バルブタイミング測定
バルブタイミングとは何か
クランプリ出版「バルブタイミング」を読んでもらうのが良いが 
ここでは私の言葉で少し説明

エンジンはピストンの上下によって 混合気を吸って 排気ガスを吐き出している
自分の肺と同じ様だ ピストンが降りる時に吸気バルブを開けてやり
上がる時に 吸気を閉じて 排気を開けているのだ
しかし 10000回転/分も回すと一秒間に80回もスーハーすることになってしまう
このスピードでは 気体も重さや粘度があり ここではドロドロの蜂蜜の様な
粘度と考えよう

ピストンが下がり蜂蜜がシリンダーにドローリと入ってくる
ピストンは下がりきって 圧縮行程に入るが やっと流れる勢いが付いた蜂蜜は
シリンダーに自ら入ってくるので 吸気バルブを今閉めるのはもったいない遅らせよう

蜂蜜が圧縮され(てなことは無い) 点火 燃焼(しない) 

膨張エネルギーでピストンが下がる まだエネルギーが残っているが
早く排気バルブを開けて 蜂蜜を捨ててしまおう もったいないと思ってはいけない
なぜなら こんどピストンが上がっていくのに 蜂蜜が沢山シリンダーに残っていると
ピストンが上がらない 上がらないと回転が早くならないから

ピストンが上がりきる前に 燃えた蜂蜜を捨てきる前に 
吸気バルブを開こう そこにはシリンダーに入ろうと エネルギーを持った
新鮮な蜂蜜がバルブが開くのを待っている さあ入って来い

ピストンが頂点を通過し吸気行程に入る まだ 排気バルブは閉じていない
最後の燃えた蜂蜜が勢いをもって 排気バルブに向っている
排気バルブを潜る時 新鮮な蜂蜜も引きずって 排気バルブの外側に連れ出してしまう
その瞬間に排気バルブを閉じてやる
などなど



簡略な説明ですが 少しでも多くの新鮮な蜂蜜をシリンダーの中に入れる為に
いろいろな事が起こっています 新鮮な蜂蜜の量が膨張エネルギーの大きさになり
エンジンの出力の差になってしまいます

このバルブの開け閉めの次期・バルブタイミングが 要求されるエンジンの性格を
殆んどの割合で決定していることになります

DUCATIは革新と古典が同居した ユニークで優秀な機械ですが
素材 加工精度 組み立てに問題を抱えています
最初に引かれた 意図と現物がかけ離れてはいないのか?
これを検証する目論みです
カタログスペック 400SS バルブプロフィール

IN BTDC 12° ABDC 70° EX BBDC 56°ATDC 25° 1mm

IN BTDC 31° ABDC 88° EX BBDC 72°ATDC 46°0.2mm

記載が二種類ありますが 測定の仕方(基準点)の違いによる物です

読み方は上記が 
吸気バルブ開け始め1mm位置が ピストン上死点前12°
吸気バルブ閉め終わり1mm位置が ピストン下死点後70°
排気バルブ開け始め1mm位置が ピストン下死点前56°
排気バルブ閉め終わり1mm位置が ピストン上死点後25°

下記は位置が0,2mmに変わる

すべてがシストンが止まる 上死点と下死点が基準となっています
上死点と下死点は物理的に対180°の関係です

上死点を見つけましょう

点火タイミングの合わせ窓からでも フライホイールに刻まれた
上死点位置が見つけられますが 合いマークが大きく正確な位置が解りません
直径15cmのフライホイールの円周で 1度は たった1.3mmでしかありません

クランクエンドに全周分度器を固定します 
アダプター一号にコピーを貼り付けました
一作目は本に載っていた分度器をスキャナーで拾って印刷 目盛りが潰れて使用不可
今回の二作目 友達が現物をOPセルにコピーしてくれました 使えます 

基準となる上支点を見つけましょう
プラグホールからダイヤルゲージ1/100mmを突っ込んで ピストンに接触させます
直接 ダイヤルゲージに一番近い位置を測定したいのですが
ピシトンの上下運動の折り返し地点では ピストンの動きが小さく
何処が一番上がって来ている位置だか 測定できません


ですから 例えば 上がり終わり手前1mmと
下がり始め1mmの位置を測り
その中心で ピストンの上がり頂点を決めます
ここが0です 細い針金を0位置に合わせておきます

アルミで作られたエンジンには 
ダイヤルゲージがしっかり固定できる場所が無く
苦労しました


セルをプラ板に貼り付け フランジで固定しました

真中の染みは クランクを回していると
オイルポンプがオイルを送り込み
クランクエンドから排出されたオイルが
プラ板とセルの間に染み込んで出来た物です

 

