SUBARU LEVORG VM4
(車体編)

スバル レヴォーグ 1.6GT-S(DBA-VM4)。


1989年に登場したスバルのレガシィ・ツーリングワゴンは、
ステーションワゴンの代名詞的存在として人気を博した。
しかし、スバルが注力する北米市場では後発のアウトバック
が支持され、2014年まで受注販売された5代目をもって
ツーリングワゴンは廃止された。

そのレガシィ・ツーリングワゴンの実質的な後継機として開発
されたのがこのレヴォーグ。
日本の狭い交通環境下でも取り回しやすいように、全長は
4代目レガシィとほぼ同じ4,690o、全幅は5代目と同じ1,780oに
それぞれ抑えられた。

エンジンは2種類。先代レガシィから受け継いだFA20を搭載
する2リッター(ニイマル)と、スバル初となる本格的なダウン
サイジングターボエンジンであるFB16を搭載する1.6リッター
(テンロク)のラインナップ。
いずれも直噴ターボでAWD。衝突予防安全機能としては
運転支援システムの「EyeSight」が搭載されている。


レヴォーグ(LEVORG)という名称には、
・LEGACY:大いなる伝承
・REVOLUTION:変革
・TOURING:愛車を操作する楽しみを含めた車の旅

という3つの意味が込められている。
総じて表現すれば、
『銘車レガシィの遺産を継承し、ツーリングの新たな道を拓く』
といったところだろうか。

スバル自身は「日本市場専用モデル」と謳ったが、欧州各国の
販売店からリクエストが殺到したため、手直しを加えて欧州でも
販売されることとなった。欧州での販売は既定路線だったという
噂も聞かれるが、真相は定かでない。関税の問題もあって、
欧州市場では数を追えるアイテムになっていないとの事。

筆者はこのレヴォーグの1.6リッター(テンロク)を所有しており、
今回は試乗所見ではなく、実際に数年間乗り続けたレビューとして
2部構成(車体と走行性能)に分けて紹介しようと思う。

なお、当車はカスタマイズが施されているため、純正の車両とは
若干異なる部分があることを予めお断りしておこう。
それではさっそくレビューに移る。



        ★★★車体レビュー★★★



☆☆エクステリア☆☆

スバルのモチーフである「ヘキサゴン・グリル」および
「ホークアイ・ヘッドランプ」が採用されている。

ボンネットの上部には、ターボエンジン搭載車に見られる
エア・インテーク(空気取り入れ口)が開口している。
このインテークは、従来のスバル車だと「パワーバルジ」と
呼ばれていたものだが、レヴォーグにおいてはインタークーラーの
冷却効率を最大化し、燃費性能を上げることが目的であり、
開発陣からはエアスクープならぬ「エコスクープ」と呼ばれている。

エコスクープとは言うものの、『戦闘機の機体を連想させる』との
理由により、一部のユーザーからは『野暮ったい』と廃止を望む
声もあるようだ。
個人的には機能美とアイデンティティの両面で必須だと思う。



ほぼ純正状態だった頃のレヴォーグ。
フロントフェイスは『ガンダム』と言われることがある。
立体的で強面の造形は、とかく表情の乏しい最近のクルマの中では
かなり存在感がある。


「フロント・オーバーハングが長い」と言われるレヴォーグだが、
100系マークUに17年間乗った筆者から見て違和感はない。

富士重工デザイン部チーフデザイナーの述懐によれば、開発当初は
これより10oほど引っ込む予定だったらしい。しかし、力強いフェイス
を造形するため、あえてフロントを10o増やしたとの事。

つまり水平対向縦置きエンジンAWDであるにもかかわらずオーバー
ハングを切り詰める技術力はあったが、「魅せる」ことを優先させて
あえて切り詰めなかった、というわけだ。
ここらへんの事情は、レヴォーグとほぼ同じ長さのホイールベースを持ち、
やはりフロントオーバーハングが長いと言われるトヨタ・ハリアーの
設計思想と重なるものがあるのかも知れない。



