第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
1.<小さな出会い>

夜明け、森の中、木漏れ日が光の柱を作る、澄んだ空気に小鳥のさえずりが響く、巨木に寄り掛かる様に眠りについていた青年がその『小鳥の歌声』で目を覚ます。

「ふう・・・・朝露でぐっしょり・・・と、おもったけど・・。」

ここ『ヒクノ』は四方、山に囲まれた土地で絶えず緩やかな風が吹いている、そのため湿度も低く露もほとんど降りない。

「『久遠の風吹く地』か、エステルが気に入るわけだ。」

そう納得すると、荷物の中から『干し肉』と『米酒』を取り出した。

「とりあえず、飯にするかね。」

この青年、別に毎日朝から酒を飲んでいる訳ではない、ただ、疲労で回りも満足に見えなかった昨夜の森と今、自分がいる場所のギャップ、朝日に生える樹々はあまりに美しく。

「この景色を『ツマミ』にしねぇ手はねえよな。」

彼なりの『美学』『風流』がそうさてているのであろう、米酒を口に含み景色を味わい、そして、これからの事に思いを馳せていた、『それ』は、今から一年前、親友達との『約束』。


― 一年前、ヴィレオ城 ―

 

「お前は、この『戦争』が『何か』の始まりにすぎない、と?。」

青年、月夜は目の前の女性にそう尋ねた。

「ああ、君だって気づいているはずだ、大国とは言えあの国に竜の封印を解く力なんて無かったことを。」

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