第1章『大空を舞うにはもってこいの風』
2.<理由>

城をあとにし、帰路に付くサジェス。

「泣いて・・・・いたな・・・。」

ソニアの泣き顔が頭から離れない、自分の屋敷までどう歩いたのかさえ解らない。

自分の部屋に着くと、そのままベットに倒れこみあらぬ方向を見つめながら、『一年前の出来事』を思い出していた、のちに『封印戦争』と呼ばれるあの出来事を・・・・・。

愚かな者たちの欲望は尽きることを許さず、ついに『人外の力』にまで手を出した。

― ぼくらには・・戦う以外の・・・・選択は・・・取れなかった・・・ ―

六竜の内の『光』『風』をつかさどる竜は、すでにこの世界が『人』の物と理解し、『共存の道』を選んだ、しかし・・・・。

― 『種の誇り』・・・生きた証・・・ ―

その他の竜たちは、その選択をよしとしなかった、久遠の眠りから覚め、自分たちの『力』のみを利用しようとした人間、己に従わせるため記憶を奪われ・・・。

― だから・・・生き急いだ・・・ ―

自分たちに残された物は『力』のみ、ならば、それを全てと受け止め、証をたてたい。

― 『人』の『力』たる、僕らと・・戦うことで ―

そして、全てか終演を迎えた時・・・・・サジェスは、いや、この出来事に関わったすべてのものが『ある真実』に引き込まれていく事を知る、それは、自分と死闘をくりひろげた地をつかさどる封印竜『ゼスタ』のいまわの際の一言から始まる。

「見事だ・・・・強き者よ・・・。」

サジェスの渾身の一撃を受け、崩れ落ちたゼスタ、その瞳には、もう戦意は無く、己を打ち負かした勇者をまっすぐに見つめていた。

「これで・・逝ける・・・全てを・・・出し切った・・・『出来損ない』の・・・私でも。」

その言葉にサジェスは、疲労で重い体を起こし、

「記憶が、戻ったのですね、しかし『出来損ない』とは?。」

その問にゼスタは己に残る命を懸けることにする、己の認めた『人』の問に。

「お前には、知る権利がある・・・・。」

ゼスタは、今にもきえそうな声で話しはじめる。

― 全ての生き物が・・『今ここに在る理由』 ―

「遥か昔、『人間』たちは・・・・この世界を、『再生』させるため、人工的に・・・『食物連鎖』を創ろうとした・・・。」

― 今、この世界に生きるモンスターは・・・その為に『創られた物』・・・ ―

「我々は・・その環境に適応するため・・・・・・・・力を与えられた『人間』の・・・」

― 失敗作・・・・元は・・『人間』だった・・・・・・ ―

「『エルフ』・・・そして『人』・・・。」

― エルフは完成体に最も近く、人は、その『力』を内に秘め・・・・ ―

「そして・・・全ては眠りに着いた・・・。」

― 世界が『再生』されるまで『人』は・・・ ―

「・・・我々は、出来損ないとはいえ・・・・・『力』においては、『人』を遥かに凌駕していた・・・・。」

― そして、その力で、先人たちは、ある物を守らせることにした・・・ ―

「ある物とは・・・・。」

ゼスタがそう言いかけた時だった。

「それ以上は、知らなくていい。」

サジェスは背筋に冷たい物を感じた。

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