「余は・・・子供じゃ・・・。」
サジェスの去った後、ソニアは一人、自室で泣いていた、思い人が自分から離れていってしまう、そのことが頭をよぎるたびやりきれなくなる、しかし、何時間かすぎ、落ち着きはじめると、自分のしたこと、言ったことを考えはじめていた、そして、それがただのわがままにすぎないと思い始めていた。
「サジェスは・・・きっと皇国のためになると、だから、旅にでるのじゃ。」
皇国の姫として、祖国の為に、あえて危険な旅に赴く『忠義の士』を誰が止められようか・・・。これが自分にとって最善の、なによりサジェスにとっても『騎士の本分』を貫くという名誉になる。
「あやつの事だ、明日には皇国を発つじゃろう、見送りぐらい・・してもよかろう。」
そうソニアが決心した時だった、ふいに部屋のドアが『コッコッ』と鳴ったかと思うと同時に勢いよく開く、が、ソニアはまったくそれに動じず『またか』と言った眼差しでその事の主に話しかける。
「ノックするのはいいが、すぐに入ってきては意味がありません『父皇』殿。」
父皇と呼ばれた男性は、そんな言葉も聞こえていないかのようにソニアが腰をかけていたソファーの隣にすわり、にやにや笑いながら自分の娘を見つめている。
「なにか用事でも・・・・。」
ソニアがそう言いかけると、その言葉を遮るかのように、泣き腫らした目を見つめ。
「相当泣いたみたいだな、さすがのお前も姫である前に女ってこったな。」
その言葉にソニアはさっとかおをかくす、しかしこの男『皇』にしては言葉が雑である。
「父皇、用がないのならでていってくれませぬか?。」
うつむきながらそうソニアが言うと。
「用事ならあるさ、でも『皇』としてではなく、おまえの父親『ディライト・ハーヴベルヌ』としてな。」
涙のあとを手で擦りながら父をみつめるソニア、そこには、いつもと少しちがう様子の男が座っていた。