川辺川ダム    −止まるか、巨大公共事業− 

川は山に降った雨が平地を流れ海に注ぎますが、そういう意味では川は山と海とをつなぐ重要なもの

いわば、絆ともいうべきものでしょう。

それは、森林の適度な養分や土壌のミネラルが海に流れることで、近海の生態系へも大きな影響を

与えているし、土砂の運搬も河川の重要な役割です。

また、魚類が遡上したり下ったりと、川そのものが地球の生態系を形作る役割もとても大事です。

鮭が産卵のために川を遡上することは日本人なら誰でも知っています。

鮎やウナギも鮭とは少し違いますが、川を上ったり下ったりします。

このようなことは、小学校の時に理科で習ったことですが、

実際には川の基本的な役割が殆ど機能していない、というのが今日の日本の河川が持つ病巣なのかもしれません。

例えば、ダムや堰があるために魚類が自由に川を行き来できないとか、

土砂もダムでせき止められて海まで流れ着かず、ダムが土砂でいっぱいになるとともに

海岸が浸食されてしまう、というように。

また、森林からの養分が海に流れていく、ということについても、日本の森林の多くが人工の針葉樹林であり、

更に林業の衰退で放置されている森林が多く、森林そのものの持っているべき保水力や

動物が生息するというような生態系としての機能も十分持てないところが多くなってきています。

正確に言えば、そのような森林が日本中の多くを占めているというのが現状と思います。

ダムの問題は川の問題の一つではありますが、日本の生態系という大きな見方をしたときには

川の中での生態系だけではなく、森林の衰退やその森林の生態に影響を与える鹿などの野生生物の問題、

更には山間地の高齢化による林業の衰退、など、今日日本で社会問題とされている多くの事柄と

結びついていることが何となく見えてきます。

そういう意味では川辺川ダムの問題は「無駄な公共事業」「川の生態系」「治水対策」というダムに関する

直接的な問題と、「森林の生態系貧困」「林業の衰退」「山間地の高齢化」「限界集落の増大」「鹿などの食害」

といった、ダムから見れば間接的な問題とも結びついており、問題解決は容易ではないでしょう。

とはいえ、少しでも状況をよくしていかなければ我々の日本はだめになってしまうわけで

みんなで真剣に考えていかなければならないことだと思います。

 

この川辺川ダムの問題はダムが中止になったとしても、日本の山間部の殆どの地域が背負っている問題は

残るわけであり、そういう意味では川辺川が日本の河川、山間地の問題を示しているともいえると思います。

そのような視点から、川辺川を最上流から河口までリサーチしてきました。

このホームページでは川辺川ダムについて、逐次報告しています。 

 

川辺川のため息」「止まるか川辺川ダム」「止まるぞ!川辺川ダム!

併せてご覧ください。     川辺川ダム位置マップ     (10.01.11)

川辺川最上流部
川辺川の上流部分です。

最上流部分は道路工事で行けませんでした。川の流れは今年はだいぶ水量が少なく、貧弱な流れでした。また、道路工事の影響か、川へ泥が流れ込んでおり、川の問題も見えてきます。         Map

上流部の道路工事
上の写真と同じ場所です。 

この上流部分には椎原という集落がありますが、居住者は殆どおらず、交通量も一時間に数台という場所です。にもかかわらず、東京近辺と変わらぬ立派な道路が建設中でした。どう考えても無駄としかいえません。これもダムとセットの見返り工事です。地元の人にとっても無駄な工事は不要ではないでしょうか。この工事で川はどんどん壊れていきます。

上流部分の森林伐採1
川辺川の上流部分にある林業用大規模林道より森林伐採の状況を眺めます。伐採後あまり時間が経っていません。山の地肌が見えます。

伐採は皆伐(Clear cut)で行われており、森林の生態系からすれば丸裸にされた森は生物にとっては砂漠のようなもので、ダメージの大きい方法です。経済の観点からは効率がよい方法、と判断されるのでしょう。ここに降った雨水は泥を削りながら川へ流れ込みます。また、伐採の効率のためにトラックを走らせるための道を造っている様子がよく分かります。これは、山だけでなく、川を壊すことになってしまう手法です。    Map

