉が出ないアナに、老人が語り出す。

「申し遅れました、私は『政務執行管理官』オーウェンと申します。

その内容は、アナの父親が王家の第一王子だった事、王家を捨て、アナの母親、平民の娘と結ばれたこと、そしてアナが生まれたこと、アナにはあまりにも衝撃的な事実だった。

「俺が・・・・王家の・・・・。」

頭の中の整理がつかないアナ、その様子をみて、老人がいやらしく微笑む、そしてアナに気づかれぬよう、『精神支配』の印を組む。

「そう・・・そして我々は・・いえ、この国は貴方様の力を必要としているのです。」

現在ヒクノは、皇国ハーヴベルヌの保護の元、復興を進めている、その際、ヒクノ側の代表は『サクラス王女』となっていた、しかし老人の話だと、その王女は王国を継ぐのに相応しくないという、そして、アナの存在を知った時、多くの家臣が、後継者に推したと言うのだ。

「ヒクノは貴方様を必要としておられるのです、王子・・・。」

巧みな言葉と呪の力で、アナの精神は閉ざされていく、『墜ちた』、すでに思考が止まったかのアナに老人がほくそ笑む、そのときアナの後方から叫びにも似た声が聞こえる。

「アナァ!!。」

カチュアの声で我に帰るアナ。

「知ルハ天ノ流動、地ノ束縛ニ其ノ歌声ヲ、戒メ解キ放テ、我守ル力ヨ!!。」

カチュアの『詠声』でアナの束縛が解ける。

「アナッ!伏せろっ!!。」

ツキが大剣をアナを取り囲んでいた者達に勢い良く振りかざす、稲妻のエンチャントスペル、剣から稲妻が衝撃波と同時に襲いかかる、アナの周囲の騎士達は一瞬にして成す術もなく、崩れ落ちた、ツキヤの指示どうり、うずくまっていたアナに二人が駆け寄る。

「アナ、大丈夫・・・・っとと・・。」

ツキヤが声をかけるより早く、カチュアはアナに抱きついた。

「アナァ・・・アナァ・・・・。」

泣きながらアナに抱きつくカチュア、アナは照れくさそうにカチュアの頭を撫でる、ツキヤはアナの無事を確認すると、さきほどの雷撃で粉塵が舞う方へ目を向ける。

「アンチショックとアンチスペルを同時に張れるのか・・・『魔導士』・・・そこそこ楽しめそうじゃねぇか。」

まだ粉塵で先が見えない方へ声をかけるツキヤ、次第に視界が晴れると、先ほどの老人が、何事もなかったかのように、いやらしい笑いを浮かべていた。

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