初夏の迷い

OZ.


 エアコンを買うか否か迷っている。
 というのは、今度引っ越してきた部屋は、たいへん風通しがよいからだ。

 以前住んでいたアパートは、ワンルームだけあって部屋の南側にしか窓がなかった。北側はドアのみである。
 その部屋は、真夏は暑く、特に夜は寝苦しかった。けれども、長くは住むつもりはなかったし、エアコンを取り付けるのが面倒くさいので、扇風機のみでなんとか暮らしてきた。
 そして一昨年の夏のこと、さらにエアコンを取り付ける気をなくさせる「発見」があった。ふと思いたって、昼間、南側の窓と北側のドアを同時に開けてみたのだ。すると、部屋の中を風が通り抜けるようになり、「扇風機さえいらない」と感じるほどだった。そのおかげで、一昨年・昨年と、夏も割と快適に過ごすことができた。
 ただ、夜間寝ている間ドアを開けておくことは不安である。誰かに侵入されてしまうかもしれない。したがって、寝る時はドアを閉めざるを得ず、その間だけは暑さに耐えなければならなかった。

 ところで、昨年初冬に引っ越しをした。引越しをしたら、エアコンを買おうかなあ、と考えていた。
 けれども、現在の住まいは、南側と北側の双方に窓がついている団地の一室である(細かいことをいうと南側はバルコニー)。玄関はそれとは別のところにあり、また、10階という高いところなので、夜間に両方の窓を開けておいても問題はない。つまり、夜寝ている間でも風が通るわけだ。実際のところ、これまでに何度か暑い夜があったが、風が通るおかげで夜眠れないようなことはなく、むしろ、窓を開けたままにしておくと寒いぐらいだった。
 それで、エアコンなどなくても夏を過ごせるのではないかと期待しているのだ。

 私はたまたまこのような風通しのよい住まいを見つけたのだが、現在、こういう集合住宅は少ないのではないか。新聞折込のマンションの広告などを見ると、たいていは縦に長く、バルコニーの反対側は玄関で、窓がないか、あっても小さいものが多い。これでは、家の中を風が通り抜けることができない。小さい面積の土地で効率よく住宅の広さを確保しようとすると、そのような構造になるのだろう。
 しかし、夏、高温多湿の日本では、風通しがよいことが住宅の重要な条件ではないだろうか? それが満たされていない住宅が多いから、夏のクーラーの電力消費量がとてつもなく増えてしまうのだ。もちろん、「外の空気がきたない」とか「騒音がうるさい」といった理由で、窓なんて開けていられない、ということもあるだろう。
 けれども、二酸化炭素による地球温暖化が問題とされる時代である。電力や化石燃料だけに頼らず、自然を活かして快適に過ごせる、すなわち、風や太陽光を有効活用できるような住宅をふやしていくことが必要だと思う。


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