森林伐採2
これも皆伐後の状況です。

伐採されてから数年経っており、苗木が植えられ草も多少生えてきています。保水力という面ではまだまだ機能していません。

森林伐採3
中腹部分が皆伐されています。見た目は緑であり、多少回復してきている状況です。ただ、植林されたとはいっても杉や檜の針葉樹単一林であり、生態系としては貧困な森です。木の実なども無いので、鹿などの動物を養う力は殆どありません。
植林活動
労働組合の元締めである連合が植林活動をしています。

樹種は広葉樹など多様であり、生態系の面では望ましい木々が植えられて、木もだいぶ大きくなっています。とはいえ、造林地帯の中ではほんの1ha位で効果は小さいとは思いますが、小さい活動であっても実行するということが重要なんだと思います。

土砂の流入
川辺川支流の梶原川沿いの林道です。

土砂が道を流れ下っている状況ですが、これは、貧困な森林に保水力もなく、表土が流されてしまい、道路から川へ流れ込んでいるのです。これにより、雨が降ると川が濁りやすくなっているし、増水も保水力が小さいので急激です。「緑のダム」という言葉も、貧相な単一針葉樹林では難しいかもしれません。

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土砂で埋まった旧道
上の写真下部にある旧道です。このように対策をいくらやっても道路に土砂が崩れてきています。このような場所に道路を造ることが問題なのかもしれません。冒頭の立派な道路はこの道路の代わりに付け替えられたものです。
山の崩落

川辺川沿いの斜面崩落です。

木々の根付きが弱いということもあるでしょうが、人造林の弱さが原因だと思われます。また、この崩落は旧道に崩れてきており、この写真の鉄の矢板や頂部へのコンクリート壁造成で崩落防止策は行われていますが、崩落が止まらず新道が造られました。   

拡大写真   

砂防堰堤

川辺川上流にある朴木堰堤です。

すっかり土砂に埋まって、砂防の機能は全く果たしていない様子がよく分かります。堰堤ができれば当初は土砂の流下を防止できますが、何年かすればこうなってしまうのです。そもそも川の機能には土砂の流下も非常に重要な役割としてあるのですから、無駄な砂防ダムは不要でしょう。数年前の川辺川の濁りについても、これら砂防ダムからの土砂の流出ではないか、と言われていますが、国交省は一切認めていません。今回の政権交代でどれだけ川辺川の環境改善につなげることができるか、期待が持たれます。
鮎釣りのおとりやさん
川辺川下流にあるおとりやさんです。

川辺川は尺鮎が釣れることでも有名な川ですが、友釣りに必要なおとりを売っている店です。川辺川にお店は面していますが、このように住宅は身の丈ぐらい地盤を上げて建てられています。水害対策はダムだけではなくこのような複合的な対策が重要であり、また効果的だと思います。このおとりやさんは川辺川問題にも詳しい方です。   Link

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二俣の瀬

球磨川本流一勝地地区にある二俣の瀬です。

鮎釣りでも大物が潜むことで有名ですが、川下りでも名所になっています。画面の中央部分に川下りの船が見えます。

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瀬戸石ダム

球磨川に2つある上流側の瀬戸石ダムです。

電源開発の発電所があり、2万kwの発電量ということです。

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瀬戸石ダム魚道

瀬戸石ダムには魚道があります。

ただ、この激流の片側だけにこのような細い魚道があったとしても鮎は上っていくことができるでしょうか。ちょっと疑問です。

瀬戸石ダム上流部

ダムの上流部分ですが、このように湖のようになっています。魚道で鮎の稚魚が遡上しても流れのない止水状態ではこれより上流への上れないであろう、というのが一般的な見解です。

荒瀬ダム

熊本前知事の潮谷さんが撤去を明言した荒瀬ダムです。現知事の蒲島氏は撤去計画を撤回してしまいました。

18,200kw発電能力があります。売電で年間1億円強の収入があるそうですが、球磨川全体、そして八代海の生態系まで考えれば撤去するべきではないかと感じます。皆さんはどう思いますか。

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荒瀬ダム魚道

魚道はダム片側に造られていました。ただ、このようなつづら折れの魚道を川の中から鮎の稚魚が見つけて、登っていくことができるのでしょうか。ちょっと考えにくいですね。たまたま登り口にいたあゆが何匹か遡上するかもしれませんが、球磨川の生態系として上流下流が一体とは全然いえないと思います。

