第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
2.<英雄候補>
「ただいま、今お湯を沸かすからね。」 そうこうしている内にカチュアが帰ってきた。 「ああ・・おかまいなく。」 久しぶりの暖かい飲物、本来なら今ごろエステルの家でさいじを待っているはずだったのだが。 「(未来は、ままならねーなぁ。)」 あくまで『万能、絶対、十全』ではない自分の『ロスト』に、すこし腹を立てながらカチュアのもてなしを受ける。 「なあ、ツキ、もし、良かったらでいいんだけど・・。」 アナがなにやら言いたげだった、大体のことは予想できたが。 「だめだよ・・無理を言っちゃ、ツキさん・・旅の途中なんだよ?。」 『それ』はカチュアにも解っていたようだ、アナはがっくり肩を落とす、月夜は少し考えたあと口を開く。 「・・・・アナは基本は出来てるみたいだしな、三日で良いなら『教えた』というレベルまで行くと思うし・・・。」 その言葉にアナは目を輝かせる。 「本当っ?ほんとにいいのか?ツキ、なら、俺、今日の残りをこなしてくるっ!!。」 そう言うとツキの返答もきかず、おもてに出ていく、よほど、『そのこと』が嬉しかったんだろう。 「なあ、カチュア、俺がアナに稽古をつけるって話でいいんだよな?。」 一応確認をとる月夜に、カチュアは恥ずかしそうにおじぎをする。 「アナ・・いつも一人で、木剣を振るだけの『稽古』だったから・・・とても嬉しかったんだと思う・・。」 そう言ったカチュアも嬉しそうだった。 「なぁ、カチュアは、アナの『恋人』なん?。」 月夜は冗談混じりに言った言葉にカチュアは横に首を振った。 「私は・・・アナの・・・。」 そのカチュアの瞳はなぜか悲しみに捕らわれていた、それを感じ取る月夜、すぐさま話題を変える。 「ま、しばらくは、かわゆいカチュアちゃんと一緒ってことだなっ。」 カチュアは顔を赤らめ微笑む。 「(三日間かあ・・・さいじ、エステル、すまね〜。)」 こうして、月夜にとっても忘れられない三日間が始まった。 |