通常、ワゴンという車種はルーフが水平基調なものだが、
レヴォーグのルーフラインはリアに向かうにつれて下げられており、
スポーティさを醸し出している。

後席はプライバシーガラスが採用されている。
サイドウインドーのメッキモールがリアクォーターガラスの直前で
唐突に途切れているのが気にかかった。
チーフデザイナーの話によると、メッキモールをサイドウインドーの
全周にめぐらすとラグジュアリーに過ぎ、後端まで伸ばす検討は
したものの、結局この位置で切ってしまい、残りはピアノブラックで
締めることになったとの事。

しかし、発売後に多くのユーザーからネット上などで批判の声が上がり、
スバルも気にしていたのだろう、後日
『レヴォーグに待望の専用リアクォーターガーニッシュ新登場!!』
などという宣伝文句でメッキモールが発売された(黄色丸で囲んだ部分)。
 この中途半端なメッキモールは、スポーティなツーリングワゴンという
相反する設計思想を理想的なバランスで纏めることを要求された
スバル開発陣の苦肉の策だったのかも知れない。
純正のモールと微妙にズレているのが気にかかるが、遠目からは
分からないので良しとしている。
(※2020年発売の新型レヴォーグは、リアクォーターガラスまで
しっかりメッキモールがついている。この教訓が活かされたようだ。)


【カスタマイズ】

(1.フロントグリル)
オプションのスポーティなメッシュタイプに交換した。

(2.ヘッドランプ)
純正LEDヘッドランプは明るいものの、やや指向性が強すぎたため、
広範囲を照射できるLIBERALのJAWS(COPLUS社製)に交換した。
JAWSの初期ロットは品質が安定せず、レンズ内部の曇りが頻繁に
発生したが、その後改良品が送られてきた(保安基準適合品)。

(3.テールランプ)
純正『コの字』テールランプは運転席側にバックフォグ内臓。
そのためにバックランプが反対側の片方しか点灯しなかった。
スバルの仕様らしいが、長年マークUの両灯バックランプに
慣れ親しんだ身には心もとなく、スバルのパーツブランドとして
信頼のおけるCORAZONのLEDテールランプに交換した。

(4.ロードホイール)
エアロパーツはTAS2014に出展された『PROVAコンセプト』を参考
にしてカスタマイズしたので、ロードホイールもENKEIのALL-Eight 
PROVAバージョンに交換した。ただし乗り心地を優先させて20インチ
ではなく18インチ8J。
1
2
3
4


(5.オーバーフェンダーパネル)
 PROVAコンセプトに則ったボディ同色のオーバーフェンダー。
取り付けることにより全幅が1,780oから1,796oへ大きくなるが、
保安基準は±20oなので陸運局への届出の必要は無い。

(6.スポイラー)
 おおむねPROVAコンセプトを踏襲しているが、高速道路上での
80km/h時の挙動回復性能に期待してSTIのルーフエンドスポイラーと
リア・アンダースポイラーを付けた。フロントとリアにエア・スプリッタ型
スポイラー、およびサイドエクステンションを装着。
5-1
5-2
6-1
6-2









☆☆インテリア☆☆

 乗り込んでみると、まず視界の良さに気がつく。
これは購入を検討する前に試乗した国産車や輸入車の中でも
ベストな視界と言ってよく、成約の大きな決め手になった。


頭上中央にはルームランプ一体型のアイサイト本体がある。

インパネはインプレッサやXV、WRXなどとほぼ共通のデザイン。
一部のユーザーからは「もっと価格帯に応じて差別化せよ」
という声も上がっているようだが、これはこれで合理的であり、
スバルの車を乗り続けるのであれば、乗換えのときに
違和感無く乗れるだろう。