 
全周分度器の0がピストントップに合わせられたら カムプロフィールの測定です

ここでも ダイヤルゲージを微動させないように固定する必要があります
数年前 アルミ板で時具を作りましたが たわみで使い物にならず挫折しています
今回は ガッチリ固定し微調整ができるように各接合部分をスライド又は回転できる
様に作りました

ロッカーカバーの固定ネジを使い
ダイヤルゲージのスピンドルと
バルブを平行に合わせて
開けシムの上に 測定子を乗せます
DUCATI SERVICE TECHICAL TRAINING 2002/3 の中に 
「作業中はタイミンングベルトの張力を スペシャルツール0512.001.1Aを使い
11.5に設定します」
スペシャルツール0512.001.1Aとは 扇型のテンションメーターでタイミングベルトに
挟み込んで ベルトテンションを数値化する測定器具です
この器具の目盛りが比例する値を示すとすると 調整時の約5倍もの張りにして
タイミングを測定しろと言っています
熱膨張した シリンダー ヘッド プーリーによりベルトは
こんなに強く張られてしまうのでしょうか

私は自分の手で目一杯 テンションベアリングを狭めて固定することにします
その位の貼り方でも ベルトを回すと一部分でキュルキュル音が出ています
交換時期なのでしょうか?

準備OK

クランクを回転方向に回します 最初は0.2mm 次は0.5mm毎 に分度器の数値を
記録します

微妙です ダイヤルゲージも分度器も正面から見るように心がけます

シビアです デスモはスプリングが無いに等しいので 回すのは簡単な様です

絶妙です 行過ぎたら大きく戻してください ducaはクランクケース内のギアで
カムシャフトの回転を1/2に落としています 逆に回すとギアのバックラッシュにより
誤差が発生してしまいます

痛いのです 1/100mmの調整は レンチを指先で叩くような微動です 
次の日指が腫れます
フロント IN
-41 -29 -20 -11 -3.5 3 8.5 13.5 19 24 28.5 33
mm 0 0.2 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
38 43 48.5 54 60.5 67.5 76 87 94 110 123 130
mm 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.2 9.35 9.2 9
142.5 152 160 168 174.5 181 187.5 194 200 206 212.5 218.5
mm 8.5 8 7.5 7 6.5 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3
225.5 232 239 247 257.5 267 285
mm 2.5 2 1.5 1 0.5 0.2 0
フロント EX
-258 -248 -239 -229 -221 -213.5 -206.5 -200 -194 -188 -181.5 -175
mm 0 0.2 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
-168 -160.5 -153 -144 -134 -122 -98 -91 -84.5 -64.5 -54.5 -46.5
mm 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 8.6 8.5 8 7.5 7
-40 -33 -27 -21.5 -16 -10.5 -5.5 0 5 12 17.5 26.5
mm 6.5 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1
37 45.5 60
mm 0.5 0.2 0
リア IN
-48 -29.5 -20 -11.5 -4 2 7.8 13 17.5 23 27.5 32
mm 0 0.2 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
37 42 48 53 59.5 66 74 84.5 94.5 110 123 130.5
mm 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.2 9.35 9.2 9
143 152.5 160.5 168.5 174 181 187 193 199 205 211 217.5
mm 8.5 8 7.5 7 6.5 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3
223.5 230.5 237.5 245.5 256 264 287
mm 2.5 2 1.5 1 0.5 0.2 0


計測からグラフを起した物です
バルブスプリングを使用したカムと違うカーブが現れると思っていましたが
大きくは違いませんね
   

フロントIN
   
カタログ O.2mm
BTDC 31°
ABDC 88°
実測 0.2mm
BTDC 29°
ABDC 87°
カタログ 1.0mm
BTDC 12°
ABDC 70°
実測 1.0mm
BTDC 11°
ABDC 67°
リア IN
   
カタログ O.2mm
BTDC 31°
ABDC 88°
実測 0.2mm
BTDC 29.5°
ABDC 84°
カタログ 1.0mm
BTDC 12°
ABDC 70°
実測 1.0mm
BTDC 11.5°
ABDC 65.5°
フロントEX
   
カタログ O.2mm
BBDC 72°
ATDC 46°
実測 0.2mm
BBDC 68°
ATDC 45.5°
カタログ 1.0mm
BBDC 56°
ATDC 25°
実測 1.0mm
BBDC 49°
ATDC 26.5°

かなり慎重に計測したつもりです
ピストントップを再起計測するために ヘッドを外して
直接はかってみました

カタログデータと近いところも有りますが 
かけ離れ過ぎています
計測手段に問題が在ったのか 技量の問題か 
データーと現物が違うのか?

0.2mmリフトはシビアなので せめて1.0mmリフト
計測で 開け始めのズレと閉めのズレが
合致すれば 納得が行くのですが

さて 何処に向って行きましょうか? 



    

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