第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

「んじゃ、期待しないで待ってろよ。」

次の日の朝、アナには昨日の反復練習を命じ、月夜は近くの川へ食料の調達、つまり釣に出かけた。

「アナ、お昼には一度戻ってくるからね・・。」

カチュアの言葉にうなずくとアナはいつもの場所へ駆けていった。

「さてと、道案内ヨロシクッ!。」

ヤル気まんまんの月夜に『くすっ』と笑うとカチュアは自分がいつも水を汲んだり、洗い物をする小川へ案内した。

無言で森を歩く二人だがけっして気まずいふいんきではなく、月夜は鼻歌交じりで、カチュアはたまに『くすくすっ』と笑いながら歩いていった。

「ツキさん、ここでどうでしょうか・・・?。」

「へ〜、こりゃまた・・・・。」

手付かずの自然、この森に入った時もそういう印象をうけたが、カチュアの連れてきた小川の心地よいほどの透明度が月夜にそれを再認識させた。

「さってと、いきますかぁ。」

さっそく竿を水面にかざし、すわりこむ、月夜、またしばしの沈黙が二人に流れる、それを破ったのはカチュアだった。

「アナの事・・・ありがとうございました、ツキ・・・ツキヤさん。」

「あ・・・やっぱばれてたのね。」

カチュアはいつものように微笑む。

「アナはともかく、カチュアちゃんにゃ、ばれるな〜って、ま、いいけどサ。」

その場にいないアナのことを二人で笑う。

「アナには、それこそ遥か彼方の御方ですから・・・まさかこんな辺境に来るなんて、思ってもいませんよ・・。」

そういっている間にも、二匹、三匹と釣り上げていく月夜、その様子をみながら微笑むカチュア、しかし、しばらくの時が経ち、再び口を開いたカチュアに笑顔はなかった。

「ずっと・・・いっしょにいたいんです、アナと・・・。」

月夜は無言のまま耳を傾けていた。

「きっとアナは自分の望む場所にたどり着く・・・でも、その時にあたしは・・・、側にいられる自信が無いんです。」

月夜はカチュアに言葉をかけなかった、真っ直ぐに剣をふるい続けるアナ、確かにいつかカチュアの思う、『場所』にたどり着くだろう、しかしカチュアは知らないのであろうか?、いや、知っているはずだ、アナが剣を持つ理由を、アナは純粋にカチュアを守り抜くため、強くなろうとしている。

「なんで、いつか離れ離れになると思うんだ?。」

その月夜の質問は的を得ていた、それはアナの出生に関わっていた。

1ページ戻る    序章へ