Velvet Skin

第4章 哀しみ



カミュは倒れていた。
ミロは顔を見つめてみた。
安らかな顔だった。

「お前の白鳥は飛び立ったよ」

「教皇もお前の言ったとおりだった」


声が闇に消されていく。
ミロは力が抜けて立てなくなっていた。


こうなることが分かっていたのか?

答えてくれ!!


息が乱れ出した。

傍らで膝をつき、苦しそうに手を伸ばした。
答えを求めるようにカミュの手を握りしめる。

まだ暖かかった。

その時、ミロの体の中で何かが騒ぎ出した。
カミュと繋いだ手からなだれ込んで来た。
「あぁ・・・」
手が痺れ、離すことができなかった。




それは、60億の生命の記憶。


彼を全身で愛した日の記憶。





脳裏には雨に濡れて自分を見ているカミュの顔が浮かんだ。





騒ぎ出した細胞の昂りが頂点を極めた。

「ああああああああああーーーーーーーーーーーー」

獣のような咆哮を放った。


幾重にもなっている壁に穴が開き、闇の中で語尾が谺していた。




「あぁ・・・カミュ・・・」

「愛している・・・」

床には落ちた涙が波紋になっていた。



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'99.7.31
Gekkabijin