ソフトパッドが多用され、レザーにはブルーステッチがあしらわれて
いる。機能優先の、良く言えば節度あるデザイン。

収納スペースはやや少なめ。グローブボックスは奥行きが狭く、
車検証ケースの他いくつかの書類を入れておく程度。

コインポケットはETCビルトインカバーを付けたため廃止。

アームレストを持ち上げるとコンソールボックスがある。
12V電源ソケットから車内用掃除機などの電源が取れるのだが、
コンソールトレーをいちいち外さねばならず、使い勝手は
あまり良くない。


 伝統的な二眼メーターは見やすい。ブースト圧や油温状態は
センターのマルチファンクション・ディスプレイで確認できる。

 ナビはCarrozzeriaのサイバーナビAVIC-ZH0999をつけているが、
スマホ操作に慣れてきた身としては、このナビのタッチパネルは
反応が遅くまどろっこしい。画面は7インチと小さく、見づらい。

 運転席は10ウェイシートでランバーサポートがある。助手席も
8ウェイシートでホールド感があり、居住性はそこそこ良い。
シート生地はファブリック。レザーの滑りを嫌ってこれを選んだが、
冬場は静電気の発生が多いかも知れない。


 インテリア冒頭で「視界の良さ」について申し上げたが、
Aピラーカバーがフロントガラスに反射するのが気になった。
ある状況下においてはこれが見通しを妨げるため、横合いから
出てくる歩行者などに気づくのが遅れるケースが確認された。
これは事故防止のために放置できず、黒のピラーカバーに
交換してもらった(カスタマイズ一覧に比較画像あり)。


 後席の足元はドラポジを取った状態でも余裕がある。
Cピラーによる多少の圧迫感と、走行中の突き上げ振動がある。
ただ、硬めのシートは長距離走行で意外に疲れない。
後席両脇にあるレバーでちょっとしたリクライニングが可能。

オプションでアルパインのフリップダウンモニターを付けた。
サンルーフの設定もあるが、すぐ飽きるであろうことと、
車体強度が損なわれたりメンテナンスの不安から取りやめた。
今となってはモニターも使わず、サンルーフが偲ばれる。


縦置きエンジンAWDのためセンターにシャフト類が通る凸部あり。
定員5名だが、長距離移動なら4名で乗るのが適切。



エアコンは効きがあまり良くない。後席にエアコン吹き出し口が無く、
車内温度管理の面ではプリウスに劣るだろう。
基本的には運転席と助手席の居住性を優先させており、ワゴン的な
ドライバーズ・カーである。

エアコン吹き出し口の代わりであろうか、センターボックスの裏面には
USBポートが2個、定格AC100Vのコンセントが1個ついている。


 夜間は室内が暗い。購入時についてきた青色LEDフットランプは
見栄えこそ良いが、落とした硬貨や小物などは探しづらい。
輝度はたとえ低くとも温かい色合いで広範囲を照らせるハロゲンランプ
が適しているのかも知れない。


 肝心のカップホルダーだが、フロントとリアに各2つ。
フロントカップホルダーは縦列。アームレストと被るためやや不便。
底が深く、小さなサイズのコーヒーカップを入れると取り出しづらい。
カップの振れ止めはゴムのヘラがついているだけでチープ。
リアカップホルダーは横列。収納式アームレストと一体化している。



【カスタマイズ】

(7.ステアリングホイール)
 純正の本革巻きステアリングホイールはGT-Sグレードであっても
滑りやすく、夏は日光を浴びると握れないほど熱くなったので、
PROVAのスポーツステアリング360Rに交換した。表皮はアルカンターラ
(合成スウェード)が巻かれており、滑りにくく、季節を問わず握り
やすい。

(8.ワンオフオーナメントパネル)
 センターコンソールの下部センタートレイは、小物を置ける
数少ないスペースのひとつだったが、デイライトや照明を集中管制
するためのコンソールが必要になったため、割り切ってワンオフの
オーナメントパネルで塞いだ。