荒瀬ダム魚道を上流から

荒瀬ダム魚道を上流から眺めました。このように10回以上往復しながらダムの上流に向かいます。鮎の気持ちになれば、こんなところを登ろうなどとは決して思わないでしょう。人間の技術を過信したエゴ、とでもいったらいいのでしょうか。

荒瀬ダム魚道観察窓

荒瀬ダムの魚道観察窓です。

荒瀬ダム、瀬戸石ダムともにダムの紹介施設があり、魚道がのぞけます。ダムの広報のための施設ではありますが、これをつくるよりは自然河川にする努力をするべきかと思います。

遙拝堰

あまり知られていませんが遙拝堰という小さなダムも河口近くにあります。

落差は数メートルですが、流れはせき止められています。ただ、この程度の落差であれば鮎の稚魚は遡上できそうです。魚道も両岸にそれぞれあります。

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遙拝堰魚道

遙拝堰の行道です。緩やかな流れで鮎などの魚類の遡上は期待できそうです。

前川堰

前川堰です。

球磨川の最下流部は3本の川に分かれており、この写真は一番北側の前川です。その河口近くには前川堰という河口堰があります。魚道もあり、遡上もある程度期待はできますが、ない方がいいのでしょうね。農業用の取水などの為に必要なのでしょうか。球磨川本流にも同様な球磨川堰があります。

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球磨川河口

球磨川の河口です。

球磨川は八代海へ注いでいます。球磨川河口部は海釣りでも沢山釣れるそうです。これは、球磨川が流れ込むことによって栄養分などが豊富で海の生態系にとってもいい影響を与えているからでしょう。このことからも海と山とはつながっているといえるでしょう。

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川辺川の最上流から球磨川本流の河口部分までずーっと見てきました。

冒頭で書いたとおり、この川辺川・球磨川流域を見て、日本の河川や山間部の集落の社会的な問題まで

垣間見た思いがしました。

これは、川辺川ダムの問題ももちろん大きな問題としてあります。

それは公共事業のあり方、そしてダムの役割という意味で本当に必要な事業か、

という根本的な大問題であり、流域の地元の方だけではなく国民全員が問題意識を持つべきと感じています。

この問題については別のページで述べているのでそちらに譲りますが、

日本の山間部の森林が多くの問題を孕んでいるということ、その結果、河川が荒れていくということ、

そして、国交省がダム必要論の根拠でもある森林の保水力には限界がある、

という論理に結びついてしまうということなど、大きな問題が沢山あります。

川辺川が本来の姿に戻るにはダムを造らないのは当然ですが、

森林をよみがえらせて行く必要性は強く感じます。

 

川辺川上流部での土砂流入の様子を見ても分かるとおり上流部分での濁りが延々と河口部分まで続いている

状況が写真からも分かるかと思います。河口部分での濁りの源がすべて上流から来ているわけではなく、

流域のいろいろな場所から濁りが流れ込んでいるために大雨があると川全体が濁ってしまいます。

つまり、森林の荒廃は最上流部だけではなく、流域全体であるともいえます。

ですので森を守るべき場所は流域全体となります。

日本中の川を改善していこうとすれば、それぞれの川の流域をつなげれば日本全土がつながりますので

そうなると、日本中の川、そして沿岸の海の環境を改善しようとすれば日本中の森を

改善する必要があるということでしょう。

壮大なことになってしまいますが、戦後の復興期から高度経済成長と日本の森を痛め続けてきたのだから

それを改善していくのも我々の責任なのでしょう。

 

日本中の鮎釣りをする人たちにとっては球磨川は尺鮎(30.3cm超)が釣れるということで聖地と言われており、

8月後半になると全国から大勢の釣り人が集まってきます。

これだけ大勢の釣り人が球磨川、川辺川を愛してやって来るので、

その人たちの川に対する意識から変えていくというのが近道かもしれません。

 

前原大臣と地元の方々とのやりとりについては、八ッ場ダム同様に注意深く見守っていく必要があります。

また、現地の状況は随時報告していきます。

TOP PAGE (10年1月11日)