「ならぬ!!余はみとめぬ!!。」
『ヴィレオ城・謁見の間』いつもなら時が止まったのかのごとくのこの部屋の静寂を破ったのは、まだ幼さの残る少女の怒りとも取れる声であった。
「そちは自分の立場が解っておるのか?。」
いくらか落ち着きを取り戻した少女の瞳の先に片膝を立て視線を床に落とし、その言葉を受ける若者の姿があった、正装たが、そのかたわらにはみごとな装飾の施してある巨大な戦斧が携えてある、この国の騎士であろうか?。
「そちは皇国において近衛騎士五百騎をたばねる身、ゆくゆくは聖騎士団長、大将軍にも推薦されるだろう。」
少女の息使いがまた、少しずつあらくなる。
「なのに!なぜ、『旅』などと・・・・。」
その若者は顔を上げ、その少女を見上げた。
「もう・・・大きな戦も終り・・そちは約束どうり、余のもとへ帰ってきてくれたのではないのか・・・?皇国を・・余を守ってくれるのではないのか・・・?。」
少女の瞳から涙があふれそうになる、しかし、それをこらえ凛とした声で最後になるだろう言葉を発する。
「答えぬか!!『サジェス・ヴィドウ』!!。」
サジェスと呼ばれた若者は、ただ一言。
「申し訳ありません、しかし、もう決めたことなのです、『ソニア』様・・。」
と言い、再び視線を床に向ける、そして少女も、ソニアもまたその言葉に張り詰めていた糸が切れたかのように、大粒の涙をこぼす、力無く美しく飾られたイスにもたれる。
「もうよい・・・すまぬな、さがってよい・。」
ソニアの言葉に謁見の間をあとにするサジェス、そしてまた、この部屋に静寂がもどる・・・・。