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これは映画だけに限らず小説なんかでも同じだと思うけど、『あ! この作品は自分のこと描いてる』て思うモノに出会うと、妙に感動しちゃいませんか?? それもうまい タイミングで出会ったりすると「これまで観てきた映画の中でも10本の指に入る」なんて思っちゃったりして…
もちろん、多くの場合はその場の錯覚で、後からもう一度観てみると「あれ、こんな映画だったけ??」という感じになっちゃうんだろうけど…
最近、僕がそんな感じで感動したのが「フルモンティ」というイギリス映画。本年度のアカデミー賞作品賞候補にもなったから、知ってる人も多いと思うけど、観てない人のためにちょっとだけストーリーを紹介しときます。
昔は鉄鋼業で栄えたイギリスの町シェフィールド。今は誰もが失業中で、暮らしはどん底状態。そんなとき、町にやって来た男性ストリップショー。女たちが駆けつけ、熱気ムンムン、歓声をあげているのを覗き見して、若くも・美しくも・たくましくもないオジサン達が自分たちもストリップショーで一儲けしようとするが……。ちなみに「フルモンティ」とは俗語で「スッポンポンの丸裸」という意味だそうです。
この映画、もちろんいろんな見方ができます。最近はちょっとはマシになったけど、景気のよくないイギリス経済の現状とか、父と子の家族愛とかね。ただ、僕がこの映画を観て率直に思った感想は「いやあ、男として生きていくのってつらいよね」ってこと。
おそらく、いろんなところで言われてると思うけど、男って生きていくのに不必要なプライドをいっぱいもってるよね。で、その最たるもの仕事なんじゃないかな。そして、職を失うこと=自分の全人格を否定されることと同義に思ってる男もこれまた多いような気がします。
映画の登場人物たちもご多分に漏れず、いろんなプライドを持ってたりします。妻に失業したことを言えずにいる元上司とか、チンポが小さいことが滅茶苦茶コンプレックスになってて、ショー前日に必至で増大器にすがろうとする奴とか、太りすぎで人前でストリップだなんて死んでも嫌だって奴とか、いろいろです。
この映画では、そんな彼らがストリップをすること自体にきっと意味があるんでしょうね。つまり「フルモンティ→裸になる→変なプライドを捨てる→人生やり直しがきく」ということじゃないですかね。まあ、観ればこんなことはすぐにわかるんですけど…
と、ここまで映画のことを書き続けてしまいましたが「冒頭の『あ! この作品は自分のこと描いてる』っていうのはどういう意味じゃ??」と思ってる人もいるでしょうから、ここからは僕自身の話。
実は今年の春、自分が担当してた雑誌が廃刊になってしまったんです。出版業界ではこんなの日常茶飯事なんですけど、そのときの僕にとっては物凄くショックで、それこそ全人格を否定されたようなもんでしたね。会社自体、僕自身これまで携わってきたパソコンの分野とはかけ離れたところをメインにしてきた出版社なんで、それこそ会社の中で自分の居場所がないという状態になってしまい、一時期、転職も真剣に考えたりしました。そんな時期に出会ったのが、この「フルモンティ」という訳です。
これを観て「男として生きていくのってつらいよね」って思ったのと同時に、「自分が失うと思っていたモノの多くは、実はつまらないプライドで、それ捨てちゃうと結構楽に生きられるかも」なんて単純に思えちゃったりして、結構元気出ましたよ。コレホント。
それから、今の会社で「もうちょっと踏ん張ってみようかな」って思って、今ではなんとか自分の得意分野で本出せるようになりましたしね。
ということで、生きてくのが窮屈だと思ってる人、「フルモンティ」オススメですよ。まだビデオは出てないですけど、きっともうすぐリリースされるでしょう。でも、僕自身この作品をもう一度みたらどう思うだろう??
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