胸をなでおろすカッツェとグディ、そして再び月夜とエステル『だけ』の会話が始まった。
「強かったか?。」
「うん。」
「強くなれるか?。」
「うん。」
「今のお前よりか?。」
「うん。」
簡潔な会話、確認するだけのやり取り、しかし二人は嬉しそうに微笑み、話していた。
「お〜い。」
暫くして、マリアとリュークがふわりと降りてきた。
「いやあ、『飛翔系』の魔法はすげえな、俺も覚えるかな〜、で?サジェスは?。」
呆れ顔とクスクスという笑い声、ここで皆『終わった』様な気がした。
「さ〜て、帰ろう、エステル、おなかすいたし〜。」
「そうですわね、いらない気苦労はコリゴリですわ、エステルさん、今度からはもう少し優雅に・・・・・・。」
「あらあら、来たばかりなのに、他の方たちともお話したかったのですけれど・・・・ザンネンだわ。」
『錬金学塔』の一団がその場を離れようとした時、エステルが月夜に振り向き。
「ねえ、たぶん次の式武会までに間に合うよ?ど〜しよ?。」
おどけていたが本気の言葉だった、無論それはサジェスをさしていた。
「かんけ〜ねぇ、次もこっちは俺だ、お前こそ・・・まあ、そっちは関係ないか。」
お互い『ニカッ』と笑うと次振り返る事は無かった。
「ふう、一応・・・サジェスの所にいくか?」
リュークがサジェスがいるであろう方へ歩きつつ、皆に確認を取る。
「いや・・・・そっとしておこう、心配無いならなおさらさ。」
「そうだな。」
グティとカッツェがそういったのでこれ以上はリュークも進まなかった、そして月夜は。
「まあ・・・・そういうことだ、俺等も行くか。」
と言ってエステルたちが歩いていった方向に歩き出した。
「なんだよ〜、帰るなら錬金のおぜうさん達と一緒に行けばよかったじゃんかよ〜、マリア姫とお近づきになれるチャンスを・・・・・。」
「ヘッ!いたらいたで話しかけられもできねぇくせに、『ジゴロガイ』が聞いてあきれるぜ、大体あの会話で同じタイミングで帰ったら気まずい臭が漂っちまうだろ、アホ。」
「な!ばっか、余裕だっての!、さっきだって二人で空のデート状態・・・・。」
二人の『いつもの様子』にやれやれと肩をすくめるカッツェ、くすくす笑うグティ。
聖レシエ歴160年三の月、この日、後の英雄の起源となる日、まだ皇国は平穏の流れにいた。