第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

「アナは・・・・『エンノイア』の血族なんです・・・。」

「エンノイア(地母神)・・・ヒクノ王家か?。」

ヒクノ王家は封印戦争後、皇国の指揮下で国の再建を急速に進めていた、国民は生徒院に保護されていた王女によりまとめあげられ、中央もかつての機能を取り戻しつつあった。

「アナの御父上は、王家の権力争いに嫌気がさし、自ら辺境指令の任に就きました。」

そして、後はツキヤの聞いたとおり、一年前の戦争の時に受けた傷により亡くなっている。

「アナを見ていると・・・そんな雰囲気でもなかったな、根っからの平民って感じだ。」

「この事はアナ以外の村人は知っています、村の人間すべて御父上の元領民でしたから、私もこのことは両親に聞きました。」

アナの母親は領内の普通の娘だった、アナの父は不自由な王族の出、自分の息子には血の束縛をあたえたくなかった。

「生徒院での三年間を、『自由な時』を知ってしまった御父上にはアナにそういう思いをさせたくなかったのでしょう・・・。」

しかし、戦争がもとで王家が事実上消失してしまったことからアナの存在に『価値』が出てくる。

「今現在、王家の血を引くのは・・・王女様とアナ・・・仮にアナに継承権があるとしたら・・・。」

ツキヤは考えていた、『村』にしては粗末な集落、アナのヒクノに対する憤り、そして。

「まさか・・・辺境の領地は襲われたのか?。」

カチュアが頷く。

「アナには、墜ちた騎士の所為だと・・・でも実際は何物かが・・『タチアナ=エンノイア=フェブバーグ』を探すために辺境の村を襲っているのです。」

「アナやその家族が黙認されていたのは以前は邪魔、つまり権力争いの御輿は少ないほどいいということだろう、しかし現状でもしも王女を今の地位から引きずり下ろし、アナが取ってかわったら。

「後見人になれば、皇国の恩恵と絶対的な地位を築けるということか・・・。」

ツキヤの竿を持つ手がわずかに震えた。

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