|
カミュは倒れていた。 ミロは顔を見つめてみた。 安らかな顔だった。 「お前の白鳥は飛び立ったよ」 「教皇もお前の言ったとおりだった」 声が闇に消されていく。 ミロは力が抜けて立てなくなっていた。 こうなることが分かっていたのか? 答えてくれ!! 息が乱れ出した。 傍らで膝をつき、苦しそうに手を伸ばした。 答えを求めるようにカミュの手を握りしめる。 まだ暖かかった。 その時、ミロの体の中で何かが騒ぎ出した。 カミュと繋いだ手からなだれ込んで来た。 「あぁ・・・」 手が痺れ、離すことができなかった。 それは、60億の生命の記憶。 彼を全身で愛した日の記憶。 脳裏には雨に濡れて自分を見ているカミュの顔が浮かんだ。 騒ぎ出した細胞の昂りが頂点を極めた。 「ああああああああああーーーーーーーーーーーー」 獣のような咆哮を放った。 幾重にもなっている壁に穴が開き、闇の中で語尾が谺していた。 「あぁ・・・カミュ・・・」 「愛している・・・」 床には落ちた涙が波紋になっていた。 |