第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

しばしの沈黙の後、ツキヤはある異変に気付く。

「キナ臭い・・・・・まさかっ!!。」

ツキヤはカチュアを抱えると、集落の方へ走り出す。

「ツキさん!?。」

「しゃべんなっ!舌を噛む!!。」

集落に近づくにつれ、魔導の流れも感じる、嫌な予感がした。

いち早く異変に気づき、集落に戻ってきたアナが見たものは、騎士らしき者達が村人を襲っている光景だった。

「ゴミどもに構うな!早く捜し出せ!!。」

そのような会話をしているが、アナは目の前の現実と、激しい憤りが心を支配しその意味を考えることさえしなかった。

「きっさまらあぁぁぁぁ!!!!。」

数人の男に切りかかるアナ、まだ子供ながらも剣の腕は相当な物、不意をつかれたこともあり、一人を地に伏せると、その騎士の持っていた『鋼の剣』を奪い取り、つぎの目標を定めた。

「みんな!早く逃げるんだっ!!。」

村人たちにそう言うが早いか、アナは侵略者共に切りかかっていく、アナに気押された騎士らしき者達はその小さな体に似合わぬほどの剛剣の前に一人、また一人と倒されていく。

「くっ!!何人いるんだ・・・・?。」

ある一定の間合いで膠着状態に陥ったスキを付き、アナを青白い光が襲う。

「くぁっ!!なんだっ!?動けないっ!!。」

『束縛のスペル』、どうやら敵に『魔導士』がいるようだ、アナは呪縛で動かない体を必死に動かし、辺りを見回す、光が向かってきた方向に、純白のローブを纏った老人がニヤニヤと笑いながらこちらを見ている、アナは怒りの形相で老人を睨みつけた。

「クソジジイ!!術を解けよ!!。」

そんなアナの言葉に答えるわけでもなく、老人が近づいてくる。

「ふむ・・・・言葉使いに改善の余地はあるが・・・『オーレイノ様』の生き写しのような姿、これなら『サクラス』もそうそう無碍にはできまいて・・・・。」

『オーレイノ』という名前にアナが反応する。

「父上を・・・・知っているのか?。」

老人はその枯れ枝のような指を、アナの頬に這わせて、満足げに笑うと、その場に膝をつき、アナを見上げるような形で口を開く。

「貴方様をお迎えにまいりました・・『タチアナ・エンノイア・ヒクノ』、ヒクノ王家の正当後継者にして『地母神』を継ぐ御子よ。」

意味が解らない、先ほどまでの憤りも忘れ、混乱にも似た感覚がアナの心を支配していた。

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