(9.足元照明)
室内は夜間になると暗すぎて不便だったので、各シートの足元に
調光式LED照明を取り付けた。ON/OFFはオーナメントパネルで操作
する。

(10.カップホルダーライトアップ)
フロントカップホルダーはオプションでLEDライトアップが可能で、
ライト点灯によりコンソールボックス内部も照らされる。リアカップ
ホルダーにはライトアップの設定が無かったので、ショップで
スバル純正の青色LEDを取り寄せて付けてもらった。

(11.Aピラーカバー交換)
スバルS4のAピラーカバーはブラックで互換性があったので、
これに交換した。視界は劇的に改善された。

(12.ステルススイッチ式CD挿入口照明)
サイバーナビは画面がスライドしてCDを挿入する仕組みだが、
夜間は挿入口すら判別できないほど暗かったため、LED照明を
仕込んだ。ショップの店長から勧められたステルススイッチで
ON/OFFを切り替える。たまに誤作動する。

(13.カーテシランプ)
夜間や暗がりでドアを開けると、ドア下部に取り付けられた照明が
足元を照らすギミックはプリウスでさえ採用している。そこで
当車もカーテシランプを導入した。ただ、奇をてらってスバルロゴが
投影されるものをつけたところ、ロゴが目立つばかりで落とした硬貨
などはサッパリ見つからないという結果になった。

(14.静電気防止プレート装着)
冬場、降車時にドアに触れると「パチ!」という静電気に悩まされて
いたため、ディーラーに取り寄せてつけてもらった。
7
8
9

10-1
10-2 10-3 11 12
13-1 14




【ラゲッジルーム】

レヴォーグの売りである荷室についても触れておこう。

ステーションワゴンとしては普通の広さだと思うが、
後席を倒すとフル・フラットになるので便利。
全高は1,490o。タワーパーキングの高さ制限をほぼ
受けず、リアゲートは女性でも開閉しやすい高さになっている。
ただし垂直循環方式駐車場では、パレットのフレームに
上げたゲートをぶつける恐れがあるので注意が必要。




荷室床の地上からの高さもちょうど良かったが、リフトアップの
影響により、購入した当時から15oアップされた。この15oは
意外に大きく、やはり純正時代のほうが荷物を置きやすい。
人間工学を考えてよく設計されていたのだろう。

トノカバー(巻き取り式)は標準装備で、必要ない場合は床下の
サブトランクに格納することができる。筆者のレヴォーグは
LEDブラックホールパネルをつけているため、トノカバーは
収容できない。また、オプションでスペアタイヤを搭載しているため、
サブトランクのスペースは著しく制限されている。

間口のすぐ内側には左右に「リアクォーターポケット」がある。
筆者は非常用の飲料水や添加剤などをここに入れている。


広さは実際にメジャーを用いて計測してみた。
ラゲッジボードに埋め込んだLEDロゴを保護するため、当車の
ラゲッジマットは二重になっていることを予めお断りしておく。

後部座席を倒さないノーマルな状態でのサイズは以下の通り。

間口:約1,020〜1,125o
天井高:約 660〜680o
奥行き:約1,100o
荷室幅タイヤハウス部:約1,070o
荷室幅最大:約1,350o
地表からの床面高さ:約630o
荷室容量:公称522L

後部座席を倒した場合のサイズは以下の通り。

奥行き(倒した後席肩口まで):約1,710o
奥行き最大(前席背面まで):約2,000o
荷室容量:公称1,406L


【カスタマイズ】

(15.荷室照明)
 ラゲッジルームランプがついているが、夜間は暗すぎるので
玉をLEDに交換した。オプションでリヤハッチライトも付けたが、
リヤゲートの根元なので位置が最適とは言えない。

(16.LEDブラックホールパネル)
 LEDブラックホールパネルを製作してもらい、純正床ハッチを
改造して埋め込んだ。明るくなって作業しやすくなると期待したが、
下面から照らすと手元の確認に邪魔なことが判明した。また、
パネルそのものが強度的に弱点となるので、近々純正に戻そうと
考えている。

15-1
15-2 16



 車体に関してのレビューは以上。
これより走行性能編に移る。



走行性能編

クルマのこと

INDEX